第151回国会

内閣委員会会議録 

平成十三年四月十一日(水曜日) 第7号


(※議事録中より、障害者の欠格条項に関しての議事部分のみ、抜粋いたしました)

    午前九時開議
 出席委員
   委員長 横路 孝弘君
   理事 植竹 繁雄君 理事 小野 晋也君
   理事 阪上 善秀君 理事 横内 正明君
   理事 島   聡君 理事 中沢 健次君
   理事 河合 正智君 理事 塩田  晋君
      岩崎 忠夫君    亀井 久興君
      川崎 二郎君    古賀 正浩君
      谷川 和穗君    近岡理一郎君
      西川 公也君    根本  匠君
      平沢 勝栄君    三ッ林隆志君
      森岡 正宏君    渡辺 具能君
      井上 和雄君    石毛えい子君
      大畠 章宏君    細川 律夫君
      山花 郁夫君    山元  勉君
      太田 昭宏君    松本 善明君
      北川れん子君
    …………………………………
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長) 伊吹 文明君
   内閣府副大臣       坂井 隆憲君
   法務副大臣        長勢 甚遠君
   内閣府大臣政務官     西川 公也君
   内閣府大臣政務官     渡辺 具能君
   政府参考人
   (警察庁長官)      田中 節夫君
   政府参考人
   (警察庁長官官房審議官) 上原美都男君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君
   政府参考人
   (警察庁刑事局長)    五十嵐忠行君
   政府参考人
   (警察庁交通局長)    坂東 自朗君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局安
   全衛生部長)       坂本由紀子君
   政府参考人
   (国土交通省自動車交通局
   長)           高橋 朋敬君
   内閣委員会専門員     新倉 紀一君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十一日
 辞任         補欠選任
  小西  哲君     森岡 正宏君
同日
 辞任         補欠選任
  森岡 正宏君     小西  哲君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 道路交通法の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)
 自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律案(内閣提出第五一号)
 危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案(細川律夫君外二名
提出、衆法第一四号)

     ――――◇―――――
○横路委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、道路交通法の一部を改正する法律案、自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律案及び細川律夫君外二名提出、危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官田中節夫君、警察庁長官官房審議官上原美都男君、警察庁生活安全局長黒澤正和君、警察庁刑事局長五十嵐忠行君、警察庁交通局長坂東自朗君、法務省刑事局長古田佑紀君、厚生労働省労働基準局安全衛生部長坂本由紀子君及び国土交通省自動車交通局長高橋朋敬君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○横路委員長 石毛えい子さん。
○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。私は、本日は、道路交通法の一部を改正する法律案に含まれております免許の欠格事由として障害を規定していること、このことに関して質問をいたしたいと存じます。
 最初の質問でございますけれども、この障害にかかわる欠格条項の見直しにつきましては、御案内のとおり、旧総理府の障害者施策推進本部が九九年の八月に方針を出しております。そうした方針をベースに置きながら、各省庁それぞれかかわります欠格条項の見直しを進めて、今回、国家公安委員会から見直しの法案の提出がされたと理解をいたしますけれども、ちょっと念のために触れさせていただきます。
 これまでの法律では、八十八条で「免許を与えない。」ということで、「精神病者、知的障害者、てんかん病者、目が見えない者、耳が聞こえない者又は口がきけない者」を規定し、改正法案では、九十条の「免許の拒否等」ということで、「次に掲げる病気にかかつている者」ということで、「幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定める」「発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定める」あるいは「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定める」というふうに変わっております。
 この変わり方については、考え方はいろいろあると思いますけれども、まず、公安委員会委員長にお尋ねをさせていただきたいと思いますが、警察庁といたしまして旧総理府の見直し決定を踏まえましてどのようなお考えをお持ちでいらっしゃるか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
○伊吹国務大臣 実は、私も地元の身体障害者団体連合会の会長をボランティアでやっておりますので、このことについては大変関心を持っております。
 旧総理府の先生御指摘のものに従いながら今回改正をやったわけでありますけれども、同時に、警察としては、交通の安全、そしてそれによる事故、死傷者ができるだけ出ないようにするという、これは当然の責任を一方で持っているわけでございますから、これを公益という表現をすれば、その公益と障害のある者もない者もお互いに法律上できるだけ平等であるという共生社会との理念を調和させながら今回つくったということでございます。
 したがって、法律上、つまり、国権の最高機関である国会の意思として排除をするのではなくて、その人たちも受ける権利はある、受けたけれども、結局、試験のプロセスにおいて免許を差し上げるということが大勢の方に結果的に御迷惑をかけるという場合には、やはり少し我慢していただくという部分が一つございます。
 それから、実は、法律あるいは政令である程度はっきりと書いておかないと、かえって、排除するときに、行政当局の恣意によって範囲が拡大されて排除をされるということが困る場合のみ限定的に書いたということなんです。
 ですから、あと、一つ一つの幻覚の症状とか精神障害の問題とか、これから先生お尋ねになるんじゃないかと思いますから、おのおの具体例に沿ってお答えをしたいと思いますが、大体、共生社会の基本原則にのっとりながら公益を守っていくために最小限の我慢をしていただくという考えでつくったということです。
○石毛委員 公安委員長御答弁くださいました、交通の安全を確保する、事故を防ぐというような公益と、それからどなたも平等に、この内容に関しましては運転免許ですけれども、それを持つ機会を保障される、あるいは実質的に適格であれば持つことができるという、その共生社会との調和という総論的な御見解は私も同感でございます。
 ただ、公安委員長も御指摘くださいましたように、その調和がどういう内容をもって実現されるかというところで、いろいろと丁寧な議論の積み上げが必要なのだというふうに私は理解をしております。その点を申し上げまして、次の質問に移りたいと思います。
 今回、規定ぶりが変わったわけでございますけれども、こういうふうに規定が変わりまして、実質、障害者の方が免許を取得になるというそのことにつきましてはどういうふうに理解をしたらよろしいでしょうか。書きぶりが変わってもほとんど取れる人はふえないんじゃないかというような思いもなきにしもあらずというような、そういうことを申し上げれば質問の趣旨が御理解いただけるかと思いますけれども、そこの点を明らかにしていただければと思います。
○坂東政府参考人 委員御指摘のように、現行法では、精神病者、知的障害者、てんかん病者、目が見えない者、耳が聞こえない者、口がきけない者及び一定以上の身体の障害のある者については免許を与えないということにされているところでございます。
 今回の改正の結果、どのぐらいの方がという形で、ボリュームで、数でどのぐらいの方が取れるような形になるのかということをお示しすることはできないんですけれども、どういった方が取れるようになるかということについて、少し平たく御説明したいと思いますが、一つは、口がきけない方につきましては免許を受けることができることとなるということが言えると思います。
 それから、知的障害者または身体的な障害のある方は、運転免許試験に合格すれば免許を受けることができることとなるということが言えると思います。
 それから三つ目でございますけれども、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気につきましては、政令で具体的な基準を定める考えでございますが、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがなくなったと認められるような事情がある場合などにおきましては免許を受けることができるようになる、こういったことでございます。
○石毛委員 何か余りよくわからない、具体的にどんなふうに変わっていくのかというイメージが。
 どうなんでしょう。口がきけない方と申しますと、例えば、耳が聞こえないことに伴って言葉を発することができないとか難しい方もいらっしゃるでしょうし、それから中途失聴で聞こえなくなって、その方は口がきけるわけですけれども、口がきけない方というのは具体的にはどういう方を指すんですか。
○坂東政府参考人 そういった口がきけなくなった原因のいかんを問わず、やはり口がきけない方ということでございまして、要は、法律は、事故が起こった場合におきましては、やはり救護措置とかあるいは警察官等へ連絡しなきゃいけないということになっておりますので、どうしてもやはりそういったことが、運転をしている場合におきましては事故というものは想定せざるを得ないということから、こういった要件を現行法では加えていたものでございます。
 ただ、やはり、最近の科学技術等の進歩によりまして、実際に他の手段でそういった事故状況というようなものも必要な場合におきましては警察官等に連絡することができるようになるだろうということでございますから、口がきけない方というこの要件につきましては、先ほど申しましたように、免許を受けることができるようになるということでございます。
○石毛委員 余り具体的なイメージがわかない部分がありますけれども、次の質問に移ります。
 施行規則に絡まって少し具体的な話をお伺いしたいんですけれども、免許に関する適性といいますか、欠格であるかどうかの判断というのは、法律で規定している部分と、それから具体的には省令で規定している部分がございます。
 道路交通法施行規則の二十三条「適性試験」というところですけれども、聴力というところで、補聴器により補われた聴力が十メートルの距離で九十デシベルの警音器の音が聞こえるものであること、こういう条件がございます。
 それぞれここには、色彩識別能力ですとか視力ですとか運動能力とか規定されておりまして、書きぶりが理解をする上で少しずつ違っているような思いもして私はこれを読んだんですけれども、この聴力に関しまして、十メートルの距離で九十デシベルの警音器の音が聞こえなければ運転免許の適性試験には当てはまらないということになるわけですけれども、この規定はどういう理由でされているのでしょうか。合理性をお尋ねしたいということなんですが。
○坂東政府参考人 聴力につきましては、委員御指摘のように、適性試験の合格基準は、「一〇メートルの距離で、九〇デシベルの警音器の音がきこえるものであること。」というふうにされているところでございます。我々も、道路交通法の場におきましても、音というものを発していろいろと交通危険を避けるとかいうようなことの規定ぶりがございますから、やはり音が聞こえないとそういった危険回避行動等がとれないといったこともございまして、こういった要件というのを決めたわけでございます。
 警音器の音の大きさにつきましては、道路運送車両の保安基準第四十三条三項におきまして、「自動車の前方七メートルの位置において百十二デシベル以下九十三デシベル以上」というようにされているところでございますので、こういった基準も踏まえまして聴力についての適性試験の合格基準を定めたものでございます。
○石毛委員 それは、今の七メートル前でですか、百十二デシベルから九十三の範囲でおさめたものを前提にして九十デシベルで決めたという御説明では、なぜ免許の適性にこの九十デシベル、十メートルのところで響く音が聞こえなければいけないかという御答弁をいただいたというふうには私は思えないのですけれども。その次には、ではなぜ九十三から百十二デシベルなんですかという質問になっていって、これは堂々めぐりの話になってしまいますが、なぜそれだけ聞こえなければ免許を持つこととして合理性がないというふうに判断されているのかということをお教えいただきたい。
○坂東政府参考人 先ほど申しましたように、保安基準というものはそういった書きぶり、規定ぶりになっているということでございますが、当然ながら、警音器の音というものはそういうものでございますけれども、それを聞いて、そして運転者がどういうように行動するか、そういった判断から道路交通法では規定をしているということでございまして、自動車の一般的な警音器の音を認知することが自動車の安全な運転を行う上で必要であるということから、一応そういった保安基準というものを参考にしながら道路交通法で決めたというものでございます。
○石毛委員 大事な点だと思いますので、少し議論をさせていただきたいというふうに思います。
 私のところに聴覚障害をお持ちの方からメールをいただいております。音が聞こえなくても、例えば後ろとか前とかから救急車が来るというようなときであれば赤色灯で認知ができる、それから左右であれば当然わかる、そういうようなことで、音が聞こえなくても、安全を確保するための代替的な能力の発揮といいましょうか、そういうことがある、そういう意味だと思いますけれども、それから、もし危険なことがあればそのほかの車がいろいろと様子を提供するでしょうから、そういうことからも判断できるというような意見が寄せられていて、聴覚障害の方がどれだけの聴力を持っているかということだけで適性であるかどうかを唯一の判断基準にするということはやはり困るというような御意見なんです。
 それから、これは現実にはよくある話だと思いますけれども、例えば、とてもロックミュージックの好きな方が車の窓を閉め切って高いボリュームで音楽を聞いていれば、実際問題とすれば十メートル離れたところで音を聞くというようなことはしていない、できない。
 だから、九十デシベルというそのこと一つをどう判断するかをめぐってもいろいろな角度があって、究極的に安全運転と結びつける場合には、もっといろいろな要素を加味しながら、先ほど、口がきけない方というのは他の手段で事故状況を言うことができるのでという御回答をいただきましたけれども、例えば、今のこの話ですと、他の手段を用いて危険の察知ができたりあるいは安全運転が可能であれば、聴力は聞きにくくてもあるいは聞こえなくても免許取得ということはあり得るというような、そういう解釈があっていいんだというふうに思うわけです。
 一律にシングルイシューだけで事を判断するというのでは、むしろ、免許証を持ってもらうためにいろいろな考え方をとり、いろいろなサポートをしていく、そう いう前進する方向性と、それから与えないためにラインを引いてしまうという、それはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、何かその政策としての方向性が私に言わせていただければ違うのではないか、そういう思いがするんですけれども、何か御感想ございますでしょうか。
○伊吹国務大臣 これは先生、一番最初に私が申し上げた、できるだけ交通事故によって一般の方々の生活、生命等が侵されないように守っていくという公益と障害のある方の個人の人権とのバランスの問題だと思うんですね。
 今のようなケースも、先生がおっしゃったような場合には、例えば、救急車が動いてきた場合にはピポピポは聞こえなくても赤色灯の点滅で判断できるという場合も、そういうケースにはございましょう。しかし、遮断機のない警報音だけの踏切があった場合に、認識ができなくて結果的に事故が起こったという場合には、これは、免許をもらっておられる限りは御本人には何の過失も実はないわけですよ。身体上の障害からそういうことになるわけですね。しかし、ロックミュージックを聞いて、がんがん音を立てて警報音を聞かずにやった場合には、この人は当然刑法上の処罰を受けますよ、それだけの注意義務を怠っているわけですから。
 ですから、やはり、そういう法体系の中で、私は今回、自分もそういう立場のボランティアの仕事をしているだけに、できるだけ先生がおっしゃっているようにぜい肉をそぎ落として、ここだけは大多数の方の交通安全を守っていただくためにお許しを願えないかという範囲で抑えておりますので、おのおの人権と公益のバランスの、先生のお考えあるいは一般のまた別の政治家の考え、政党の理念の立て方によって、人権を重視する政党と公益を重視する政党とかいろいろあると思うのですけれども、ここは国民の合意は得られるのではないか、私どもはそういうふうに考えて実はつくったわけです。
○石毛委員 公安委員長のお考えも承りましたけれども、もう一度私の方からも申し上げさせていただきたいと思います。確かに、法律は一つの法律だけで機能するわけではございませんし、いろいろな関係の法律が相互に絡み合ってということもあろうかとも思います。ですけれども、あえて私からもまた申し上げさせていただきたいのです。
 私も、今回、障害と欠格事由を問い直すというのは、本当に歴史的に、それこそ二十一世紀が始まったこの時点で記念すべきとても大きな法改正だというふうに思いますので、あとう限り人権の保障というそこの点を大事にして考えていきたいという思い、これは公安委員長も同じだと思います。
 そういうようなこともありまして、いろいろな資料などを見ておりますと、もしかしたら警察庁はもうごらんになっていらっしゃるのでしょうけれども、アジア太平洋障害者の十年推進地域会議というようなところでは、障害と欠格事由のことに関しまして、諸外国に調査のアンケートを発しております。
 そのアンケートで、例えば、運転免許ですと、聾者への自動車運転免許は、少なくともオランダ、イギリス、ドイツ、恐らくEU諸国で認められているとか、それ から具体的にイギリスの実例になりますと、聞く能力について報告する必要はありませんというような回答をいただいておりましたり、それから、聞く能力を補完する意味で、オランダでは車にギアをチェンジするタイミングを知るためにタコメーターをつけさせていますというような、そういう回答。
 それから、一九九九年のカリフォルニア・ドライバーハンドブックという、これは運転免許を取る各自動車局で無料配付されている冊子ですけれども、この中にも、聴力に関しましては文書が出されていまして、聾者または聴力に問題のある運転者は適応できます、見る習慣に頼って学習できるからです、右のバックミラーは助けとなりますというような、こういう書きぶりにもなっているわけです。
 ですから、国際化の時代でもございますし、それぞれの国でさまざまな方が運転をされるという状況が国際的にあるわけですので、ただいま私が、その一端だけ、わかる範囲で紹介させていただきましたけれども、よく御検討いただきまして、施行規則を定めていくときなどは、ぜひ、当事者の方、当該の皆さんの御意見も受けとめていただきまして、具体的に法令に反映するような仕組みをお考えいただきたいというふうに思います。
 局長、まず御答弁いただきまして、公安委員長、ぜひいい御答弁を下さい。
○坂東政府参考人 委員御指摘のように、聴力に関しましては、欧米諸国におきましては、普通自動車あるいは自動二輪車の運転に必要な免許を受けようとする場合におきましては、聴力が一定以上であるといったことが運転免許の要件とされていないというところでございます。ただ、大型免許とかあるいはバス免許等を受けようとする場合におきましては、聴力が一定以上あることが免許の要件とされていることが多いというように聞いております。
 そこで、御案内のように、免許制度というのは国によってかなり違います。例えば日本におきましては、私ども日本国内の普通免許では、外国で大型自動車と言っている車両総重量八トン未満までの車は運転することができるというふうにされているというような違いもございます。
 それからまた、当然ながら、交通事情あるいは道路事情というのは各国においてそれぞれ違うところがございまして、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、我が日本におきましては、結構踏切が多いとかあるいは道路構造的にも見通しの悪いカーブが多いといったようなこともございますので、現時点におきましては、直ちに、聴力が一定以上であることを免許の要件としないとすることは困難であるというように考えておるところでございますが、今後、仮に聴力の要件を先ほど申しました免許の種別ごとに異なるものとした場合等を含めまして、聴力と自動車等の運転との関係につきましてはさまざまな角度から検討を行っていきたいというように考えております。
○伊吹国務大臣 政治家として、法案を提出した我々の理念としては、日本という今の国の現状において、大多数の人の生命や交通の安全を守っていかないといけないというところでは、これがぎりぎりだと実は私自身は思っているのです。
 しかし、万一先生がおっしゃったような条件緩和をした結果事故が起こったりなんかした場合には、実は私も京都の障害者団体ともいろいろ話をしたのですけれども、その場合に、団体としては、社会的に大変つらい思いをまたかぶるという部分 もあるのですね。
 だから、私は、少し道路の状況とか何かを見ながら、基本的にはこれは共生社会の原則に一歩踏み出しているということは先生も認めていただいているわけですから、できるだけ、免許をお取りになった方も、自分の障害のために事故を起こさないという確信が持てるような状況になったときに、またそういう状況をつくるように、これは道路の問題も含めて党派を超えて努力をして、そのときには先生の御希望に沿えるように私も努力はしたいと思います。
○石毛委員 公安委員長に御答弁いただきましたけれども、私の手元には、全日本聾唖者連盟から警察庁長官あてに、道路交通法施行規則第二十三条も改正しというような要請書も提出されて、それぞれ個別の団体それから連盟、お考え、ニュアンスの違いもないことはないのではないかと思いますけれども、先ほど局長が、例えば八トン未満は普通免許というような状況もありという御答弁でしたけれども、今公安委員長もお触れくださいましたように、安全性の確保を前提にして、個別に免許付与を実現するとしたらどういう方向で一つ一つ物事を整理していったらいいかという、その丁寧な作業が恐らく必要なんだろうというふうに、この件に関しては違いはないのだと思います。
 そういうようなことも含みまして、これから具体的に細目は省令で決めていくということになりますでしょうから、ぜひとも丁寧な作業をお願いしたいというふう に思います。この省令がそのまま生きていくということはないと思う。法律が変われば、ここに病気の種類も入れていかなければいけないでしょうから、必ず省令は動かしていくということになりますでしょうから、ぜひそう要望したいと思います。
 次の質問でございますけれども、同じような趣旨の質問を少し違った角度からということになりますでしょうか。
 今、肢体不自由をお持ちの方の免許取得は随分進んでいますし、実際に運転なさっている方もたくさんおられます。私の知人もたくさん運転されております。二十年ぐらい前でしたでしょうか、肢体不自由の方が運転免許を取れるようにということで訴訟を起こされた、荒木訴訟だったと思いますが、障害をお持ちの方が免許を持たれるようになる大変画期的な、歴史的な訴訟だったというふうに、私、この法案を読んでいてふと思い出したのです。
 肢体不自由の方が免許をお取りになるということと、それからハンドルを改造するとかブレーキをどうするとか、自動車を具体的に改造しなければならないんだと思いますが、お一人の肢体不自由の方と一台の車のその具体的な改造のマッチングといいましょうか対応といいましょうか、それはどんなふうに進められているのでしょうか。
○坂東政府参考人 例えば警視庁の場合でございますけれども、肢体不自由な方が免許を受けたいというように来られた場合におきましては、運転免許センター等に相談所というのがございますので、そこでいろいろと御相談をしていただく。そして、実際に身体不自由の方々が運転をされるようなシミュレーター的なものがございますので、それにとりあえず乗っていただく。そして、例えばどういうようなところを補わなければいけないとかいったようなことを、警視庁の運転免許センターの職員がいろいろとその方々にアドバイスをして、こういった形の改造を加えたらよろしいですよといったことを御指導して、その方はそういった改造車を持ち込んで練習をされて、そして技能試験等々に合格すれば運転免許を与えているといったようなことで、かなりきめ細かな指導というのがされているように私は伺っております。
○石毛委員 この規則の二十三条ですけれども、運動能力というところでは、最初の項目が、「自動車等の運転に支障を及ぼすおそれのある四肢又は体幹の障害がないこと。」ということで、この支障を及ぼすおそれのあるというこのことが、自動車の方が改造されて、あと、その改造された自動車を使って運転する技術が適切であれば合格するということになるわけですね。それから、その二項めのところは、「補助手段を講ずることにより自動車等の運転に支障を及ぼす」と、補助手段を講ずるというのが入っているのですね。これは恐らく何度も改正されてきて、変えられてきてこういうふうになったのだと思うのです。
 私、ちょっとしつこくて恐縮ですけれども、聴力のところだって、「補聴器により」ということを書くだけではなくて、例えば道路状況その他その他、何を書くかは検討がありますけれども、その総合的な判断により危険が察知できるときはというような書きぶりの規定だってあり得るんだと思います。それぞれみんな変わってきているんだと思いますので、ぜひともそういう丁寧な対応を、先ほどに重ねて恐縮ですけれども、お願いをいたします。
 それからもう一点、次の質問でお尋ねしたいのですけれども、今、運転免許センターがシミュレーション台を用意して具体的な自動車改造についてアドバイスをされているという御答弁でしたね。それは大変感銘を受けて伺ったわけですけれども、そのほかに、障害と免許にかかわりましてどんな相談が今までなされてきているか、そのことをお尋ねしたいと思います。
○坂東政府参考人 先ほど申しましたように、やはり各都道府県公安委員会というんでしょうか、警察の中にはそういった方々の相談窓口というのを設けているところでございまして、例えば、心身に障害がある方から、運転免許が取得できるのか、あるいは自分の所有する車両で試験を受け合格した場合にその免許にどのような条件が付されることになるのかとか、あるいは、免許取得後に障害の程度が悪化した、それで更新が来た、その更新に当たって新たな条件を付されることがあるのかとか、あるいは付与された条件を解除または変更してほしい等々のさまざまな相談を受けているところでございます。中には、てんかん病者と診断されたが免許を取得できるのかといったような相談もあるというように伺っているところでございます。
 ちなみに、平成十二年度、昨年度の適性相談の状況でございますけれども、全国では約二万二千件近くの御相談を受けているところでございます。
 警察といたしましては、今後とも、こうした相談に対しまして、適切に助言等、対応できるようにしたいというように考えているところでございます。
○石毛委員 今の局長の御答弁は、私は、失礼ですが、御答弁いただいたことにならないんだと思います。
 やはり、この道路交通法の改正法案の内容といたしまして、欠格条項をどのように取り扱っていくかということは大変重要な中身であるということは論をまたないんだというふうに思います。それで、私は、肢体不自由の方がシミュレーション台まで入れて運転免許を取れるように推進してこられたというのは、それぞれの都道府県の公安委員会のやはり大変な御努力があってそういう取れる方向性を実現されてこられたんだというふうに、むしろ評価をさせていただくわけなんですけれども、であるとすれば、ほかの障害に関しましても、それぞれの免許センターに具体的にどのような相談がされて、それに対してどういう見解をお持ちになられて、そして今回の改正法案の中身としてはこういう規定のしぶりにした、こういう御説明があってしかるべきだというふうに私は思うわけです。もし、今の局長の御答弁が欠格条項に関する改正法案が規定される一端の理由であるとするならば、理由にはならないんだと思いますけれども、であるとするならば、私は、それは大変誠実性を欠くといいますか、そういうふうに思わざるを得ません。
 やはり、具体的にどんなことに困っていらっしゃってどういうふうに変えられる可能性があるのか、あるいは確実性があるのか、そういうことが見えてくるのは相談の場面でありますでしょうし、あるいはそれぞれの当事者の団体の代表の方の御意見でありますでしょうし、あるいは医師等、関連の方の御意見でありますでしょうし、あるいは、交通に大変精通しておられる、あるいは事故等に対処する経験も長く持っておられる警察の方の対応もあるんだと思います。総合的な角度から判断されなければならないと思いますけれども、その判断の一つとしてどういう相談が具体的にあったかということはもう少しきちっとキャッチされているものと私は思っておりますので、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。
○坂東政府参考人 先ほど、平成十二年度には二万二千件弱の適性相談があったというようにお答えいたしましたが、内訳といたしましては、運動能力に関するものが約一万四千件弱、聴力に関するものが約二千三百、それから視力に関するものが二千百強、その他が一千件弱ということになっております。
 御案内のように、現行法では、身体系の障害をお持ちの方は、先ほど委員御指摘のような形で、いろいろな補助装置とか器具とかがあるということで、そういうものと一体となって安全に運転ができるとすれば免許を与えているという制度をとっておりますが、そういう精神系というのでしょうか、そういうものは今御指摘のように現在の法律では欠格事由として免許を受けられないということになっておったということもございますので、そういった意味からはこういった相談に来られる方というものはやはり少なくなっているのではないか、このように考えているところでございます。
○石毛委員 それでは、聴力とか視力に関しても相談の件数がそれぞれ二千三百件、二千百件という大変大きい人数の御相談があるという事実を確認させていただきたいと思いますし、それから、どういう内容の相談で、それは免許の取得に結びついていくとすればどういう改善をしていったらいいのかというような分析をなさって、ぜひともいい方向へ省令の決定というようなところで生かしていっていただきたいというふうに私は要望をいたします。
 次の質問の時間がなくなってしまったのですけれども、今回の法改正に関しまして、確かに障害者であるという規定は変えておりますけれども、病気を規定しているという意味では、必ずしも障害者であることを規定していないというふうには読み切れないといいますか、「病気にかかつている者」という、この中身を読むとそのままどういう障害をお持ちであるかということが浮かび上がってくる、こういう書き方になっているというふうに私は理解しているのです。
 こういう書き方について、例えば総務省の方針では、必ずしも病気を挙げているのではなくて、心身の故障のため業務に支障があると認められる、こういう書き方もあります。ですから、心身の故障のため運転に支障があると認められる者という書き方でもよかったのではないか、こういう理解も成り立つと思いますけれども、もう時間が来てしまいましたので、簡単に御答弁をいただきまして、また質問の継続をさせていただきたいと思いますが、お願いいたします。
○坂東政府参考人 先ほどの御答弁で、視力関係の適性相談があるいは二千百と言ったかもわかりませんけれども、これは五千百でございます。
 それから、この改正案の書きぶりでございますけれども、この改正案では処分の対象となる病気の属性というものを法律で規定しているところでございますが、この理由は、どのような場合に免許を与えないなどの処分を行うかにつきましては、やはり国民の権利義務に直接影響を及ぼすことということから、その要件はできるだけ法律で明らかにする必要があるだろうというふうに判断して、こういった書きぶりにしているところでございます。
○石毛委員 この件に関しましては引き続き質疑をさせていただきますということを述べさせていただきまして、終わります。ありがとうございました。

○松本(善)委員 欠格条項の問題について警察庁に質問します。
 道交法の免許の欠格条項の問題ですが、精神病者、精神薄弱者、てんかん病者、目が見えない者、耳が聞こえない者、口がきけない者等の条文を削除したこと、これは障害者の社会参加を阻む要因を除くという点で一歩前進だというふうに思います。
 しかし、改正案は、新たに免許を拒否、取り消し、停止できる要件として「イ 幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの」「ロ 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの」「ハ イ又はロに掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの」という条文を加えた。これは事実上、てんかんなどの病名や疾患名を特定するものになっているんではないかと思いますが、どう考えますか。
○坂東政府参考人 今回の改正案は委員御指摘のような形で改正をしたいということでございますが、そこで規定しているものは、いわゆる病気の属性というものを法律で書いたというところでございます。
○松本(善)委員 この特性というのはてんかんということになりませんかというんですよ。
○坂東政府参考人 具体的な病名は、そこに書いていますように、この法律が通りますと、この法律を受けまして政令で定めるという形になります。
○松本(善)委員 この方々というのは差別に対して非常に神経質になっているのですよ。やはり、先ほども質問がかなりやられて、傍聴もたくさんの方がしておられましたけれども、その気持ちを察して可能な限りのことをしなければならない。
 私は、交通の安全のために何らかのきちっとしたあれはしなければならぬと思っているのですよ。しかし、運転免許取得の基準は、病気や機能障害ではなくて、その人の能力などが運転業務の遂行に適しているのかどうかということで判断されるべきだと思います。病気や機能障害で欠格とすることは、安全運転に支障のない幻覚や意識障害発作があることも無視されてしまいかねない。病気であっても運転ができる、そういう性質の病気もあるわけなんですね。
 障害者等の社会参加を目的とした政府の障害者施策推進本部決定の趣旨は、免許や資格について、障害名や病気を特定せずに、能力などが業務遂行に適しているのか否かで判断する基準を設けることがその趣旨だと思います。そうだとすれば、自動車の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるものというような程度で十分ではないかというふうに思いますが、どうですか。
○坂東政府参考人 おおよそどのような場合に国民に対して処分を行うかにつきましては、その権利義務に直接影響を及ぼすということから、処分理由を法律で明らかにする必要があろうかと考えています。特に、私どもが所管しています運転免許行政というものは、御案内のように、七千四百万人、つまり皆免許と言われているようにほとんどの方が運転免許を取っている、そういった大量行政でございますので、どのような場合に免許を与えてどのような場合に免許を与えないかについての要件を法律に規定する必要性が非常に高いというふうに考えているところでございます。
 御指摘のように、拒否事由あるいは取り消し事由として、仮に、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるものといったような形で規定した場合におきましては、具体的にどのような場合に免許の拒否等の処分を行うかについて、必ずしも法律上明らかではないのじゃないかというふうに考えています。
 そしてまた、私どもは、今回の改正におきまして、知的障害者、つまりこれは現在免許の欠格事由ということになっているわけでございますが、知的障害につきましては、免許の欠格事由から削除し、かつ、拒否とか取り消しの対象としないというふうにしておりますけれども、こういったものが含まれる可能性もある。さらにはまた、身体的能力といったものにつきましても、今回は拒否対象ともしないというふうに考えておりますけれども、こういった身体能力につきましても含まれることになりまして、やはり、規定がかなりあいまいになるのではないかというように考えているところでございます。
 他方、今回の改正案におきましては、現在、一定の病気にかかっている場合であれば一律に免許を与えないこととしているのを改めまして、処分の対象となる病気の属性というものを法律で明確に規定した上で、一律に道を閉ざすのではなくて、政令で定める基準に従いまして免許の拒否やあるいは取り消し等の処分を行うことができることとしています。これは、逆に言いますと、危険性が低いと認められる一定の事情がある場合には免許は与えるというような形でございますので、こういったことを御理解いただきたいと思います。
○松本(善)委員 最後に、伊吹大臣に、中央交通安全対策会議のメンバーの閣僚として、今の話ですが、午前中の議論をよく聞いておりました。
 私どもも、交通の安全を確保するということと、それから障害者の皆さん方の要望とのバランスといいますか、それは必要だというふうに思うのですよ。だけれども、できるならば、障害者の要望が入れられて、しかも交通の安全が確保できる、そういう規定の仕方があり得ると思うのですよ。
 それは、いろいろ工夫されてきていることはもう間違いないと思います。そういう点では一歩前進だと思います。だけれども、せっかくやるのなら、もう一歩努力をして、そして障害者の皆さん方が社会参加できる、しかも交通の安全が確保できる、その工夫をやはりもう少しやるべきではないだろうか。その努力について大臣の見解を伺いたいと思います。
○伊吹国務大臣 先生の、身体の障害はもちろんですが、精神障害、知的発達障害を持たれる方々に対する温かいお気持ちは、全く私も共有いたしております。
 午前中、石毛先生からも同じようなお尋ねがございまして、これから政令を書く段階で、各障害団体の方も含めまして、どういう形がいいのかということはよく御相談させていただきたいと思います。
 ただ、先ほど参考人が申しましたように、これはある意味では共同参加の権利を公益のために制限する行為をするわけですから、あいまいな形で法律、つまり立法府のお許しをいただいて、その後政令で行政府の形としてこれを決めていくというよりも、私は、やはりはっきりとしておいた方がむしろいいんじゃないかなという気もいたします。
 ここのところは、お互いの持っている法律に対する判断の異なるところかもわかりませんけれども、お互いに、石毛先生も、先生も、私も、同じような気持ちをもって、この政令のつくり方については工夫をさせていただきたいと思います。
○松本(善)委員 私は、そう違いはないので、やはり工夫の、知恵の働かしどころではないかということを申し上げて、終わりたいと思います。

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