衆議院

151回国会

内閣委員会

平成十三年五月二十五日(金曜日) 第14号

平成十三年五月二十五日(金曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 横路 孝弘君
   理事 逢沢 一郎君 理事 小野 晋也君
   理事 古賀 正浩君 理事 西川 公也君
   理事 島   聡君 理事 中沢 健次君
   理事 河合 正智君 理事 塩田  晋君
      岩崎 忠夫君    小渕 優子君
      奥谷  通君    亀井 久興君
      川崎 二郎君    阪上 善秀君
      七条  明君    実川 幸夫君
      竹本 直一君    谷川 和穗君
      近岡理一郎君    三ッ林隆志君
      宮澤 洋一君    望月 義夫君
      渡辺 具能君    渡辺 博道君
      井上 和雄君    石毛えい子君
      大畠 章宏君    今田 保典君
      細川 律夫君    山花 郁夫君
      山元  勉君    太田 昭宏君
      松本 善明君    北川れん子君
      保坂 展人君
    …………………………………
   議員           細川 律夫君
   議員           山花 郁夫君
   議員           若松 謙維君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長) 村井  仁君
   内閣府大臣政務官     阪上 善秀君
   内閣府大臣政務官     渡辺 博道君
   政府参考人
   (警察庁長官)      田中 節夫君
   政府参考人
   (警察庁交通局長)    坂東 自朗君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           真野  章君
   政府参考人
   (国土交通省自動車交通局
   長)           高橋 朋敬君
   政府参考人
   (国土交通省自動車交通局
   技術安全部長)      宮嵜 拓郎君
   内閣委員会専門員     新倉 紀一君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十五日
 辞任         補欠選任
  小西  哲君     小渕 優子君
  谷川 和穗君     七条  明君
  宮澤 喜一君     竹本 直一君
  渡辺 具能君     奥谷  通君
  山元  勉君     今田 保典君
  北川れん子君     保坂 展人君
同日
 辞任         補欠選任
  小渕 優子君     小西  哲君
  奥谷  通君     渡辺 具能君
  七条  明君     谷川 和穗君
  竹本 直一君     望月 義夫君
  今田 保典君     山元  勉君
  保坂 展人君     北川れん子君
同日
 辞任         補欠選任
  望月 義夫君     宮澤 洋一君
同日
 辞任         補欠選任
  宮澤 洋一君     宮澤 喜一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 道路交通法の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)
 自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律案(内閣提出第五一号)
 危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案(細川律夫君外二名提出、衆法第一四号)
 特殊法人等改革基本法案(太田誠一君外四名提出、第百五十回国会衆法第一六号)
    ――――◇―――――
○横路委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、道路交通法の一部を改正する法律案、自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律案及び細川律夫君外二名提出、危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官田中節夫君、警察庁交通局長坂東自朗君、法務省刑事局長古田佑紀君、厚生労働省社会・援護局長真野章君、国土交通省自動車交通局長高橋朋敬君及び国土交通省自動車交通局技術安全部長宮嵜拓郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――

(中略)

○中沢委員 時間があればもっと具体的な内容でいろいろお尋ねをしたいんでありますが、いずれにしても、民主党が遺族会の皆さん方とも非常に頻繁に接触をされてこの法案をまとめる、つい先日も参考人で井手会長にもわざわざお越しをいただいて改めて意見を 聞く。私は、別に自画自賛じゃないけれども、やはりこれは国民あるいは関係者が非常に期待をする非常に立派な法案だと思うんです。ただ、残念ながら、理事会ではこの法案の扱いについて各党の意見の発表がそれぞれありました。後ほどまた国家公安委員長にも政治決断を私は求めたいと思いますが、大変丁重な御答弁をいただいてありがとうございます。
 さてそこで、最後の質問になりますが、村井国家公安委員長に、もう時間がありませんから、二つまとめてお尋ねをいたします。
 一つは、道交法そのものの修正案を、我が党を中心にして結果的には共産党、社民党三党の共同提案、こういう運びでこの後具体的な議事運びをしていただきます。
 まず、質問の第一は、修正案の内容はもういろいろとお話を聞いていらっしゃると思いますが、運転免許を付与するに当たって今まではさまざまな欠格条項があった、警察庁と関係団体との間で今までいろいろすり合わせをやって一歩前進をした。そのことは正確に一歩前進であるという評価をしたいと思うんです。しかし、やる以上、もっと、あと一歩、あと二歩ぐらい前進をすべきではないか。特に障害をお持ちの方からさまざまな意見も、ついこの間の参考人の質疑の中でも、関係者から非常に切実な生の声も改めて聞きました。
 やはり小泉内閣というのは改革断行だ、国民にしっかり目線を置いて国民の期待にこたえてやる、私は党派は違いますが、そのこと自体は大歓迎ですよ。ですから、ハンセン病もああいう総理の決断があったと私は思うんですね。それとはもちろん次元が違いますけれども、この三党共同修正は、大体基本的な考え方は、障害者にも優しい、憲法で認めております人権を尊重する、そういうことが背景で修正案で出しました。ですから、この際、私は、政治家として私どもの修正案に基本的に賛同の意を表していただきたい。これは大事ですよ。
 しかしながら、法案処理という技術的な関係からいうと、今のこの委員会ではなかなか難しい。参議院の審議がまだ残るわけでありますから、参議院段階でも私はぜひ、国家公安委員長として、この法案の提出をされた事実上の法案の提案責任者ですから、そのことを含めて、基本的なこの共同提案に対する見解、法案処理に当たってのこれからの努力、ぜひひとつ、改革断行内閣の有力な閣僚であるはずですから、私は決断を持って明快にお答えをいただきたい。これが一つ。
 それからもう一つは、今ほどいろいろ議論をいたしました危険運転処罰法、これも残念ながら、法案としては議事さばきではなかなかうまくいかない模様です。私は大変残念だと思うのですね。これも同様に、遺族会の皆さん、会長初め関係者から、早くこういう法律が必要だ、こういう非常に強い意見が出ている。これは国民の声だ。警察庁も法務省も、その声を受けとめながらも、今国会ではできません、次の秋の臨時国会ではできます、やりましょうと。
 私は、いいことは早くやったらいいのじゃないか。こっちの方は手っ取り早く、もう早急に、できればきょうの委員会の採決に当たって、公安委員長として、非常に大事な法案だから、ぜひ私どもの修正案と同じように、基本的には賛成ですと。いいですか、基本的に賛成ですと。しかし、もうここまで、夕刻に採決をする場面だからこの衆議院では無理かもしらぬけれども、三党の修正案と同じように、やはり参議院の場で十分検討して、結果的に今の国会で決める、これが国民の期待にこたえる改革断行の小泉内閣の真骨頂じゃないか、私はこう思うのですけれども、この二つ、法案としては違いますが、その背景や基本的な政治哲学は共通すると思いますから、ぜひひとつ大胆にお答えをいただきたい。答弁によっては拍手をしたいと思うのです。
○村井国務大臣 小泉内閣に大変御激励をいただきまして恐縮をいたしております。
 まず、第一点でございますけれども、修正案でございますが、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるものを呈している者に対して免許の拒否ができる、こういうような形にしよう、こういう御提案でございます。
 私も実は過去、いわゆる法律案の起案に従事したことがしばしばございますけれども、政令にゆだねるというのは、ある意味では政府に非常に大きな授権をするということでございまして、国会が持っておる立法権を通じまして政府にゆだねるときには、やはりそれなりの縛りが要る。相当限定的に政令にゆだねる、政府にゆだねる。そうでないと、国民の権利を著しく侵害し、あるいは義務を加重するという、本来国会が押さえなきゃならないところを大変包括的に授権してしまう危険があるわけでございまして、さればこそ、法律で政令に委任する事項というのはかなり限定的に書くというのが一つのスタイルではないか、私はそのように思っております。
 そういう意味で、ちょっと縛り方が甘い感じになっていはしないだろうかというところが、あるいはいささか包括的に過ぎないだろうかというところが、私も率直に申しまして抱く懸念でございます。そのほかにも法律論としていろいろな議論があるとは思いますけれども、私は、その点が一番本質的な問題ではないか。さような意味では、政府提案でございますけれども、適切な縛りを加えて政府に授権するという形になっているのではないか、こんなふうに思っております。
 それからもう一点のいわゆる危険運転処罰法案でございますけれども、これは確かに御議論として非常によくわかるのでございますが、一方で、従来交通事故につきまして適用しております刑法二百十一条の業務上過失致死傷罪というこの罪でございますが、これが属しておりますのがいわゆる刑法二十八章の「過失傷害の罪」という章に置かれているなにでございまして、それより重いといいましょうか、その前には「傷害の罪」というのがあり、その前に「殺人の罪」という章が置かれている。この刑法典の中でどのあたりにこういう罪を位置づけるかという、より根本的な議論がどうも刑事法制全体の議論としてあるようでございまして、これこそまさに国民の権利にかかわる非常に重要な問題でございますので、少し慎重、広範な議論が要る。交通事故という特定の事象を取り上げましてこの根本的な刑法典のありようというものに特例を設けるということだけで足りるかというあたりのところが、恐らく法務省刑事局あたりでもう少し検討をさせてほしいという議論のポイントであろうかと。
 私は、それなりにこのあたりは、国会というのは本質的に国民の権利を守ることに熱心で、それから義務を加重することに慎重であるべき場所だと思っておりますだけに、国会議員としての立場としても、もう少しここはお時間をちょうだいした方がよろしいのではないか。せっかくの尊敬する中沢先生の御提案でございますけれども、ちょっとそのあたりは慎重な御答弁をさせていただく次第でございます。
○中沢委員 残念ながら私の期待をするような勇断を持ったお答えがございません。非常に残念だと思います。これは、党派を超えて、立法論は別にして、国民が非常に強い期待を持っている、こういう観点で私は言ったつもりですから。
 もう時間がありませんからこれ以上は申し上げません。あとは同僚議員の質問にしっかりまたお答えをいただく。そして、くどいようですが、参議院でもこの法案の議論をする場があるわけですから、そこでまた改めて参議院は参議院でしっかり議論をして、私どもとしては、修正案が通るように、そして我が党の衆法が通るようにこれから努力をすることをあえて国民に向かってお約束をして、私の質問を終わります。
○村井国務大臣 再度申し上げますが、お気持ちは大変よくわかりますし、そういう方向で私どもも一生懸命努力する、その方向につきましては改めて付言をさせていただく次第でございます。
○中沢委員 終わります。

(中略)

○横路委員長 石毛えい子さん。
○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。
 前回の道路交通法の一部を改正する法律案の審議におきまして、私は、病気や障害を持つ方の運転免許証に関する欠格条項について、改正法案見直し、修正というような視点から質問をいたしました。今回も続いて欠格条項について質問をいたします。
 まず最初でございますけれども、この法案では、第九十条「免許の拒否等」のただし書き、あるいは第百三条「免許の取消し、停止等」を規定した条文で、「次に掲げる病気にかかつている者」という病気を特定しています。さらにイ、ロ、ハと具体的に病気の特定をしているわけですけれども、まず、イの「幻覚の症状を伴う精神病」というのはどのような精神病を意味しているのでしょうか。また、精神病の症状には幻覚のほかにも幻聴、妄想という症状も言われておりますが、法文で幻覚と規定した理由は特別にあるのでしょうか。お尋ねいたします。
○坂東政府参考人 まず、お尋ねの第一点でございます。法律で書いております「幻覚の症状を伴う精神病」とはいかなるものかということでございますが、精神分裂病を考えているところでございます。
 もとより、この精神分裂病に該当する者につきましても、一律に免許の拒否等を行うものではございませんでして、一定の寛解状態にあると申しましょうか、そういった方々や、あるいは自動車の安全な運転に支障を及ぼすおそれがない方につきましては、免許を取得することが可能となるような基準というものを定めたいというふうに考えているところでございます。
 また、幻覚でございますけれども、この意味は、対象がない知覚というものを意味するものではないかと考えています。
 そこで、幻覚というものを法律に入れた理由ということでございますけれども、自動車を安全に運転するためには、道路交通状況がいかなるものであるかということを認知し、その後どういうものが起こるかということを予測し、どういう運転行動をとるかということを決断し、そしてその決断に従って操作を適正に行うということが必要だというふうに私どもは考えております。
 そこで、この幻覚でございますけれども、幻覚は、こういったような基本的な運転行動というものをとる場合においては、やはり不正確なものになるのではないかというようなことを考えているところでございまして、本来求められている認知等を行う上で必要な注意力を低下させるものであるというように考えられる。そういうところから、自動車の安全な運転に支障を生じさせる病気というものを法律上明らかにした上で、典型的な症状として幻覚の症状を伴う精神病ということで書いたという次第でございます。
○石毛委員 妄想のみの場合というような方も回復の状態によってはあると思いますけれども、その場合はいかがなのでしょうか。
○坂東政府参考人 御案内のように、疾病というものは、日本におきましても国際疾病分類、ICD10によって分類しているというように聞いているところでございますが、このICD10によりますと、精神分裂病というものは、幻覚、とりわけ幻聴が普通に見られるというように聞いているところでございます。
○石毛委員 それでは次の質問ですけれども、同じく、ロ「発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの」とありますが、具体的に御指摘ください。
○坂東政府参考人 御指摘の改正案の法律九十条第一項第一号のロの「発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気」といたしましては、政令ではてんかんあるいは失神あるいは一時的な意識障害をもたらす糖尿病等を考えているところでございます。
○石毛委員 今、最後のところで、意識障害を伴う糖尿病等というふうにおっしゃられたとお聞きいたしましたけれども、等という場合には、まだ、それではこれから検討によって病気が広がっていくということを含んでいるという意味でしょうか。確認させてくだ
さい。
○坂東政府参考人 委員御指摘のような意味も含めての等ということでお答えさせていただいているところでございまして、例えば睡眠発作によって一時的な意識障害等があるといったようなものも、やはり安全な運転ということで問題があるのではないかというよ
うに考えているところでございます。
○石毛委員 それでは次ですけれども、同じくハで、イとロに掲げるもののほかに、「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気」としていますが、具体的にはどのような病気を指していますか。
○坂東政府参考人 お答えいたします。
 九十条の第一項第一号のハの「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気」でございますけれども、これは政令で、躁うつ病、それから睡眠時無呼吸症候群、これは睡眠時に呼吸が頻繁に停止する、そういうことで深い睡眠が妨げられることによりまして慢性の眠気を主な症状とする病気というように承知をしておりますけれども、こういった睡眠時無呼吸症候群、さらには、恒常的な常用薬の服用により、先ほど申しましたような正常な認知とか予測とか、あるいは決断とか操作とか、あるいはその前提となる知力あるいは運転機能に支障を及ぼすこととなる場合、そういったことを規定することを考えているところでございます。
○石毛委員 最初の方の御答弁では病気を具体的に指摘をしていただいたと思いますけれども、後半の御答弁は、運転との関係で認知に問題があるとかそういう趣旨の御答弁になったかと思います。具体的な病名と、あわせて、運転との関係での症状も規定されるということをおっしゃったということでしょうか。
○坂東政府参考人 先ほどは躁うつ病とか、このハに書く規定というものを列記したわけでございますが、これ以外にも書くものがあるだろうということでございますので、知力や運転機能に支障を及ぼすことのある場合というような形で答弁させていただきましたけれども、そういった病気というものを書くということでございます。
○石毛委員 では、具体的に病名は特定してない場合もあるということで、運転に支障を及ぼす場合というような理解になると思いますけれども、再度御答弁、必要でしょうか。
○坂東政府参考人 若干御説明不足だったところがあるかもわかりませんけれども、先ほども言いましたように、ハというものは、「イ又はロに掲げるもののほか、」ということでございますので、先ほど申しましたように、イ、ロに匹敵するような、やはり運転に
危険のあるような病気というものをここのハの政令で書くということでございます。その代表的なものが躁うつ病とかあるいは睡眠時無呼吸症候群だということでございまして、運転に支障を及ぼすことのある場合があるような、そういった病気というものもこのハに書くということでございます。
○石毛委員 それでは次の質問ですけれども、今、具体的に御指摘いただきましたイ、ロ、ハにつきましては、それぞれ法文が「政令で定めるもの」としていますけれども、政令で定めるものということは、政令で病名を定めるということでしょうか。あるいは、この九十条等の法文には「政令で定める基準に従い、」というような文言もございます。運転の安全性に関する基準というようなことも含まれるのでしょうか。その辺を少し整理して御説明いただきたいと思います。
○坂東政府参考人 改正案の九十条の一項には、柱書きと、一号でイ、ロ、ハというような形がございます。一項一号のイ、ロ、ハに書いている「政令で定めるもの」でございますが、これは病気を定めるということでございます。
 それで、柱書きの「政令で定める基準」というものは、そういった病気に該当した場合において、果たして運転免許を与えていいのかどうかということを判断するための基準というものを定めるというものでございます。
○石毛委員 そうしますと、イ、ロ、ハの「政令で定めるもの」は、具体的には病名が、あるいは病気が記載されるというふうに御答弁いただきまして、そして、法文の中の「政令で定める基準に従い、」といいますのは運転免許を付与する基準というふうにおっしゃっていただきましたけれども、ガイドラインも定めるというふうにも伺っておりますけれども、基準とガイドラインの関係を御説明ください。
○坂東政府参考人 運転免許を与えるかどうかということを判断する政令の基準とそれからガイドラインとの関係いかんという御質問でございますけれども、政令の基準は、具体的にどのような場合に免許の拒否やあるいは保留といった処分を行うかを定めるものでございます。政令の基準は、政令という枠組みである関係上、ある程度抽象的な表現になることが見込まれるというように考えておりますが、それに対しまして、ガイドラインは、処分の対象となる病気等について、医学的な観点を十分踏まえつつ具体的に記述をしようとするものでございまして、作成されるとすれば、都道府県公安委員会が運転の適否を判断するに当たって参考になるものというように考えております。
 なおまた、このガイドラインで記述した内容が熟するといったような形になりますれば、それをまた政令で定めることもあり得るものというように考えているところでございます。
○石毛委員 病名を具体的に御指摘いただきましたので、あわせて、政令で定める基準の内容につきまして幾つか、例えばイ、ロ、ハの代表的なと申しましょうか、基準の今の検討の中身、そういうことをお示しいただけますでしょうか。
○坂東政府参考人 先ほども申しましたように、政令の基準では、イ、ロ、ハの政令で書いた病名の方が運転免許を与えるに、つまり運転する上で危険性がないかどうかということを具体的に判断する基準を定めるということでございますので、例えばてんかんという形でロで病名として政令で定められたとしても、てんかんにはいろいろな幅がある、例えば睡眠時にしかてんかん発作が起こらないといったようなてんかんもあるというように聞いていますので、そういったものはこの政令の基準で免許を与えてもいいといったような形に定めたいというように考えているところでございます。
○石毛委員 分裂病に関してはいかがでございますか。
○坂東政府参考人 従来、現行法では欠格事由ということで、精神病にかかっている方は運転免許も受けられなかったということでございますけれども、今回の改正案によりまして、先ほど申しましたように精神病というものはロで病名として指定はいたしますけれども、先ほどお尋ねの政令の基準で、運転免許を与えていい場合と与えては問題であるといったものを掲げるということでございます。
 それでは、例えば精神分裂病の場合はどうかということでございますけれども、この場合につきましても、一定の寛解の状態にある者、あるいはその他、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがない者、こういった者は政令の基準で拒否対象から除く、すなわち逆に言いますと免許を与えることもあるといったような形にしたいというふうに考えております。
○石毛委員 確認をさせていただきたいと思いますけれども、分裂病に関しまして、分裂病までは政令で書くということを御答弁いただきました。今度もう一つ、政令では基準を書くわけですけれども、今の御答弁では、寛解の状態、それから運転に支障がないというふうにお答えになりましたけれども、基準はそういう書き方ですか。それで、ガイドラインはもう少し詳しくなるということですか。そのあたりをもうちょっと整理して御答弁いただきたいと思います。
○坂東政府参考人 先ほど申しましたように、イ、ロ、ハの政令では病名を書く、政令の基準では、病名ごとに、それではやはり拒否すべきか、つまり免許を与えるべきか与えるべきではないかという判断基準を書くということでございますので、分裂病の場合におきましても、ある一定の状態というか、運転に支障を及ぼすおそれのないような方に対しましては免許を与える場合があるといったような基準を政令で定めるということでございます。
 ガイドラインというものも、先ほど申しましたような形で、当然ながら、かなり細かく政令で書くということはできませんので、そういった意味で、ガイドラインというものがつくられるとするならば、政令を解釈する上での基準となるようなかなり細かいものを定めるということになると思います。
○石毛委員 正直言って、基準がどのような輪郭をもって示されるのかというそのイメージが、御答弁ではなかなか理解できないのですけれども、やはり、考え方によりましては一律に基準というようなラインを引くのはなかなか難しい側面もあるのかな、それが今の局長の御答弁になっているというような思いもして伺いました。
 そこで、次に申し上げたいことなんですけれども、具体的には、免許が拒否されるかあるいは取り消されるかといいますのは、病名をどう規定されるか、あるいは基準をどうつくられるかということが決定的に重要な分岐点になるわけです。当然、病気ですから、医師等の専門家の御判断も大変重要であり、十分に意見も伺うのだと私は思いますけれども、同時に、運転免許を行使して社会的生活を営んでいく、社会生活に積極的に参加していくということは、まさに欠格であるかどうかという判断の対象になっておる障害や病気をお持ちの方でいらっしゃいますから、御経験など、あるいは薬に対する判断ですとか、あるいは精神の病気の方の場合は病識をどのようにお持ちでいらっしゃるかというようなこと、これは十分に意見をお聞きになり、また協議をする、そうした仕組みを据えていくことが大事なんだというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
○村井国務大臣 先日、当委員会で、てんかん協会の方や交通事故遺族の会の方をお招きになられていろいろ意見を御聴取になられた、このように承知しておりますが、私ども、ただいまの政令の基準をつくるに際しましては、こういった皆様から御意見を拝聴す
る、そしてそれをまた重視してまいる、そういうことも十分に考えてまいりたいと思っております。
 そういうことで、ただいま石毛委員御指摘のような配慮も十分してまいるつもりでございますので、御理解いただきたいと存じます。
○石毛委員 十分に意見をお聞きくださる、そういう御答弁をいただきましたので、ぜひともよろしくお願いいたします。
 そして、さらにということでございますけれども、恐らくガイドラインを丁寧につくるという作業が並行して進まなければならないんだと思います。これはある程度の期間を要して、ある意味では恒常的な検討期間になるのだと思いますので、相互の立場できちっと協議をし合える、そうした運営といいましょうか、進め方を要望させていただきたいと存じますので、ぜひ受けとめていただきたいと存じます。
 それでは、次でございますけれども、欠格条項ということで、第九十条もそれから第百三条も「次に掲げる病気」ということで病気を規定してございます。法文を丁寧に読んでいけば理解の仕方は一通りではないといいますか、読み得るという、そうしたこともあり得るわけですけれども、例えば、こういう規定の仕方では、薬などで症状や機能障害が十分にコントロールされていても欠格であるかのような印象を社会的に与えることになりかねない、あるいはなる。まず、法文の「政令で定める基準に従い」ということよりは、幻覚がある精神病とかそういうことの方が印象として表面に出てまいりますから、そういう印象を与えるということ。
 それから、精神病の場合でも、薬の服用や事前に予兆がありコントロールできるというようなことも今実現しているわけですし、それからてんかんをお持ちの方でも例えば就寝時だけの発作というような方もおられて、安全運転には支障のない幻覚や意識障害発作もあることがまた無視されがちになるというような問題もあります。
 法律に病気、病名を記すことは社会的な誤解や偏見を生み出すという問題につながっていると私は考えるわけですけれども、この点どのようにお考えになりますでしょうか。
○村井国務大臣 せんだってもてんかん協会の参考人の方からも御意見の陳述がございましたり、そういう御懸念があることは私ども十分承知しておりますが、やはり何らかの形で基準を決めなければならないわけでございます。それを法律よりも下位の命令体系、政令なり省令あるいは国家公安委員会規則というような形で決めるということにいたします場合に、国民の権利を制限することになるわけでございますから、どのような形態のものを制限するのかということはできるだけ正確に書いておかなければいけない。そういう意味でぎりぎりのところが今この法律案としてお出ししている線ではないかと思うわけでございまして、これ以上にあいまいな形にいたしますと、過度に政府に権限を授与してしまうことになるのではないか、そんなふうに私は考えておる次第でございます。
 なお、今は法律で一律に、ある要件に該当しましたら欠格、こういうことにしておりますのを、今度は、病気にかかっていましても危険性が低いと認められる場合には免許を認めるということでございますので、そういう意味では今よりもはるかに改善になっていると私は思うわけでございまして、そういう点につきましては、さまざまの手段で広報に努めて、国民の御理解を得ていくように努力をしたいと思っております。
○石毛委員 今回の法案が改善になっているという点につきましては、先ほど私ども民主党の中沢筆頭理事も御発言の中で触れていただいた点でございます。私もそういうふうに思いますし、絶対的欠格から相対的欠格に変わっているということも理解をしております。
 しかし、なおかつ、九九年の旧総理府の障害者施策推進本部決定では、障害者あるいは○○障害を有する者というような規定から心身の故障のため業務に支障があると認められる者等への変更というようなことを提示してございますので、この点、私の方からは申し上げさせていただきたいと思います。
 それからもう一つ、ぜひこれは今後の方向性として受けとめていただきたいと指摘させていただきますけれども、運転免許に関するEC指令ですとか、それからイギリスの医学的運転適性の疾患別ガイドライン、あるいはカナダ医学会の運転適性についての医学的ガイドライン等々については、運転に支障を生ずるそういう症状についての規定をしていることが中心で、病名についての規定はされていないというふうに紹介されていますので、ぜひともこういう点を御検討いただきたいと申し上げます。
 それから、私も修正案につきましてはぜひとも御理解をいただきたいと存じますけれども、先ほどの大臣の御答弁の中で、政令は広く内閣に授権することにという御趣旨の御答弁がございました。私ども民主党、共産党、社民党の提案は、この点につきましては、意見の聴取に関する事項ということで、当該政令で定める症状を呈している者の意見を代表する者の御意見を伺うことという修正条文もあわせての修正案でございますので、私の方からも申し添えさせていただきます。
 最後に、厚生省からおいでいただきましたので、時間の限りで、障害をお持ちの方、生活保護を受給している方が多うございますけれども、自動車所有に関しまして、欠格条項が変わってまいりますと、もっと幅広く認めていっていただく必要があると思いますので、その点についての御答弁をお願いいたします。
○真野政府参考人 先生御案内のとおり、生活保護は、資産、能力、その他あらゆるものを活用することを要件に行われておりまして、私ども、自動車につきましては、原則として、活用すべき資産ということで保有は認めていないということでございます。
 ただ、障害の状況によりまして、公共交通機関の利用が著しく困難な場合、障害者の通院、通所などに定期的な利用が明らかな場合等には例外的にその保有を認めております。いわばその世帯の実情と障害の程度、その必要性というものを個々に判断して対応するということで考えておりまして、今後ともそういうことで、都道府県、市を通じまして、この判定を行っております福祉事務所を指導してまいりたいというふうに思っております。
○石毛委員 生活保護の「運用の手引」を拝見しますと、この詳細の中では「身体障害者の自動車保有」というふうになっておりますが、免許に関する欠格条項にかかわりましては、当然この「身体」という表現が変わっていくというふうに理解をしてよろしいでしょうか。
○真野政府参考人 ひょっとして先日お示ししたのが古い通知であったかもしれませんが、私ども今、身体障害ということだけではございませんで、知的障害、精神障害も含めまして、表現といたしましては障害児者という表現で行っておりまして、当然対象になるというふうに考えております。
○石毛委員 わかりました。社会生活上きちっと自己責任を果たし、生活の広がりが持てるような運用をぜひとも要請いたしまして、時間が参りました。ありがとうございました。

(中略)

○塩田委員 最近は、人権問題に非常に注意をしながら警察行政を推進しておられる、その難しさもあると思うのです。一定の限度があってなかなかそこまで踏み込めないというものもあろうかと思いますが、大変御苦労をしておられることと思います。こういった問題につきまして、法的規制がなお必要であれば、これは検討して措置すべき問題だと思います。
 それから、先ほど申し上げました車の構造を変えてしまうということですね。これに対する罰則なりあるいはそれに加担をした業者の取り締まり、そういったことは、これは国土交通省の関係なりあるいは経済産業省の関係もあろうかと思います。そういったところと連携を密にして、車の構造自体を変えていく、あるいは変えるのを抑える、構造的にそういったことが起こらないような仕組みを最初からつくるとか、いろいろなハードの面からの対処の仕方があるんではないかと思うんですが、これは国土交通省、関係省と連携を密にして、ひとつ総合対策として適切な手を打っていただきたいということを要望いたします。
 次に移ります。
 運転免許の欠格事由、それから拒否等、それから取り消し、停止、これは現行法及び改正案の第八十八条、九十条、百三条に関係するところでございますが、改正原案を見ますと、もちろん政令で定めるものというのがございますけれども、これこれの病気にかかっている者、あるいは何々の病気というのが要素としては主になっているわけですね。
 今回、野党から提出が予定されております修正案の中では、安全な運転に支障を及ぼすおそれのある症状を呈している者、その中には政令で定めるものというのが入っておりますけれども、いずれにいたしましても、症状を呈している者という表現になっていますね。この違いといいますか、具体的にはどういうふうに違ってくるか、例えば手続の上で証明書を出すとかなんとかいう場合にどういうものになるのか、お聞かせいただきたいと思います。
○坂東政府参考人 委員御指摘のように、修正案というものは、免許の拒否事由等につきまして法律に病名等を規定しなくて、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるものを呈している者の場合に免許の拒否等ができる規定に修正しようというような形であるというように承知しているところでございますが、この修正案につきましては、当委員会でもいろいろと御答弁申し上げておりますように、国民にとって非常に大きな問題である運転免許が取得できるかどうかということに関しまして、国会は具体的なことは規定しないことになるということでございますので、私どもとしては、一般国民の権利義務にかかわることはできる限り法律で規定すべきとの基本的な考え方に照らしていかがなものかというように考えているところでございます。
○塩田委員 証明書等はどういうふうに変わるんでしょうか。
○坂東政府参考人 そこで、私どもの改正案に関連してでございますが、免許の拒否あるいは取り消し等の処分を行う場合におきましては、その人が将来自動車を運転した場合におきまして交通の危険を生じさせるおそれがある場合に行うというものでございます。このために、処分に当たりましては、その方の一時的な状態によって処分の可否を判断するというのではなくて、ある程度長期の期間において危険を生じさせる可能性があるかどうか、そういったことを見定めた上で判断を行う必要があるということで考えておりますので、私どもの改正案では、イ、ロ、ハ、というところで病名あるいは病気というものを定めて、そして政令で定める基準で、今言いましたような形で、ある程度の長期の期間において運転させる危険性があるかどうかというものを見定められるような判断基準を設け
たいというものでございます。
○塩田委員 わかりましたが、具体的に証明書というのは、お医者さんから、こういった病状であるあるいは病気であるという証明書を必要とするんでしょうか、それとも役所側だけの判断でいいんでしょうか。
○坂東政府参考人 もちろん、最終的に免許を拒否するかどうか、与えるかどうかということは、それはやはり公安委員会の権限ということにしておりますので、公安委員会が判断するということになりますけれども、それを判断する上において臨時の適性検査というようなものを受けてもらうということにしております。その適性検査というものは専門医の方々のいろいろな御判断をいただくというような形にしたいと思いますので、そういった意味で、専門医の御判断というものを踏まえた上で、最終的に政令の基準に従って免許を与えるかどうかということを判断するということでございます。
○塩田委員 今の点は、役所側としては手続的にはいろいろ準備をしておられるということはわかりました。
 そこで、これはまだ提案されておりませんので、提案者に質問をするわけにいきません。この点、本当は、症状を呈するというのはどういうふうに判断するか、あるいは医師の診断書なり適性検査のときの医師がどういう基準でどう判断したら症状を呈する者と言えるのかどうか、その辺を明らかにしたいところでございますが、今のような状況でございますので、この問題は問題として残して、これで終わりたいと思います。

(中略)
 
○横路委員長 この際、休憩いたします。
    午後零時十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時五十三分開議
○横路委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

(中略)

○横路委員長 ただいま議題となっております各案中、まず、内閣提出、道路交通法の一部を改正する法律案について議事を進めます。
 この際、本案に対し、石毛えい子君外二名から修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。石毛えい子さん。
    ―――――――――――――
 道路交通法の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
○石毛委員 石毛えい子です。
 私は、民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となりました道路交通法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その提案理由と概要を御説明申し上げます。
 今回の法改正では、障害者に係る免許の欠格事由のうち、身体障害及び知的障害については廃止されておりますが、精神病者については幻覚の症状を伴う精神病にかかっている者、てんかん病者については発作により意識障害または運動障害をもたらす病気にかかっている者と言いかえただけにとどまっています。これらの病気にかかっている者であっても、症状の程度や服薬によって運転に支障がない場合が多いにもかかわらず、一律に免許の拒否事由とするような規定は合理性に欠けており、差別的と言わざるを得ません。
 また、欠格事由を具体的に規定する政令を定めるに当たっては、対象となる者を不必要に広く定義して人権を侵害することがないよう、病者、障害者の代表者及び専門家から意見を聴取する手続が必要ですが、そのような規定を欠いています。
 本修正案は、特定の病気を有しているだけで欠格となる不当な規定を症状に着目した合理的な規定に改めることにより、欠格条項の適正化を図るとともに、政令を定める前の意見聴取手続を義務づけるものであります。
 具体的には、第一に、病気を理由として免許の拒否等をすることができる者について規定する第九十条第一項第一号を、「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるものを呈している者」と改め、病気または障害を理由として免許の取り消し、停止等をすることができるときについて規定する第百三条第一項第一号及び第二号について、第一号を「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるものを呈している者であることが判明したとき。」と改め、第二号を削除します。
 第二に、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状を政令で定めるに当たっては、内閣総理大臣は、あらかじめ、当該政令で定める症状を呈している者の意見を代表すると認められる者及び当該症状に関する専門的な知識を有する者の意見を聞かなければならない旨の規定を追加いたします。
 第三に、施行期日その他所要の規定を整備いたします。
 以上が、提案の理由及び内容の概要であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたしまして、趣旨の説明を終わります。(拍手)
○横路委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
○横路委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也君。
○小野委員 私は、自由民主党、公明党を代表して、民主党提出の道路交通法の一部を改正する法律案に対する修正案に反対し、原案に賛成する立場から討論を行います。
 この修正案は、免許の拒否事由等について、法律に病名等を規定せず、「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病状として政令で定めるものを呈している者」である場合に免許の拒否等ができる規定に修正するものでありますが、以下、これに反対する理由を申し上げます。
 この修正を行った場合、国民にとって重大な問題である免許の取得の可否について、国会が具体的な要件を何ら定めないこととなるばかりでなく、知的障害や身体障害といった今回の改正により免許の拒否の対象としないものについても、条文上、その対象に含めることが可能となります。
 また、拒否等の処分を行うのを免許申請等の時点で病状を呈している場合に限るものであれば、交通安全の観点から見て不十分と言わざるを得ません。
 以上から、修正案は適当でないと考え、反対するものであります。
 なお、原案については、運転者の安全対策の推進等、まことに時宜を得たものであって、適正かつ妥当なもので、賛成するものであります。
○横路委員長 島聡君。
○島委員 私は、民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表し、ただいま議題となりました内閣提出の道路交通法の一部を改正する法律案及び民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合提出の道路交通法の一部を改正する法律案に対する修正案に賛成する立場から討論を行います。
 現行の道路交通法は、精神病者、てんかん病者、知的障害者、視力、聴力、会話能力がない者などに対し、運転免許試験の受験資格すら与えないなど、障害者や病者を不当に差別した規定となっています。
 今回の改正案では、このような問答無用の門前払いは廃止するとともに、知的能力や身体的な能力など試験で見ることのできる能力については、すべて試験で判断するなどの改善が図られており、障害者の社会参加を阻む要因を除くという点で一歩前進していると評価はいたします。
 しかしながら、他方で、運転免許を拒否、取り消し等ができるとする規定を設けて、幻覚の症状を伴う精神病にかかっている者や、発作により意識障害または運動障害をもたらす病気にかかっている者などを挙げていますが、これは事実上、てんかんなどの病名や疾患名を特定するものになっています。
 障害者や病者の社会参加を促進する立場からは、資格、免許の欠格条項を定める場合には、障害や病気を特定するのではなくて、その資格、免許に必要とされる機能に着目して定めなければならないとされています。
 すなわち、運転免許の交付を拒否する場合についても、安全な運転が可能な機能を有しているかどうかで判断するべきでありますが、改正案の規定では、一定の病気にかかっている者は一律に免許を拒否されることになりかねず、病気の症状の程度や服薬によって運転に支障がない者まで不当に拒否される危険が高いと言わざるを得ません。
 この点、民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合提出の道路交通法の一部を改正する法律案に対する修正案は、「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるもの」とすることによってこのような懸念を解消しており、欠格条項の見直しの趣旨に適していると評価をいたします。
 また、政令を定める前の意見聴取手続の創設も、現代社会において自動車免許を拒否された場合の不利益の大きさを考えていただきたい。それを考えれば、当然必要であると考えます。
 以上、内閣提出の道路交通法の一部を改正する法律案及び民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合提出の道路交通法の一部を改正する法律案に対する修正案に賛成する理由を申し述べ、討論を終わります。
○横路委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
○横路委員長 これより採決に入ります。
 道路交通法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、石毛えい子君外二名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○横路委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○横路委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
○横路委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、古賀正浩君外五名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。古賀正浩君。
○古賀(正)委員 ただいま議題となりました自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    道路交通法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に配慮すべきである。
 一 障害者等に対する免許の拒否等の基準を定めるに当たっては、交通の安全と障害者等の社会参加が両立されるよう、障害者団体等の意見を十分聴取すること。
 一 酒酔い運転等悪質な違反行為に対する点数や免許の取消しの場合の欠格期間のあり方等についてさらに検討を行うとともに、それにより人を死傷させる行為の厳罰化について、関係行政機関の間において速やかに検討を行い、その法制化に向けて、所要の措置を講じること。
 一 近年ますます凶悪化が進む暴走族に対しては、その根絶に向け、警察による取締りを一層強化するとともに、関係行政機関にあっては、学校や地域社会等との連携を図りつつ、暴走族への加入防止、暴走族からの離脱指導、車両の違法改造の防止等その対策強化に取り組むこと。
 本案の趣旨につきましては、当委員会における質疑を通じて既に明らかになっていることと存じますので、説明は省略させていただきます。
 よろしく御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
○横路委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○横路委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。村井国家公安委員会委員長。
○村井国務大臣 政府といたしましては、審議経過における御意見並びにただいまの附帯決議の御趣旨を十分尊重いたしまして、交通安全対策の推進に万全の措置を講じてまいる所存でございます。
 今後とも、御指導、御鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

    ―――――――――――――

-------------------------------------------------------------------------------
障害者欠格条項のページに戻る            ホームページに戻る