2001年3月2日
厚生労働省 障害保健福祉部 御中
厚生労働省 医政局医事課 御中

「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の関係法令改正試案」に対する意見


                     DPI(障害者インターナショナル)
                      日本会議 議長 山田 昭義

 DPI(障害者インターナショナル)は、障害者の完全参加と平等、人権確立を目指して活動している国際組織(158カ国の加盟障害者団体で構成)で、国連経済社会理事会、WHO、ILOなどの国連諸機関においては諮問団体として位置づけられており、国連総会のオブザーバー資格を有している障害当事者団体としてさまざまな活動を展開しています。 DPI日本会議では、公共交通機関のアクセスの改善、「福祉のまちづくり条例」の全国的推進、障害者の自立を支援する介助保障、障害者に係る欠格条項の撤廃等、障害者の人権確立に向けた諸課題に取り組んでいます。

 1999年年8月に総理府から提出された欠格条項の見直しに関する指針には、「障害を特定する規定から、特定しない規定への改正」という方向が示されています。しかしながら、今回の貴省の改正試案の運用(省令事項)については、相変わらず障害を特定する方向が示されています。私たちは、あくまでも、総理府から出された見直しに関する対処方針から後退する方向ではない見直しがなされるべきであると考えます。
 そこで、以下、具体的な提案も含めた私たちの意見を提出します。

1 障害当事者を含めたガイドライン策定委員会の設置を
 今回、厚生労働省において示された改正試案では、依然として省令で定めた運用事項として、障害を特定する表現を用い、相対的欠格事由を残しています。これは、総理府が出した対処方針にも逆行する方向であり、これまでの欠格条項と同じように特定の障害を持つ個々人の可能性を重視しない方向であり、納得することはできません。私たちは、具体的に障害を特定しないために必要なのは、個別の法律に対応したそれぞれのガイドラインを策定する委員会の設置であると考えます。
 省令等の規定において、本人が資格等の取得に必要な業務上の遂行能力、又は、本質的要件に支障があるか否かを判断する基準の策定にあたっては、本人の個別具体的状態を踏まえ、社会的医学的観点から、本人が必要としている補助具・機器、筆記者・通訳者等の補助者の適切な配置を講じた上で、業務上の遂行能力又は本質的要件に該当しているかどうかを判断する基準を策定する必要があります。そして、このような判断基準の策定にあたっては、弁護士・専門医師・障害当事者・行政担当者等で構成される「基準策定に関する検討委員会(仮名称)」を設置し、個別具体的な状態に着目した判断がなされることが重要だと考えます。こうした検討委員会を通じて、「本人が資格等の取得に必要な業務上の遂行能力」とは、どのようなものかを判断する基準が、画一的なものとしてではなく、個別具体的な本人の可能性を最大限引き出していくものとして検討されることが可能となるのです。

2 意見聴取だけでなく、異議申し立て-再審査の仕組みの確立を
 私たちは、意見聴取だけでなく、障害や病気を理由とした欠格の可能性が残されるのであれば、「異議申し立て・再審査」などの仕組みを確立して法律に定めることが必要であると考えます。
 改正試案では、「免許を与えないこととするときは、申請者から意見陳述の求めがあった場合には、意見の聴取を行わなければならない」としています。このことは、重要なことだと考えます。しかし、本人の意見聴取が、本人に下された決定に何ら影響を与えないとすれば、そもそも意見聴取を行う目的が不明になってしまいます。本人の意見を聴取するのは、本人が、実際どんな補助的手段があればできるのか、といった本人の意見を聞く場として設定されるべきです。そして本人の判断と、厚生労働省や専門家の判断とが、異なる場合は、「異議申し立て−再審査請求」ができる、という規定を加える必要があります。

3 補助的手段は、公的施策として導入を
 改正試案においては、補助的手段の導入は、現実に障害を持つ本人の社会参加を促すためのもっとも重要な事項の一つであると考えます。そのときに、なにを「補助的手段」とするのかは、あくまでも、その業務を行う本人が判断することが重要です。そのためには、補助的手段の範囲を、通訳者などの補助人にも広く適用することが必要です。また、改正試案の中では、補助的手段の活用に関する責任主体が明確に示されていません。私たちは、資格等の取得後、本人が職場において補助的手段を活用して業務を遂行するにあたって、当該機関の事業者は、国及び地方公共団体と連携して本人が必要とする補助的手段等の導入に関する必要な措置を講ずるべきだと考えます。
 そうした連携において、特に国及び地方公共団体は、補助的手段の整備に係る人件費を含む経費等について、当該事業者を適切に支援するための必要な措置を講じる義務があること明記するべきです。
 例えば、薬局等構造設備規則や省令という特定の規定で定めるのではなく、法律として責任主体を明確化すべきです。

4 今回の改正試案に基づく法案の成立や、政府方針が設定した期限(2002年度末)をもって、「これにて障害者欠格条項の見直し作業は終了」と片づけられるような問題では絶対にありません。解決が必要な課題を改めて確認し、貴省をはじめとする政府全体で引き続き取り組むこと決定的に重要です。
 私たちは、この改正試案を具体的に運用していくためには、今後の取り組みこそが重要だと考えます。これまで、特定の障害を持つ人々を絶対的に排除・門前払いしてきた多くの法律は、障害者の職業選択の自由を奪い、その意味で人権を侵害する法律であるといえます。
 今後、改正された法律が施行され、運用されていく過程で、障害当事者を含んだ検討委員会の設置と活動が、障害者の人権を尊重し社会参加を進めていく立場から、より
よい基準を策定していくことになり、現時点ではもっとも具体的な可能性を示していると言うことできます。

以上

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