第151回国会
衆議院・厚生労働委員会会議録
平成十三年六月二十日(水曜日)
午前九時三分開議
出席委員
委員長 鈴木 俊一君
理事 棚橋 泰文君 理事 谷畑 孝君
理事 森 英介君 理事 吉田 幸弘君
理事 大石 正光君 理事 鍵田 節哉君
理事 福島 豊君 理事 佐藤 公治君
奥山 茂彦君 上川 陽子君
鴨下 一郎君 木村 義雄君
北村 誠吾君 熊代 昭彦君
倉田 雅年君 左藤 章君
佐藤 勉君 田村 憲久君
高木 毅君 竹下 亘君
西川 京子君 野田 聖子君
浜田 靖一君 林 省之介君
原田 義昭君 福井 照君
松島みどり君 三ッ林隆志君
宮腰 光寛君 宮澤 洋一君
吉野 正芳君 渡辺 具能君
家西 悟君 石毛えい子君
大島 敦君 奥田 建君
金田 誠一君 釘宮 磐君
小林 憲司君 古川 元久君
三井 辨雄君 水島 広子君
山井 和則君 青山 二三君
江田 康幸君 斉藤 鉄夫君
西 博義君 都築 譲君
樋高 剛君 小沢 和秋君
木島日出夫君 阿部 知子君
中川 智子君 小池百合子君
松浪健四郎君 川田 悦子君
…………………………………
厚生労働大臣 坂口 力君
法務副大臣 横内 正明君
厚生労働副大臣 桝屋 敬悟君
厚生労働副大臣 南野知惠子君
総務大臣政務官 山名 靖英君
厚生労働大臣政務官 佐藤 勉君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議
官) 田中壮一郎君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議
官) 清水 潔君
政府参考人
(厚生労働省医政局長) 伊藤 雅治君
政府参考人
(厚生労働省健康局長) 篠崎 英夫君
政府参考人
(厚生労働省職業安定局長
) 澤田陽太郎君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局
障害保健福祉部長) 今田 寛睦君
政府参考人
(厚生労働省政策統括官) 坂本 哲也君
参考人
(財団法人日本心臓血圧研
究振興会附属榊原記念病院
院長) 細田 瑳一君
参考人
(精神科医) 藤田 保君
参考人
(社団法人全日本難聴者・
中途失聴者団体連合会理事
長) 高岡 正君
参考人
(小児科研修医) 熊谷晋一郎君
厚生労働委員会専門員 宮武 太郎君
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委員の異動
六月二十日
辞任 補欠選任
上川 陽子君 福井 照君
北村 誠吾君 浜田 靖一君
熊代 昭彦君 倉田 雅年君
佐藤 勉君 左藤 章君
原田 義昭君 渡辺 具能君
松島みどり君 高木 毅君
家西 悟君 奥田 建君
加藤 公一君 小林 憲司君
釘宮 磐君 石毛えい子君
青山 二三君 斉藤 鉄夫君
江田 康幸君 西 博義君
樋高 剛君 都築 譲君
小池百合子君 松浪健四郎君
同日
辞任 補欠選任
倉田 雅年君 熊代 昭彦君
左藤 章君 佐藤 勉君
高木 毅君 松島みどり君
浜田 靖一君 北村 誠吾君
福井 照君 上川 陽子君
渡辺 具能君 原田 義昭君
石毛えい子君 釘宮 磐君
奥田 建君 家西 悟君
小林 憲司君 加藤 公一君
斉藤 鉄夫君 青山 二三君
西 博義君 江田 康幸君
都築 譲君 樋高 剛君
松浪健四郎君 小池百合子君
―――――――――――――
平成十三年六月二十日(水曜日)第23号
(以下、障害者に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案の審議部分のみ抜粋。
○鈴木委員長 次に、内閣提出、参議院送付、障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院院長細田瑳一君、精神科医藤田保君、社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長高岡正君、小児科研修医熊谷晋一郎君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、参考人の皆様方から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。
それでは、まず細田参考人にお願いをいたします。
○細田参考人 御紹介いただきました細田でございます。
私は、元厚生省の医療関係者審議会、現在医道審議会に統合されておりますが、その委員といたしまして、本日議題となっております障害者施策推進本部の決定に基づいて審議されました欠格条項の問題に関する委員会に出席して、その報告書をつくりますことに関与いたしましたので、その経過を含めながら意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、簡単に趣旨を要点を取りまとめて申しますと、身体または精神に障害のある方々が社会活動に参加されることを不当に阻むことにならないように、その選択肢の一つである医療専門職についても、その障害が絶対的な欠格条項の理由となることがないようにという趣旨で絶対的な欠格条項をなくして、そして適性と能力を生かしていただいて社会で活躍できるようにさせていただく。
それからもう一つは、医療専門職の免許につきましては、医療が全人的に診療活動を行い、また適正に医療業務を行って、受療者の安全を保障しながらその信頼を維持すると申しますか、そういう職業でございますので、その免許につきましては、身体または精神の障害がその業務に支障を来す、あるいは安全に職務に従事することが困難であるという場合には、個別にそのことを審議して、検討される必要がある。そういう意味では相対的な欠格条項ということになるかもしれませんが、そういう条件を残すということを趣旨と考えております。
この審議会で討論されました経過について多少申し上げますと、各委員は、それぞれ、医療関係者の専門家、また学識経験者、それから受療者側の人たちから成っておりまして、それぞれの立場で御意見が出ておりました。そしてまた、その間に小委員会を設けまして、その小委員会では、関係団体の方々からもヒアリングを行うということを行ってまいりました。
そして、その中で、当然、従来のように、ある器官の機能あるいは疾患、そういったものを特定して、一律にその資格を得ることができないというようなことは不適切でございまして、身体あるいは精神に障害があるという方々につきましても、その適性、能力が非常にすぐれた方がありまして、そのような方々が医療の分野に免許を得るということは当然あってしかるべきだということを、いろいろな方が主張されました。
ただ、そのときに、現在はいろいろな補助器具その他に関しましても非常に進展が見られますし、開発も行われておりますし、また、社会的なサポートによって、医療の中でチームとして援助することができれば十分に医療にその能力を発揮していただけるというような場合もございますし、また、身体、精神の障害に関しましては、固定したものではなくて、変動が見られる場合もございますし、我々が、立場を変えまして、医療を安全に行うという立場からは、その保障といいますか、そういうものを保障していく上で非常に個別的な問題というものがあり得るということも事実でございます。
したがいまして、この方向で身体あるいは精神の障害のある方々の免許につきまして、それを進める場合に、その個別の状況をよく検討して、そうして我々が医療の安全と信頼を確保しなければいけないという御意見も非常に強くございまして、そのためには、運用上細かい点についても規格をつくるべきであるという御意見がございました。しかしながら、この運用上の基準につきましても、これは一概に、急いでと申しますか、現在すぐに法文化して決めるべきような簡単な問題ではないというふうに考えられます。
したがいまして、先ごろ参議院の方での附帯条項にもございましたが、我々がこの法律を実施していく上では、幾つかの実例に当たって、そうして、その経験を積み重ねて、基準を省令、政令等でつくり上げていくということが必要だと思われます。また一方、政策的にもこのような方向を援助していただくような、教育現場の問題でもそうでございますし、また国家試験の方法というようなものにつきましても、一々の条件に応じた援助がされませんと、このような道を開いていくということについては非常に困難が伴うのではないかというふうに考えられておりますし、委員として教育現場から参加された方々からは、こもごも、教育現場でのそういった対処の困難さなどについての御意見がございました。
したがいまして、一番最初に申しました方針、一方では絶対的欠格条項というものを廃止するということと、もう一方で医療の安全と信頼を維持するという意味での、方針はそういうことでございますが、個々の問題については、今後さらに詳細に検討を続けながら基準づくりをしていただかなければいけない、そういうふうに考えております。
以上でございます。(拍手)
○鈴木委員長 どうもありがとうございました。
次に、藤田参考人にお願いいたします。
○藤田参考人 滋賀県で病院の勤務医をしております、精神科医の藤田でございます。
私の場合は、一九七五年に大学の医学部を卒業しまして、医師免許を取りまして精神科医になりました後、三年後に聴神経の病気で聴覚障害を持つようになりました。
それで、そのときに、患者さんの診察は非常に大変だろうということで、例えば病理検査ですね、顕微鏡での検査部門に転進してはどうかというような話もありした。確かに、聴覚障害といいますのはコミュニケーションの障害ですので、患者さんと接する機会が減りますと仕事もやりやすいといいますか、それも確かに一つの道だろうと思います。
しかし、私の場合は、個人的に、自分としては患者さんと接して仕事をしたい、あるいはまた、聴覚障害を持つ医師としての役割というか、何かあるのではないかというふうに考えまして、また、病院側といいますか、病院の職員が私の障害に対してサポートしてくれるという約束を得られましたので、臨床の仕事を続けてまいりました。しかし、実際に仕事をする場合は、職務内容とか業務の内容がかなり変わりまして、例えば、一般の外来診療をすることは非常に少なくなりまして、脳波ですとかレントゲンの検査ですとか、そういう判読の仕事とか、それから事務的な仕事というのがふえてまいりました。
ところが、八年前から私の病院で聴覚障害者外来というのを始めました。これは、聞こえない患者さんの場合は、病院へ行きましても医者とか病院のスタッフと十分にコミュニケーションがとれないということがありますので、私の病院の職員、スタッフに、聴覚障害者の問題とか、それから手話とか聴覚障害者のコミュニケーション手段を習得してもらいまして、聞こえない方にも普通に聞こえる方と同じように医療を提供しようという外来です。
それをやりますと、私自身も非常に仕事がしやすくて、例えば、外来診療にしましても、きょうもこうやって手話通訳をしてもらっていますけれども、スタッフが
手話通訳をしまして、外来業務が非常にふえてきました。つまり、私の病院のスタッフが私の障害に対する援助の仕方が変わってきますと、私自身の業務、内容もそれから量も変わってくるということです。
それで、聴覚障害を持つ医者とか医療従事者が業務を遂行する場合に、大きく分けまして二つ困難なことがあります。
一つは、患者さんとか病院のスタッフとのコミュニケーションの問題です。
それにつきましては、人と人の問題でありますので、例えば、私の病院でやっておりますように、病院のスタッフが手話を覚えるとか、それから適宜いろいろな補聴手段ですね、筆談をしたりとかそういうことをやってもらうという方法があります。それから、手話の通訳者あるいは筆記通訳者を活用すること、それから補聴器ですとか、今は人工内耳を装用する方がふえていますけれども、そういう方も含めて、聞こえをよくするいろいろな機器があります。補聴援助システム、もう少し広く、ファクスですとかそれからパソコンですね、きょうもパソコンを使った筆記の通訳、文字での通訳がありますけれども、そうした補聴援助システムを職場に設置するとか、そういうことが考えられると思います。
それからもう一つは、人間の体の中から発する音、例えば心臓の音ですとか呼吸の音ですとか、それから血管の音もあります。それから、腸の雑音もありますね。いろいろ医療の業務をする上で、そういう人間の体の音を聞く必要があります。もちろん、今は医療機器が非常にふえておりますので、いろいろな機械音も聞く必要があります。そういういろいろな音を聴することは非常に困難であります。
しかし、昔から心音図というものがあります。これは、心臓の音をテレビのようなオシロスコープにあらわして、波形にして目で見て確認する機械ですけれども、それと同じように、体内のいろいろな音を目で見えるように変えることは、今の工学技術からしますとそう難しくないと思います。そういうことが開発されて実用化される必要があると思うんです。実は、私自身もそういう機械が非常に欲しかったんですけれども、今までは耳の悪い医療従事者は法律上いないことになっておりますので、なかなか言いにくい面がありました。
そういうことですので、聴覚障害者が医療の業務を行う場合、認知とか判断とか、それから意思の疎通とか、そういうことを適正に行えるためには、聴覚障害を補う手段が十分に整備される必要があると思います。また、整備される度合いによって聴覚障害者の業務の遂行の程度が変わってくる、影響されるということが言えると思います。したがいまして、医師免許を取得したいとする学生さん、そういう方の場合は、高等教育の現場で、あるいは実際に免許を取りました後に業務をする場合には医療の現場、医療環境の中で、そういった聴覚障害を補う手段を十分に整備する必要があると思います。
聴覚障害者が業務を行う場合は補聴手段によって随分影響されますので、ということは、その補聴手段の整備の仕方でそれぞれの聴覚障害者の仕事のできぐあいが違ってくると不公平になる心配があります。極端に言いますと、そういう聴覚障害を補う手段を十分に活用できない環境におられる方の場合、医師免許ですとか、そういう免許を得られない心配があります。
したがいまして、まとめますと、今度の法律案を本当の意味で生かすためには、聴覚障害を補う手段の体制整備、それから機器の開発促進、それをとにかく教育現場あるいは医療現場に設置することを義務づけるような、法律あるいは省令とかで十分配慮していただく必要があると考えております。
以上でございます。(拍手)
○鈴木委員長 どうもありがとうございました。
次に、高岡参考人にお願いいたします。
○高岡参考人 おはようございます。社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長の高岡でございます。今回の法改正に賛成する立場から意見を述べたいと思います。
聴覚障害を持つだけで薬剤師になることができない、医師になる試験すら受けられないという現行法は、人間の価値と能力を非常に狭い視点でとらえるものではないかと思います。資格を得られないことや試験すら受けられないことは、障害を持つ者にとっては、生きることを否定され、人格を否定されたのと同じような気持ちになります。
ことしの五月に、当会の難聴青年部の研修会で、欠格条項を知って薬剤師をあきらめた、獣医師をあきらめたとか、親や教師、あらゆる人に夢を反対されたという青年が多数いました。彼らは、みずからのチャレンジする道を閉ざされたのです。
さまざまな原因で聴力を失う突発性難聴という病気がございますが、ついこの間の日曜日、六月十七日に、NHKで、年間二万四千名もの方が聴力を失われるということが放送されました。放送後、NHKにも当会にも、何百という問い合わせの電話が殺到しました。これだけの数ですから、厚生労働省でも特別な研究班をつくられて対策を検討されていると伺っておりますが、当然、今回の法改正の資格にかかわる方々も大勢いらっしゃるのではないかと思いました。長年資格を持って仕事に従事されていた方々が突然耳が聞こえなくなったというだけで仕事を奪われるということが、常に起こり得るわけです。
法改正の結果、障害を持つ人々が多くの資格を持って仕事に従事することができるようになれば、社会の障害に対する理解も進み、何よりも本人の自信の回復につながります。さらに、資格を持って仕事に従事している人々にも大きな励ましを与えるものです。まさに人間回復の法改正だと思います。
しかしながら、法改正に当たり、心身の障害により業務が適正にできない者として厚生労働省令で障害を特定しない相対的欠格条項を定めることについては、以下に述べますような懸念がございます。
何をもってできないとするのか、適正な業務とは何かということが政府や関係者だけで決められることがないのかということです。障害を持つ当事者と国民の意見が広く吸い上げられ、あわせて、検討する場やプロセスの保障を強く求めたいと思います。
もう一つは、障害を一くくりにして、結果的には実質的な欠格条項を残すことにならないかということです。
例えば、聴覚障害は非常に幅の広い障害であり、その規定には十分な注意が必要です。何デシベルの音が知覚できるかできないかという医学的な聴覚レベルのほかに、周囲の環境がうるさかったり、自分自身の体調などによっても、聞こえが大幅に変わるからです。自動車の運転免許のような、何メートル離れたところから何デシベルの音が聞こえるかどうかというような聴覚にのみ頼る基準は意味がありません。視覚的手段、触覚的手段などさまざまな方法があれば、聴覚障害を補うことが十分に可能です。
障害はあくまでも障害者個々人と社会や周囲との関係で生じるものであり、障害を一般に論じることはできません。障害を持つことは、人はだれでもあり得ることである、障害を持つというだけで能力が否定されるのではなく、どうしたらできるのか、どういう支援が必要なのかという考え方に転換していただきたいと思います。
したがいまして、具体的な基準というものは、聴覚障害者本人、聴覚障害者問題専門家などを加えた場でよく検討するようにしていただきたい。
コミュニケーションを補う手段は、手話や文字による通訳のほか、各種の合図信号装置、補聴補助システムなどは多様に存在しています。
本日、私は手話通訳とパソコン要約筆記と補聴器で審議に加わっております。身体障害者聴覚障害二級の重度難聴であっても、適切な補助手段があれば十分に責任を果たすことができます。
手話通訳は手話通訳士制度がございます。文字で伝える要約筆記も、厚生労働省の要約筆記奉仕員養成カリキュラムで、手書きとパソコンの両方の要約筆記者の養成が図られ、昨年の社会福祉法の改正により、手話通訳、要約筆記設置事業が法定化されています。
現代では、補聴器もデジタル化し、人工内耳、補聴援助システムの発達には目覚ましいものがございます。音声や音を伝える合図信号伝達装置には、お手元に配付しました資料にございますように、非常に多くのものが開発され、実際に販売されています。
また、急速に発展しているIT技術を利用することにより、新しい補聴手段も登場しています。欧米では、電話リレーサービスが電話会社に法律で義務づけられており、我が国でもことしから、総務省の支援措置により事業がスタートしようとしています。聴覚障害者が、リアルタイム双方向の通信、聞こえる人にとっての電話ができるようになるのです。
このように、障害を有するがゆえに資格、免許を与えないという考え方から、どういう手段、どういう方法で障害を補えるのかという考え方に転換することが最も大切だと考えます。業務の遂行に障害者本人にのみ責任を持たせることは、障害を持つ者も持たない者も等しく社会の中で生きることを目指すノーマライゼーションの理念に反するのではないでしょうか。
聴覚障害というのは、周囲の理解、適当な補助手段、通訳があれば、ほとんどの活動に支障がないものと考えておりますが、今後、聴覚障害者個々人の実態、職場環境に合わせて、適当な補聴手段や通訳サービスの提供などをコーディネートするような制度が必要になります。
このときに、障害を持っているからこそ、その人の立場になったサービスの提供ができる例は多いと考えられます。その関連職に、聞こえの管理をする、適当な補聴手段を検討する言語聴覚士が考えられますが、聴覚障害を持つ人こそ、当事者の立場でサポートができると思います。しかし、欠格条項により言語聴覚士の資格が得られないということであれば、こうした人々へのサポートが困難になります。障害を持って職業に従事することができるようになれば、そのサービスを利用する障害者にとっても一般の方々にとってもアクセスブルなものになることはよく理解できます。
この法改正は、多くの障害者団体、個人、関係者の長い間の取り組みがあり、関係議員の方々、関係機関の深い御理解の上に提出されているものと存じます。こうした障害を持つだけで資格や免許を門前払いされていた法律が改正され、上述しました懸念が払拭されるということになれば、人権の世紀と言われる二十一世紀の初頭にふさわしい成果になると思います。
二〇〇二年には、アジア太平洋の十年の最終年を迎えます。多くの障害者団体、関係機関が一致して、三つの国際会議、三つのキャンペーンを行います。これの成功のためにも、引き続き法改正の趣旨に立った取り組みが求められると思います。
以上でございます。(拍手)
○鈴木委員長 どうもありがとうございました。
次に、熊谷参考人にお願いいたします。
○熊谷参考人 東京大学医学部附属小児科研修医の熊谷晋一郎といいます。
まだ研修を始めて一カ月なので、課題も多く、きょうお話しできることは何だろうかといろいろ考えて、自分なりにきょうは二つのことを大きくお話しできたらと思います。
一つ目は、なぜ自分が医学を志すようになったかという動機について、それからもう一つ目は、実際医学部に入って学部で研修をして、それから一カ月間ですけれども実際に医師として現場で働いてみて感じたこととか、どういう工夫をしたか、そういった現場での感想、あるいは工夫したプロセスみたいなこと、二つ目はそれを話せればと思っています。
一つ目の動機についてですが、配付した資料にもちょっと書いてありますけれども、自分はもともと数学をやりたくて大学に入りました。もともと高校のころから数学が大好きで、将来は数学を職業にできたら幸せだなと思って大学を目指して入学したんですけれども、そのときに自分なりに考えた、経験したことというのは、それまで、実家は山口なんですけれども、山口に実家で母親とか父親とか、家族と一緒に住んでいるころの生活というのは、ほとんど身の回りのことを全部家族にやってもらっているような状況。つまり、洗濯から着がえから掃除、それからおふろに入ったり、トイレに至るまで、全部家族に手伝ってもらっているような生活をしていました。
大学に入学したのをきっかけにひとり暮らしをいきなり始めたわけですね。本当に、今から思うと無謀なチャレンジだったと思うんですけれども、やはりそれができたのは、目標があったからというか、数学がやりたい、しかもいい先生のもとで数学がやりたいという夢があったから、そういうすごく大変、今から思うとむちゃなチャレンジを自分に課すことができた。
実際ひとり暮らしを始めてみて、本当にトイレ一つ自分でできない状況がそこにあって、おむつをつけようかとか、あるいはポータブルのトイレを家に置こうかとか、ありとあらゆる方法をいろいろ試して、いろいろ家の中を改造したり、あるいは業者さんを呼んで、みんなで夜まで話し合って、いろいろな工夫をして取り組んできて、それでもあきらめずに一個ずつクリアしていったという経験があります。
つまり、自分にとって問題は何だろうと考えたときに、まずトイレができないことが問題だ、次におふろができないことが問題、次に着がえができないことが問題、次に外出ができないことが問題、そういうふうに幾つかリストアップしていく。それで、では次に優先順位をつけよう。まずトイレは絶対、毎日のことだし、しかも緊急事態だし、失敗したら大変だし、トイレをまず解決させよう。もうトイレに集中してみんなで考えるわけですね。いろいろなあらゆる方法を試してみて、これが一番いいだろうというので、トイレのやり方、スタイルが一つ決まってくる。トイレができたら、次はもっと欲が出てきて、おふろにも入りたいな。おふろに入るためのまた工夫をどんどん始めていくわけですね。
そういうスタイル、まず目標をがちっと持つ、そして問題点をリストアップする、優先順位をつけて、それを一つずつクリアしていく。このスタイルが自分の中に確立したというか、それが自分が障害とか病気とかに取り組む一つの姿勢になったのがひとり暮らしを始めてからです。
そういう経験を繰り返して、自分にとって物すごい自信になったわけですね。これからどんな困難が来ても、同じやり方をもう一回やれば絶対乗り越えられないものはないというふうな自信が自分についたわけです。
そうこうしているうちに、数学なんか全然勉強しなくなってきて、ああ何かこういう仕事がしたいなというか、同じように障害を持っていたり、あるいは病気を持っていたりする、それは端的に言うと挫折ですよね。何かやりたいと思ってもできなくなってしまった。そういった挫折を経験している人たちとか、自分自身もそうですけれども、そういう人にさっき言ったようなプロセスを提示できるような、そういう仕事につきたいなというふうに考えるようになりました。自分の適性とかいろいろ考えはしましたけれども、やはりまず目標を持つということ、医者、しかも子供たちのために小児科として自分はやっていきたいというふうな、まず夢が自分の中にふっと芽生えたわけです。
あとはもうさっきと同じで、結局、では何が問題、患者さんへ手が届かないことが問題。では車いすが持ち上がって前に出るようにすればいいとか、診察台をちょっと改造すればいいとか、では次、患者さんに手が届くようになったら今度は何が問題か。今度は聴診器を保持することが問題。では聴診器をちょっと改造して保持できるようにしよう。では、診察ができるようになったら今度は何が問題か。簡単な処置ぐらいはできた方がいいだろう、注射ぐらいは打てるようになった方がいいだろうということで、今度は注射器を改造する。そうやってまた優先順位をつけて一つずつクリアしていく。その環境は、やはり大学病院みたいなスタッフがいっぱいいて協力体制が整ったところじゃないとできないことだと思うんですが、同じプロセスを今踏んでいる段階です。
自分が医学部に入った動機というのは、そういうふうに障害とか病気に取り組む姿勢みたいなものが自分の中に芽生えてから、そういった仕事がしたいなというふうに感じたという経緯があります。
二つ目なんですけれども、実際学部に入って実習をしてみてどうだったかといったら、学部の実習というのは、全部で四年間あって、前半の二年間はほとんど講義中心の実習です。講義中心のカリキュラムですから、全く問題ないですね。今までの勉強のスタイルと全く変わらない。後半というのは、実際に病院に出て各科を回って患者さんと接しながら、学生のできる範囲で実習をするという内容ですから、ここは少し問題がありました。さっき言ったように、患者さんへどうリーチして、手を伸ばして患者さんの体に触れられる距離を保つか、それが一番実習中では問題で、実習中ではやはり解決できなかった問題でもありました。
だけれども、仕事についてから、この春から小児科で研修医として始めてから、本当に小児科のスタッフの方にいろいろな協力を受けることができて、一つずつ、実際に何をやったかといったら、一つは、今乗っている車いすはちょっとぼろいですけれども、実際病棟で使っている車いすはすごく機能がいろいろあって、まず、患者さんへのリーチがよくなるために車高が高くなったりとか、あるいはデスクワークも一緒にできるように机がついていたりとか、あるいは遠くにいる患者さんに聴診するときなんか、棒みたいなのでちょっと遠くにいる患者さんのところに聴診器を置いたりだとか、いろいろ工夫して、一つのその車いすの上だけで一通りの診療ができるような状態を目指して今いろいろ工夫している段階であります。だけれども、直観として、ひとり暮らしをしたときと同じペースで一つずつクリアしていっているな、恐らく三カ月ぐらいで一通り最低限の診療行為はできるようになるだろうなというふうに自分の中で憶測があります。
ですから、今回議題になっているいわゆる欠格条項についてですけれども、結局あれというのは、目標を持つという一番大事な動機に関して、障害者に対してそれを限定させるような条項なわけですよね。やはりさっきみたいな具体的なプロセスを踏むという発想に至るまで一番重要なのは、それ以前に、夢を持つというか目標をしっかり持つということが何より大事だと思うのです。それを制限するような条項というのはやはりなくした方がいいし、実際、夢を持つ自由は確保されていなければその次がないというふうに個人的には思っています。
以上です。(拍手)
○鈴木委員長 どうもありがとうございました。
以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○鈴木委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三ッ林隆志君。
○三ッ林委員 自由民主党の三ッ林隆志と申します。本日は、参考人四人の皆様には、貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。
私も、今回のこの法案を見まして、もう三十年近く昔になるのですが、私の知り合いで色覚異常があるために医学部の入試をあきらめたという方のことを思い出しまして、私自身医者になってみますと、その障害自体の程度によりますけれども、かなりいろいろなことが医者という仕事の中でもやっていけるんではないかというふうなことを思ったことがありましたけれども、このような、絶対的な欠格事由というものを相対的な欠格事由に変えたという今回の改正は大変評価できることだとは考えております。
ただ、先ほどのお話にもありましたけれども、あくまでもこれは免許を与えるときの事由ということですけれども、医学部なんかは六年間というかなり長期的な教育期間がかかりますけれども、入学するときに、現在は余りないようですけれども、免許を与えるときに何らかの制限が障害者の方に生じる可能性がある場合、では学校の方が入学をどのように考えるのか。基本的に制限なしで入学させる、またそれに対する対応もとるということでしたならば、その後の国家試験を受験して、それに合格したら免許を与えるというところでまた何らかの問題が生じるというのでは、そこでいろいろそごが生じてしまうのではないかと思います。
それぞれの判断は免許を与えるときに個々に判断して、運用上の基準というのはこれからつくるというふうなお話が細田参考人からありましたけれども、入試なども含めまして教育現場また国試、そしてその後の、これからは臨床実習というのが義務づけられることになりますけれども、それらにおけるサポートであるとか、もしくは現在考えられている困難な点がありましたら教えていただきたいと思います。
〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕
○細田参考人 お答え申し上げます。細田でございます。
今御指摘の点は、審議会で議論をやりました中でも複数の教育関係者から出ておりまして、今三ッ林先生御指摘になりましたように、医師の教育課程では、医学部を卒業することができた場合、医師免許を得られなければただの人以下と巷間よく申しますが、本当に職につくこともできないというような場面が見られます。
そこで、入学の時点でそこまで教育をきちんとできるかどうかということを医療機関側としてあるいは教育機関側としてかなり目算を持っていませんと、今の場合、本当に六年間行って、そうして実際には免許を得ることができなかった、そういうことになりますと非常な問題だと思います。
そのことについて、我々としては、今は大学各個に、身体に障害のある方が大学の課程を無事に終えられるようにいろいろな援助といいますか、今熊谷さんのお話にもございましたように、やはり大学自体がそれを援助するという姿勢になって、しかも、設備その他についても配慮をするということがありませんとうまくいかないと思うのです。
我々の審議会の中で議論いたしましたこととしては、我々は、先ほども御意見がございましたように、少なくとも強い意思を持って、そうして、適性もあって能力も十分にある方が医療の分野に入れないということはいけないので、これは、今すぐにすべての、どういう条件の場合にも、どこの医療機関でもあるいはどこの教育機関でもそういう援助ができるということではございませんが、報告書に書きました範囲では、要するに関係者が、と申しますのは、やはり行政あるいは自治体といったことを頭の中に置いておりますが、そういうところで適切な対処、援助をしていただくということがありませんとこれはかなえられないんじゃないか、そういうふうに思っております。
また、厚生労働省よりも先に文部省の方の側の身体障害者に対する対処というのは進んで決められたようでございますので、その方から申しましても、教育機関に関しては何らかの形で援助ができるようにしていただけるんじゃないか、そういうことを期待いたしております。
○三ッ林委員 ありがとうございました。
余り時間もありませんので、次は藤田参考人にお聞きしたいのですが、先生のやっているところではスタッフも、患者さんとのコミュニケーション等のために手話を学ばれて、それを診療に活用していらっしゃるというふうなお話でしたけれども、私も自分の家では医院を開業しておりますけれども、そこのスタッフにそのような手話であるとか患者さんとのコミュニケーションをとるような訓練とか、そのようなことに対する時間でありますとかコストとかというのはかなりのものがあるのではないかと考えますけれども、そのようなことに対する問題点もしくはそれをサポートするような法的なものであるとか、何かお考えがありましたらお聞かせいただければと思います。
○藤田参考人 藤田でございます。
確かに、今御指摘がありました、私の病院の職員に手話を覚えてもらったりすることは病院そのものにも非常に負担。といいますのは、私の病院の場合は、例えば私に手話通訳するような職員に対しては、勤務時間内に手話の勉強等をしてもらっております。そういう病院側の負担もあります。もちろん、手話だけについていいますと、手話を覚えるのにはやはり個人的な負担があります。そういう意味で、病院職員に負担をかけながらやっております。
ただ、私の立場でいいますと、それをしていただかないと私の業務が円滑にできないということで、その辺は、私の場合は病院側に理解をもらってやっております。それから、職員の個人的な理解をもらってやっております。
それ以前に、私の病院の場合は聴覚障害者外来というのをしました。先ほども言いましたように、今、聞こえない人は病院へ行きましても十分に医療を受けられない。なぜかといいますと、医者とか病院のスタッフとコミュニケーションができないからです。最初は、その問題を解決するために、聴覚障害を持つ患者さんが病院へ来られた場合に我々はきっちりとした医療提供ができない、その問題意識をまず職員に持ってもらって、そこから始めたことです。こういう言い方はよくないかもしれないけれども、付加的に私の仕事もやりやすくなったというふうな形になっています。
○三ッ林委員 ありがとうございました。もう時間が来ましたので、これで質問を終わらせていただきます。
○谷畑委員長代理 次に、小池百合子君。
○小池委員 おはようございます。保守党の小池百合子でございます。
本日は、参考人の皆様、お忙しいところ御出席を賜りまして、貴重な意見を伺うことができました。ありがとうございます。
また、委員会のこういった場で手話の方が入るのは二年ぶりだということでございますし、またきょうは、こうやってパソコンで文字を起こす方式を取り入れたというのは、委員会で始まって以来のことだそうでございます。その意味でも、今回のこの法案はいろいろな大きな意味があるということを象徴しているのではないかと思いますし、また、私も、地元の障害者の方々から、この欠格事由の適正化ということはかなり強く言われておりました。ここまでようやくたどり着けたということは、まず第一歩かなというふうに思っております。
きょうの参考人の方々、いろいろ御意見をお述べいただきました。特に、教育現場のことを皆さん今後の問題としても述べられていたようにも思うわけでございます。そしてまた、今回の適正化によって、免許等がそれぞれの力によって、実力によって確保できるということで、道が開かれるわけでございますけれども、幾つかまだまだ問題点はあるんじゃないかなと思うわけでございます。
例えば、では国家試験とか、そういった免許の試験を受ける際の現場は一体どうなるんだろうかというような点も危惧をするわけでございますが、そういった点で、細田参考人、藤田参考人、高岡参考人、この三者の方々、熊谷さんも聞いてみましょうか、これから国家試験を受けられることになると思いますので、どういったことを今懸念されるのか、具体的に伺わせていただければと思います。
○谷畑委員長代理 時間の関係がありますので、手短くひとつ……。
○細田参考人 お答え申し上げます。
国家試験に関しましては、その障害の内容に応じて、受験者が受けられるように対処をしなければいけないというふうに考えておりますが、例えば点字でありますとか、そういったことですと、これは比較的容易に対処できるかもしれませんけれども、例えば、試験の中には写真で示すようなものもございます。そういったときに、その写真をどういうふうに視力の少ない人に読んでいただくかというようなことは、まだそういうことだけでも問題が残っております。それから、手の不自由とか、そういったことになりますと、先ほど熊谷参考人も、もう既にお受けになったと思いますので、そういうことで対処できているんではないかと思っております。
○藤田参考人 藤田でございます。
私の場合は聴覚障害ですが、私の場合、国家試験を受けましたときは普通に聞こえていましたので問題ないと思うんですけれども、私が試験を受ける三年ぐらい前までは面接がありました。ですから、聞こえない学生さんの場合はとにかく面接の場合が問題になるだろうと思いますけれども、そのときは、こういった手話通訳だとかあるいは文字の通訳とかでもう十分解決できると思います。ですから、私は、聞こえない学生さんが国家試験を受けるときには、試験そのものは何も問題ない、自分の勉強、学力といいますか、それだけだということでございます。
それで、ほかの障害につきましても、とにかく大学は、試験を受けるときに、障害があるからといって拒否するということは絶対に許されないと思います。逆に、障害があれば、どうやって試験を受けられるようにするか、そこを考えるように、できれば法律なんかでそういう差別をしてはいけないということをはっきりあらわしていただきたいというふうに私は思います。
○高岡参考人 私のところにも、大学の教育に携わっている先生方から、法改正後の、資格や免許取得にかかわる高等教育機関、専門学校における、障害を持つ学生に対する環境整備の改善をしなくてはならないという強い要望が寄せられております。
現在、聴覚障害を持つ学生に対しては、手話通訳の派遣ですとかノートテークの派遣、これが公的な費用で行われているということがありません。それぞれの自治体で派遣される場合には、聴覚障害者の日常生活にかかわる分野が対象です。教育にかかわる派遣というものは、そのほとんどはボランティアの方々に頼っているのが実情です。大学が一部費用を負担している場合もありますけれども、非常に少ない。
学生が四年間教育を受けるといった場合に、すべての講義に対して手話通訳やノートテークをつけるというには非常に人材も不足しておりますし、高度な内容を書いて伝える、手話で表現するということは特別な訓練が必要です。そのための養成機関もまだまだ十分ではないというのが実情です。これからは、要約筆記、手話通訳などの専門的な資格をもっとふやす、種類もそろえるというような取り組みが必要になるかと思います。
以上でございます。
○熊谷参考人 実際、この春に受験したわけですけれども、そのときは、事前に厚生労働省の方に要望書を提出して、車いす用のトイレのある部屋、それから自分が使いやすい机といすの配置、そういったものを厚生労働省の方に直接要望書として提出して、それが受理されて、スキーか何かで骨折した同じ受験者と一緒の部屋で、二人で受験しました。ですから、今でも、一時的なけがとかそういったものには柔軟に対応できる、ある程度は対応できている現状があると思います。
同じ問題は、やはり大学受験のときとかもいろいろ生じているので、そういったノウハウをこれから取り入れるという方策もあるかと思います。
○小池委員 本当に障害の方も多種多様だと思います。それに合わせた、ニーズに合わせた試験の環境を整えるということをやらなければ、せっかくチャンスはあっても実際はだめだよというのは、まだまだかなと思ったりもいたしますが、きょうは熊谷参考人から、夢を与えてくれてというお話を伺いました。その意味では第一歩かなというふうに思います。
また、最近は本当に失業も大変多くて、倒産等々も多くて、仕事を確保するというのが大変な時代、その意味では、資格を取ったけれども、では今度はそれを生かす場が本当にあるのかな、非常に困難な面も多々あるかと思いますけれども、この法案が夢を与える第一歩となることをかたく信じてまいりたいと思います。
質問を終わります。
○谷畑委員長代理 次に、青山二三君。
○青山(二)委員 公明党の青山二三でございます。
本日は、天候の悪い中、またお忙しい中を、四人の参考人の皆様には、国会においでいただきまして、ただいまは貴重な御意見そして貴重な体験をお聞かせいただきまして、大変ありがとうございました。
これまで長い間、障害を理由にいたしまして、欠格条項が障害者の方々の社会参加を阻んでまいりました。今回、ようやく関係法令が改正されることになりまして、特に障害者に対して医療の世界に門戸を開いたということは画期的なことでございまして、評価できると思います。
アメリカでは、一九九〇年にADA法が成立をいたしまして、障害や病気を理由にした差別は禁止されております。幼いときから重度の難聴だったアメリカのキャロリン・スターンさんは、手話通訳などの支援をいただきまして医学部を卒業して、診療所を開設して、今立派に医師の仕事を続けているということをお伺いいたしております。
この世の中には、生まれながらに障害を持ってきた人もいらっしゃいますが、私たちは生身の体でございます。いつ交通事故に遭ったり病気になって障害者になるかわかりません。となれば、私たちはすべて障害者の予備軍と言えるのではないでしょうか。そこで、私は、健常者とか障害者の区別をすることなく生きていける二十一世紀を構築することが大切であろうと思っております。
私たち公明党は、アメリカのような日本版ADA法を制定すべきと考えているところでございますけれども、四人の参考人の皆様に御所見を伺いたいと思います。
あわせて、今後、この障害者の社会参加をどのように推進していくのか、また浸透していくのかということが大変大きな問題になってくるかと思いますけれども、こういう点につきまして四人の皆様はどのようにお考えになっているか、御所見をお伺いしたいと思います。
○細田参考人 お答えいたします。
先ほど来の主張あるいは今度の改正の内容を生かすためには、今御指摘のような全体としての法令の制定と同時に、各局部でと申しますか、各地域での、私は先ほど個別の例と申しましたが、そういうことに応じた、障害のある方の能力、適性を生かすような、そういった個別の対応というのが行政、自治体を中心に行われないと、現実の問題としては非常に難しいんじゃないか。
今のところは、それぞれの大学あるいはそれぞれの病院で、そういう方を受け入れた場合に、それに対して我々が対処をするというのが限度になっておりますから、それをもう少し行政、自治体というレベルで考えていただけるとよろしいと思いますし、そういう支援をぜひやっていただきたいと思うわけでございます。
○藤田参考人 藤田でございます。
実は、私はこうやってしゃべっておりますので、皆さん方は、私が聞こえないことは私が言わなければわからないと思うんです。聴覚障害といいますのは、目で見てわかりませんので、なかなか理解が進まない、一番福祉がおくれてきたと言われています。
例えば、随分前の話になりますけれども、国際障害者年というのがありまして、スローガンがありますよね、完全参加と平等。完全という言葉は最初はなかったらしいんです。それは、聞こえない人がぜひつけてほしいと言った。例えば、きょう私はここにおりますけれども、私は手足も目も自由ですので、ここに来ることはできるんです。ですけれども、きょうは手話通訳とかパソコンの筆記通訳がなければ、私は本当の意味で参加したことにならない。
それと、医師法で今まで欠格条項がありましたので、実は、病院とか医療の中で、聞こえない人の理解というのは非常におくれていた。それは、やはり同じ医療の職場で働く仲間に聴覚障害の人がいない、実際はいるんですけれども。それで、そういうことも重なって、聴覚障害を持つ患者さんがなかなか医療を受けにくいという現状がずっと続いていっている。
ですから、こういうことで、まずこういった欠格条項というような非常に不条理な法律から変えていって、少しずつ、障害を持つ人が社会の中、いろいろな輪に入ることで障害を理解してもらう、障害があるだけで、同じ人間なんだ、障害に合ったサポートがあれば同じようにできるんだということを、どんどんと社会のあちこちの分野に広げていただきたいなと思っております。
○高岡参考人 今回の法改正によって、資格が得られるようになった、免許がいただけるようになった、そういった方々が実際の仕事に従事しようとするときに、採用される方々が、その方を採用するといろいろな対策にかかるお金が莫大なものになる、手話通訳をいつも用意しなくてはいけないということで採用を拒否するというようなことがあってはならないと思います。そのためには、法改正の後には、補助的な手段、補助的な環境整備などを企業や雇用主に対して義務づけるということを制度として整備する必要があると思います。
世界の各国では、障害者の差別を禁止する法律ですとか、人権を保護する法律がありますけれども、我が国にはまだこういった明文的な法律はありません。日本版のADAともいうべき法律が公明党から提案されておるように、ぜひ必要だと思います。
○熊谷参考人 ADA法の話が出たんですが、ADA法がアメリカで成功したと思うのは、自分としては、やはり当事者性が強かった。実際あれは、メアリー・ルーさんという、バークレー大学で在学中に法律を勉強していて、実際その方も車いすに乗っておられて、そういった当事者がつくった法律というか、それが一点ということ。もう一つ、法律整備とかアメニティーの整備だけでは足りなくて、やはり当事者が権利意識を持つ、そういった、障害を持った当事者の教育みたいなものが同時にアメリカでは行われたから。
法律があっても、あるいは制度があっても、やはり本人がその生かし方を知らなければ根づいていかないと思うんですね。だから、障害を持った方がその権利、法律を利用するためのノウハウみたいなものの教育というか、そういう教育の機会を持つことがすごく重要だと思っています。
○青山(二)委員 もう時間がございませんので、あと一点だけ、お一人にお伺いしたいわけでございます。
五年後の見直しということが参議院で附則としてつけられておりますけれども、これはここだけは見直したいという点がありましたら、お一人、どなたか挙手をいただいて、お答えいただきたいと思います。
○谷畑委員長代理 だれか挙手でお願いします。だれにしますか。だれか今の質問に対して答える人、ちょっと手を挙げていただきたい。
○高岡参考人 ことしはまだ二〇〇一年で、これから五年間の間には社会の障害に対する理解も大きく変わるものと思いますし、また、政府が全力で推進しておりますIT革命も大きく推進されるものと思います。また、障害者自身が大学や各種の専門学校で教育を受けることにより、さまざまなノウハウや知識を障害者自身が持つようになる。そのときには、改めて必要な法改正を検討するということが妥当だと存じます。
○青山(二)委員 大変ありがとうございました。時間でございますので、終わらせていただきます。
○谷畑委員長代理 次に、石毛えい子君。
○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。
参考人の皆様、本日は本当にありがとうございました。皆様からの御意見を伺わせていただきまして、藤田参考人、そして熊谷参考人、直接医療の資格に密接にかかわっていらっしゃる、そのお立場からの御意見を本当に貴重なものとしてお伺いいたしました。また、藤田参考人が勤務されている病院で聴覚外来を開かれていらっしゃるということ、それから、熊谷参考人も小児科医として、病や障害をお持ちの子供さんたちと共感を持って、医師と子供さん、患者さんの関係を結んでいきたいという、この配付資料にお書きになっていらっしゃることなどを拝見しまして、共感をベースにという点では、むしろ、この欠格条項を判断する一つのポイントになっております意思疎通という意味では、共感のプラス性といいますか、それは高いのではないか。引き戻す要因というよりはむしろ積極評価をすべき部分というふうに承らせていただきました。
少し長くなりましたけれども、質問に入らせていただきます。
まず、藤田参考人にお尋ねしたいと思います。
ただいまも手話通訳の方を介してのコミュニケーションになるわけでございますけれども、私は、欠格条項を見直していく際に、補助者としての手話通訳の方というのは非常に大切な手段になる、業務遂行力ですとか、免許の取得に大変重要な方法だと思いますけれども、どうも厚生労働省の方などとお話をしておりますと、手話通訳さんの恣意性が入って、業務の本質的な遂行力という点で多少問題が生じるということもあるのではないかというようなことを伺います。
客観性という意味があるかと思いますけれども、御自身、お仕事をなさっていらっしゃいまして、手話通訳さんとの関係で、御自身としての業務の遂行の客観性といいましょうか、あるいは患者さんとのコミュニケーションのいわば充実度といいましょうか、そういう点で、どのようにお受けとめになっておられるかということをまずお尋ねしたいと思います。
〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕
○藤田参考人 藤田でございます。
私が手話通訳を受ける場合は、患者さんの音声を手話にかえるという形ですね。それで、実際に発せられている音声をできるだけ忠実にかえていただくということで、それとやはり、実際に通訳する場合には、事前に患者さんの情報がある場合とない場合とで違ってきますので、できるだけ、診察の前にいろいろ患者さんの情報とかを通訳する人に与えたりということで解決しております。
手話通訳については、いろいろ問題といいますか課題が多いと思うのですけれども、逆に、例えば、今は聞こえるお医者さんが聞こえない患者さんの診察をするときに手話通訳が入る場合があるんですけれども、そういう場合の客観性というのも問題になってくると思うんです。ですから、それは、本来は通訳者が入らずに診察できると一番いいわけですけれども。
その場合に、もう一つ言いますと、やはり手話で話ができるお医者さんといいますか、それと、実は私は聞こえないで育った経験がないのですけれども、これは私の専門の分野ですけれども、精神科の場合は特に、やはり同じ障害を持った患者さんと医者との話をした方がいろいろな面で情報が多くなるという面もあるし、それから治療的にもいいという面があります。ですから、もっともっと障害を持った医者が育ってほしいなというふうにも思っております。
○石毛委員 手話ができるお医者さん、そして手話ができる人がたくさん社会の中におられることがベースになれば、そのことが一番基本になるんだと思いますが、情報をきちっと交わし合っていくこと、あるいは診療録をお互いに相互に点検し合うことなどということで、私は客観性といいましょうか、保たれていくのだと思います。
手話の方は、恐らく医師として実習を続けられるようなときには大変重要な役割だと思いますし、そしてまた、実際に医師としてお仕事をなさる場合でも重要だと思います。その点で、質問はちょっと離れますけれども、参議院の附帯決議を拝見しますと、職場介助者という表現はありますけれども、参議院の附帯決議の中で手話通訳等補助者というような表現はございませんので、少しそこのあたりは私は気になっておりますということをちょっとつけ加えさせていただきます。
もう一つ、簡単に藤田参考人にお伺いしたいと思いますけれども、まさに相対的欠格条項が絶対的欠格条項に陥らないためには、本当にたくさんの障害をお持ちの方、いろいろな障害をお持ちの方に適切な補助者や補助手段を準備していかなければならないんだというふうに思うわけです。
そこのところを具体的に展開していくために思い切って、厚生労働省の所管は、熊谷さんのように目的を持っていらっしゃる、夢を持っていらっしゃる、そうした障害をお持ちの方にどんな仕事につきたいかというような調査ですとか、今実際に障害を持つことと資格や業務の遂行に不自由を来していらっしゃる方に大きな調査などをして、思い切って、国民がこのことを知る、大きく大きく知っていくというような取り組みをされる必要があると私は考えているのです。
実際に、藤田医師は、職場の皆さんと御相談されながら、今の仕事ができる状況を切り開いてこられたんだと思いますけれども、これから厚生労働省が政省令をつくっていくに際しまして、何かお考えがございましたら、御発言いただきたいと思います。
○藤田参考人 先ほども言いました、繰り返しになりますけれども、先ほど熊谷先生がいろいろ言われました。私は、例えば頸髄損傷のお医者さんを知っています。つまり、首から下が動かない。ですけれども、頸髄損傷があれば医師免許を与えないという法律の条項はありません。ですから、頸髄損傷を持った障害者の方でも、自分は医者をしたいということであれば、いろいろ勉強したり、あるいは医師の業務をする場合にいろいろなサポートを要求できる。見えない、聞こえない人だけはできないという状況がある、おかしいと思うんですけれども。
とにかく、医師とか医療の業務をする上で、そういう障害は本質的な資質ではありませんので、例えば聴覚障害がありましたら聴覚障害を補うシステムをきっちり準備しなければならない、義務として整備しなければならないということをはっきり法律でうたっていただきたいと私は思っています。
○石毛委員 ただいま藤田参考人から、義務として補助者、補助手段等のシステムを整備していくことを求めるという御発言をいただいたと思います。私もそれには同感でございます。
以上で質問を終わります。参考人の皆様、ありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、佐藤公治君。
○佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。
本日は、参考人の皆さん方には、貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。心から感謝を申し上げたいと思います。
今、いろいろな委員からの御質問がございました。また、皆さん方からのお話も聞かせていただきましたが、もう一度確認という意味で、また、もう少し絞り込んだ上でお答えを願えればありがたいかと思います。
皆さん方のこの改正案に対してのいろいろな思い、考え方も聞かせていただきましたが、この改正案が通ったからといってすべてがうまくいくとは私自身も思えない部分がたくさんございます。
そういう中で、教育機関の問題とか、いろいろと養成する学校の問題、この次、免許を取った後受け入れる体制の問題、社会の問題、いろいろなことの周りが一緒になって動いていかないとこの改正案というのはちゃんとしたことにならないんではないかなというふうに思うんですが、各参考人の皆さん方に、具体的にでも結構です、抽象的でも結構です、全体で、大まかなことでも結構ですが、一番今やってほしいこと、やるべきこと、やはりここを一番考えてもらいたいこと、そこの部分をもう一回、確認の意味も含めてになるかもしれませんが、お考えを聞かせていただければありがたいと思います。
なお、そのときに、何か自分としてのアイデア、いいアイデアがあれば、簡単で結構でございますので、ひとつお聞かせ願えればありがたいかなと思います。特に、僕は熊谷参考人には期待をしておりますので、何かいいアイデアがありましたら、ひとつこの場で御提案をお願いできればありがたいと思います。
では、まず細田参考人からお願いしたいかと思います。
○細田参考人 今の御意見、確かに、教育環境それから雇用環境、両方とも、先ほど来申していますように、障害のある方を援助する方向で社会全体を含めて進んでいかなくちゃいけないということ、そのとおりでございます。
ただ、この問題は、全体として、いつも、どの施設もあるいはどの大学もその方向で待っているというような性質のものではないのでございますね。ですから、先ほど来申しますように、個別の問題をできるだけ慎重に、前向きに取り上げて各部署で努力しなけりゃいけないというふうに思っておりますし、そのためには、全員が認識だけは前向きに対処する方向で身構えるというほかにないということではな
いかと思います。
実際に個々の例について、それに応じた補助の開発なりなんなりということをすべて考えていかなくちゃいけないということなんだろうと思います。
○藤田参考人 藤田でございます。
これもまた繰り返しになりますけれども、聴覚障害を補う手段、教育の現場ですと、とにかく手話通訳とか筆記通訳、ノートテークとか、実習の場でもそうですけれども、そういうことは今からでもすぐ入れると思いますので、まずそういうことからしていただきたい。
それから、もう一つは機器の問題、先ほど言いました目で見えるようにする機器ですね。心音図ですとか、あるいはとにかく細かいことはちょっとわからないですけれども、肺の音とかでも、音ですと必ず音波に変えられるはずですから、これは工学的なものになってきますので、その辺をぜひ早急に推進していただきたいです。それは教育の場でもそうですし、我々がいろいろな業務をする場でも必要ですので、そういうことをどんどん取り入れること。
あと、もう一つの非常に大切なことは、コミュニケーションの問題です。
これは、基本的には人と人との間の問題ですので、そういう聞こえない人には、こういういろいろなサポートを、これだけ機器が必要なんだということからどんどん入っていけば、周りの方々の意識もかなり変わってくるだろうと思います。
ですから、まずそういう法律、それから目で見えるいろいろな補助手段をどんどん取り入れて進めていただくと、早く聴覚障害者がきちっと教育を受けて仕事もしやすくなるのではないかなと感じています。
○高岡参考人 私は、何よりも社会全体に対する啓発が一番重要ではないかと思います。それは、私たちの地域社会に、身近なところにいろいろな障害を持った方々がおられます。そういった方々を地域社会で、あるいはさまざまな事業所、職場、学校で受け入れるにはどうしたらよいかということを、常に人権を守るという感覚で、すべての国民がそうした意識を持つような啓発運動が非常に重要だと考えております。
先ほど申し上げましたが、二年後にはアジア太平洋の十年の最終年を迎えます。私たちは、全国の市町村を回ってこうした社会的な啓発のキャンペーンを行う計画です。市町村の欠格条項をなくす運動もこの中に取り入れて進めていきたいと思っております。
今回の法改正の対象になる資格、免許は、政府が見直しをしようとしている法律のまだ一部分です。ほかの省庁に関する欠格条項の法律の問題も大きく関係をしています。
例えば、建築物のバリアフリーに関しては、聴覚障害者の問題がほとんど取り入れられていません。こうしたことはすぐにでも改正をしていただく必要があります。また、東京では都議会選挙が行われていますが、選挙カーの上に手話通訳の方が立つことが多くなりました。しかし、候補者の政見を文字にしてあらわすということは、現在の公職選挙法では違反になるのです。
こうしたことも、この欠格条項の問題とあわせて、社会全体のバリアフリーを進める運動をお願いしたいと思います。
以上です。
○熊谷参考人 ある程度大きい大学病院とかですと、病院の中にリハビリテーション科という科があるわけですね。自分なんかもそこにコンサルトをしていろいろやってもらうつもりでいるんですけれども、例えば、仕事始めなんかのときというのは物すごく、どうやっていいのかわからない時期というのが絶対あるし、試行錯誤の時期というのがあるので、そういうときにリハビリテーション科を一つの窓口として、まあプロジェクトチームというかそういうチームが組めて、個別具体的な障害のニーズみたいなものに対応できるシステムみたいなものがある程度確立されていれば、院内での仕事になれる過程がよりスムーズになるかなというふうには思っています。
それから、ちょっと自分のことと関係ないんですが、聴覚障害の方の活動も昔やっていて、手話通訳をもっと確保するための具体的な方策として一つ、第二外国語が大学で履修する課程にありますけれども、第二外国語の中に日本手話を導入するという案は、現状では、大学のサークルとか地域のサークルで初めて手話に接するという人が多いと思うんですけれども、そうやって第二外国語として多くの人が一度触れるという機会があると、大分興味を持つ人もふえていくんじゃないかなというふうな意見を持っています。
以上です。
○佐藤(公)委員 ありがとうございました。
今お話を聞く限り、やはり財政面のこと、もしくは意識改革というか啓蒙の部分。
具体的に今熊谷参考人からお話がございました部分、ちょっと私もお話だけさせていただければ、リハビリテーション科というかチームを組んでいく。諸外国では非常にカウンセリング機能的な部分が強く制度的に教育機関に組み込まれているというふうに自分も今勉強をさせていただいておりますけれども、そういう部分を、リハビリテーション科とかとおっしゃいましたけれども、リハビリテーションとともにやはりカウンセリング、いろいろな相談窓口というものをきちんと充実させたものを早く、というか、この法案とともに教育機関の中に、いろいろなことがあります、いろいろなことがありますが、特にそこが重要だというふうに私も思いますが、やはりそう思われますでしょうか。熊谷参考人、いかがでしょうか。
○熊谷参考人 はい、そのとおりです。
○佐藤(公)委員 わかりました。ありがとうございます。
本当に、いろいろと教えていただきまして、ありがとうございました。本当にありがとうございます。これで終わります。
○鈴木委員長 次に、小沢和秋君。
○小沢(和)委員 日本共産党の小沢和秋でございます。
きょうは、参考人の皆さん方には、非常に貴重なお話を聞かせていただきましてありがとうございます。
まず、細田参考人と高岡参考人に一言ずつお伺いをしたいと思うんですが、絶対的な欠格条項をなくしていくということはいわば入り口でありまして、その後、さらにいろいろな政令、省令をつくったりしていくわけです。これも最後は、結局、一つ一つの具体的な事例を積み上げて、本当のところ、こういうようなところまでその対象を広げていくというようなことにどうもなっていくようなんですね。
だから、そういう意味で、私、一番最後の、運用をつかさどる部分に障害者の人たちが入って、そういう皆さんの意見なども正確に反映するような形でこの一番最後の具体的な運用が行われていくようになっていくことが必要じゃないかということを感じておりますが、いかがでしょうか。
○細田参考人 お答えいたします。
今おっしゃるとおりだと私も思います。この具体的な運用基準につきましては、非常に、一律に何か運用基準を決めると、今委員がおっしゃったとおり、また欠格条項ができるようなことになってしまうわけだと思いますね、私は。ですから、先ほど来繰り返し申していますように、その場所の環境を含めて、実際に障害ある方が置かれた環境を含めて、非常に個別的に対応ができる場所というのもございますし、対応ができない場合にはそれを改善するというようなこともございますので、そういうことを含めてかなり柔軟な対応が行われなくちゃいけないと思いますし、そのときにはやはり、その現場でのあるいはその個々の状況に応じた対応というものがなされないといけないんじゃないかというふうに考えております。
ただ、一律に何かをやるというときに、例えば制限免許の問題でありますとかそういったことが話題になった部分もございますけれども、そういうことは法律としては一律に行わないということで考えた結果が今のような状況になっているんだと思いますし、運用の上では、もう今委員おっしゃっているように、その対象者と申しますか、その意思を持ってやられる方の意見を含めていろいろ対応を考えないといけないんじゃないか、そういうふうに思っております。
○高岡参考人 高岡です。
先生がおっしゃられたように、これからは、障害を持った方々がさまざまな職業に従事する、そういった事例の積み重ねが非常に重要だと思います。もちろん障害の状況は一人一人大きく異なるものですが、それの対応あるいは環境の整備といったノウハウを広く公開することによって、より新しい対応が可能になると思います。
ここで私が一つさらに要望を申し上げたいのは、そういった障害を持った方々がさまざまな職業につくということをサポートする専門職が必要ではないか。介護保険におけるケアマネジャーですとか、あるいは先ほど熊谷先生がおっしゃられたような、コンサルタントをする、そういった職業に障害者自身がなっていく、そういった人々を養成する専門機関も必要ではないかということです。先ほど、さまざまな補助手段ですとか信号装置などがあると申し上げましたけれども、これらの利用についてよく理解をしている、電気通信の技術も兼ね備えた、そういったアドバイザーというものがこれからの社会で大きく必要になってくると思います。そういった専門職を育てる支援をぜひ国の方でもお願いしたいと思います。
以上です。
○小沢(和)委員 私は、障害者の方が障害を克服して仕事ができるようになっていく上で補助的手段というものが非常に大きな意味を持っていると思いますし、それも日進月歩をしている。だから、これまでだったら、この程度の障害だったらこういう仕事は無理じゃないかと思われていたものも、補助手段が発達したためにどんどんできるようになる、今こういうような状況ではないかと思うんです。
その点で、高岡参考人に重ねてお尋ねをしたいんですが、あなたが配付をされた資料の中に、発語障害者と健聴者がリアルタイムに話せる電話リレーサービスというのがあります。私も、電話でそういう耳の聞こえないような方と対話ができるなどということはちょっと今まででは考えられないことなんですが、これはどうして可能になるのか、一言ちょっと解説してください。
○高岡参考人 お手元の資料にありますように、電話リレーサービスというものは、聴覚に障害を持つ者が聞こえる人に対して電話ができるようにするサービスです。聴覚障害者が自分でキーボードあるいは筆談によってリレーサービスを行うセンターに電話をします。センターでは、聴覚障害者から送られてきた文字あるいは筆記文字を読んで、聞こえる人に声で電話をします。相手の声を聞いて、聞こえない人にまた文字あるいは筆記によって伝える。そのことによって同時双方向の通信を可能にするサービスです。
現在、聴覚障害者の通信といいますと、ファクスですとかEメールですとかいろいろなものがありますけれども、これは片方向の通信でありまして、皆様方が毎日電話を使っている、いつでも、どこでもすぐ通じるというコミュニケーション手段ではないんですね。別なメディアだと思います。そういう意味では、聞こえない人がいつでも、だれとでも通信、電話ができるというサービスは、私たち聴覚障害者が社会に参加する、さまざまな仕事につくといったときに大きな支援になるものと思います。
以上です。
○小沢(和)委員 次に、熊谷参考人にお尋ねしたいんですが、先ほどお話を聞いておりまして、あなたが大学に入られてからひとり立ちをして、生活から学習から、さらに医師として今実際の診療などをするためにどれほど創意を凝らして頑張っておられるかということを聞いて私も非常に感銘を受けたんですが、ただ、周辺の協力とかいうだけでなく、いろいろ、バリアフリーにするとかあるいはまたスタッフをつけなきゃならぬとか、これは相当にお金もかかるんじゃないかと思うんですよ。
だから、障害者の方がこれからどんどん社会に進出をしていく上では、ただ周辺の協力あるいは経営者の理解というだけじゃ足りない。そういうような施設をつくったりスタッフをつけたりするために必要なお金を国なども積極的にバックアップをしていくというようなことまでいかないというと、そういう人たちの理解や善意に頼っておったのでは限度があるのじゃないかというふうに私は考えるんですが、その辺、いろいろ注文があったらこの機会に聞かせておいていただきたいと思うんです。
○熊谷参考人 お金の問題はすごく大きくて、日本の、例えば電動車いすを買うときに確かに今補助が出るのですけれども、上限が決まっていて、電動車いすだと大体四十七万円ぐらいなんですね。四十七万円でつくれる電動車いすを今度は業者もつくるわけですね。そうすると、どうしても性能がその程度になってしまって、なかなかいい電動車いすができないわけですね。では、外国はどうなっているかというと、アメリカなんかは、最初に電動車いすを買う人に対しては上限なしなんですね。つまり初期投資がものすごく高い。ただし、それによって完全に自立したとみなされれば次回からは自費で今度は買う、そういうふうな発想なのですね。
だから、どちらがいいかというのは一概に言えないですけれども、僕なんかは個人的には、仕事ができる環境が整うまでの投資というのはやはり物すごくかかると思うのですよ。ただし、それ以降、ある程度自分の収入がふえてきたらというか、うすれば自分の力である程度補っていけるというふうな考えを持っています。
だから、これまでの電動車いすなんかでは、日本だと、大体四十七万円でできる電動車いすだから五年ぐらいで壊れちゃうわけですね。五年ぐらいで壊れると今度は、またうまいぐあいにできていて、五年置きに四十七万円出るのですよ。だから、そういう制度というのは何か、生かさず殺さずじゃないけれども、もうちょっと、最初に投資をもう少ししていただけると。向こうの経済学の論文なんかを見ていると、アメリカのやり方の方がコストとしては全体としては低かったり、つまり、将来的な障害者の収入なんかを考えると、全体に与えるコストは初期投資を奮発した方が低いというふうな研究もあるぐらいで、もう一度その辺を考え直してもいいんじゃないかと思います。
○小沢(和)委員 ありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、阿部知子君。
○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子と申します。
まず冒頭、長時間にわたり、参考人の皆さんには大変御苦労さまでございます。そして、本日のこの審議が、私にとりましても、また、恐らく今国会、それから今までいろいろ審議されてきた私どものこの国会の運営の中でも極めて人間的で、そして新しい人権の世紀を開く幕あけにふさわしい場だと思いながら皆さんの質疑を拝聴しておりました。
まず、大変私的なことで恐縮ですが、私は、きょう参考人になった熊谷医師と同じ医局に二十七年前に入局いたしまして、きょうこの場所に熊谷参考人をお呼びできて、そして、障害を持っても一つ一つ乗り越えて医師の道に、あるいは医療の道に新しく進んで行かれる方がこれからもっともっと出てくれるという、本当に、その記念すべき参考人となってくださったことをとてもうれしく思います。
と申しますのも、医療と申しますのは、やはり一番根本において大切なのは、患者さん、病む人と共感する能力、相手の痛みを知る能力だと思います。その意味において、御自身が障害をお持ちの方々は潜在的に、障害を今は持たない、例えば私どもよりはすぐれて相手の痛みとある意味で目線を同じくし、痛みを分かち合うために最もふさわしい方々だと思います。その方たちにこそ道が開かれるべきですし、そのためにありとあらゆる施策、制度、そして財源が準備されてしかるべきかと思います。
そして、きょう、皆さんの御質問が多岐にわたり、ほとんどのことがもう言い尽くされておりますので、あえて私としては、熊谷参考人の夢ということをキーワー
ドに幾つか伺ってみます。
これから例えば障害者基本法のようなものができましたとしても、その当事者である障害をお持ちの方たちが夢を持ち続けることができるということがまずどんなことにもまして大切と思いますが、熊谷参考人にあっては、御自身が医者になろうという夢、あるいは数学者になろうという夢をお持ちになるその一番の出発点は、恐らく、親御さんが熊谷さんにどのように接しられたか、御両親との関係のことがあると思います。
私も、障害のあるお子さんたちを見ていて、一番最初の障壁はもしかして親ではないかと。やはり心配だし、やっちゃいけないし、できないしという形で、親は親心ゆえに子をとめることもありますが、熊谷参考人の御両親にあっては、熊谷参考人を養育するに当たってどんなふうに育てられたか、まずそのあたりをちょっと教えてください。
○熊谷参考人 子供の立場で親の話をすると限界があるかもしれないですが、子供の目から見ても、うちの両親は物すごく全エネルギーを子育てに注いだ人だなと思っています。その分、周りとの関係はつくりづらかったというか、割と孤独な状態にあったかもしれないですけれども、その分すべてを自分に注いでくれた、おまえはできる、おまえはできるみたいなことを耳元でささやくような両親であったと思います。例えば、小さいころなんか、近所にある標高五百メートルぐらいの小さい山に、毎朝六時半、父親が自分の足で歩かせるとかいって、自分を支えて登らせておりてくるというのが毎朝の日課で、その後、新聞受けに新聞をとりに行って朝食がやっと食べられる。
そういうふうに自分を家族の一員としてがちっと、役立つ人間じゃないですけれども、自分はこの家族の中にいてもいいんだというか、邪魔者ではなくてちゃんと役割を果たしているんだみたいな、自信みたいなものを、親は積極的に自分に自信をつけてくれたかなというふうに思うし、自分が決めたことはどんなささいなことでも応援してくれたというか、今になって思うと、そういう中で自信をだんだんつけていったというような感じはします。
そのかわり、一度自分で決めたことをあきらめようとするとすごく怒ったというか、一度自分が決めたことならぼろぼろになるまでやらせるというか、そういうの
が徹底していた親だったような気がします。
○阿部委員 星飛雄馬のお父さんみたいですが、そういう御両親にはぐくまれても、なおかつ、子供が生育していく過程では、自分の夢を時にとんざさせそうになったり、やはり励ましてくれる向きと壁になることと両方あったと思うのです。熊谷参考人にとって、一番励ましになったこと、それから今までの中で一番つらかったこと、二つ、両方教えてください。
○熊谷参考人 一番励ましになったことというと、その前に一番壁になったことというのは、やはりひとり暮らしを始めるというときに一番心配したのは母親で、全然一人で暮らせる状況じゃなかったので、絶対やめなさいというふうな感じでそのときは強くとめられたんですけれども、逆に励ましになったのは、そのとき父親が、行ってみろみたいな感じで一人でほうり投げてくれた。その分、もうむちゃくちゃ大変でしたけれども、そのおかげで何か一歩踏み出れたかなという、今まで二十何年しか生きてないですけれども、一番の転機はひとり暮らしを始めたということだと思います。
○阿部委員 私的なことばかり聞いて申しわけありませんでした。
最後に、熊谷参考人が今病棟で診察している子供たち、私もおりましたからわかりますけれども、非常に重い病気で全く四肢を動かすことのできない子たちや白血病の末期の子もいると思うんですね。その子たちが、熊谷参考人から見て、あなたがお医者さんになられたことで何か感じているものがあると感じられますか、お思いになりますか。
○熊谷参考人 自分の口から言うのはすごい照れることだと思うんですが、どういう影響を与えているかというのははっきりはしないですけれども、やはりまだ医者としては未熟なので医療的な面では向こうはそれほど期待してはいない段階だと思うんですね。まだ研修医だし、やれることというのは物すごい制限されていることは患者さんもすごい理解しているというところはあると思います、それは障害があるとかないとかは関係なく。
だけれども、やはり話題としてほかの人と話せない話題というんですか、健常な人とはなかなか話しづらい話題みたいな、例えばさっき言ったように、昔どんな育て方をされていましたかとか、あるいはわだかまりみたいなものが会話に出るというか、そういうのを聞くと、やはり自分のやれることが物すごくあるなというふうな実感はあります。
自分も昔はすごい医者嫌いで、ひとり暮らしを始めた直後に病院に行ったことがあって、今トイレが自分一人でできないんですけれども、どうしたらいいですかと医者に相談したときに、そんなの知らないよ、そんなのこっちが聞きたいぐらいだよとか言われて、うわあ、最悪だな、こんなのじゃなあとか思ったのをすごい鮮明に覚えている。
だから、いわゆる医療、いわゆる医学の教科書に載っているような内容じゃなくても、例えばトイレに行くのにどうしたらいいかなとか、し瓶を持ち歩くのはすごい恥ずかしいしなあとか、そういういろいろな細かいことだし、医学的には全然価値のないものなのかもしれないですけれども、本人にとっては生活の中で一番キーになるところというか、むちゃくちゃ大事なところ。
トイレができないから外出ができないなんという人は山ほどいるし、呼吸器がとれないから外出できないという人は山ほどいるわけで、だから、そういうポイントみたいなところは見逃さないかなという気はしていますけれども。
○阿部委員 四人の参考人の皆さんにも、大変ありがとうございます。医療がより人間的なものになるように、私たち立法府の者も頑張りたいと思います。
ありがとうございました。
○鈴木委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
参考人の皆様方におかれましては、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。
午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時四十七分休憩
――――◇―――――
午後一時開議
○鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
午前に引き続き、内閣提出、参議院送付、障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官田中壮一郎君、大臣官房審議官清水潔君、厚生労働省医政局長伊藤雅治君、健康局長篠崎英夫君、職業安定局長澤田陽太郎君及び社会・援護局障害保健福祉部長今田寛睦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○鈴木委員長 これより政府に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三井辨雄君。
○三井委員 久々の質問の時間をお与えいただきまして、本当にありがとうございます。新内閣になってから初めてでございますけれども、しばらくぶりでございますので、質問の内容に多々誤りがあるかと思いますが、お許しを願いたいと思います。
一九八一年、昭和五十六年に、国連により、完全参加と平等のもと、国際障害者年が提唱されました。また、世界的に障害者の自立と社会参加の取り組みが進められてきたわけでございますが、この間、約二十年の歳月、長きにわたり、我が国においても、障害者基本法の制定や、またノーマライゼーションの七カ年計画の策定、また交通バリアフリー法、障害福祉三法の改正など、関係者の皆さんの御努力に大きく前進してまいりました。
今回の見直しにより、障害者の皆さんの自立と社会参加が一層進むことが期待されると思いますが、最初に大臣に、今後の方向性などについてお聞かせ願えればと思います。
○坂口国務大臣 今委員が御指摘のように、ノーマライゼーションが叫ばれまして、そして、私たちが住んでおります町を、健常者も、そしてまた障害を持つ皆さん方も、同じように生活できるようにしていこう、そういうことで進んでまいりました。
そしてまた、できる限り障害者の皆さん方にもお勤めをいただけるように、企業やあるいはまた官公庁も含めまして、障害者の皆さん方を一定比率、雇用をしようというようなことも進められてきたところでございます。
しかし、そうはいいますものの、肝心なところの、いろいろの職種というのでしょうか、それに対しまして資格が必要な場合に、なかなかその資格が取れない、そのために障害を持つ皆さん方がいろいろの職種につくことができない、そうしたことがずっと続いてきたわけでございます。
したがいまして、私たちの住みます町や村をバリアフリーにするのと同じように、社会の仕組みそのもののバリアフリーを進めていかなければならない。そして、どの職種であれ障害者の皆さん方がお勤めいただけるような環境をつくっていかなければならない。今回はその第一歩であるというふうに私は思っております。
これで十分であるとは決して思っておりませんが、少なくともその一歩をここに踏み出すことができるのではないかというふうに思っておりまして、これから先、これを機会に、ひとつあらゆる職場において障害者の皆さん方が働いていただけるような環境を整えていく、そして、将来またさらにバリアフリーにしていく、そういう努力が必要ではないかというふうに思っております。
○三井委員 どうもありがとうございます。まさしく今大臣がおっしゃいましたように、これからやはりすべてにおいてバリアフリー化というのは大事な時代になろうかと思います。
早速ですが、本法案は、既に四月に参議院側で審議されておりますが、その際に若干触れられておりましたが、この改正案の成立を一日千秋の思いで待っている人がいらっしゃるわけでございます。きょうも傍聴席にお見えでございますが、一九九八年に薬剤師の国家試験に合格していながら、耳が不自由なために薬剤師の免許の欠格事由に抵触し免許証の交付が受けられないという体験をされた後藤久美さんでございます。先日御結婚されまして早瀬久美さんになりましたが、私も同じ薬剤師出身でございますので、先日、御本人に改めてお会いいたしまして、本人から、この法案に対する問題点ですとかあるいは今までの御苦労、それから、これからの御要望についていろいろお話を実は承りました。この辺を踏まえて質問をさせていただきたいなと思っております。
具体的にお尋ねをしますが、本法案に該当する分野で、後藤久美さんのように、薬学部を卒業して薬剤師の国家試験を合格しているが免許登録を現行制度で拒否されているという事例がほかにもあるのかどうなのか、また、絶対的欠格事由が適用された事例があるのかどうかお尋ねしたいと思います。
○伊藤政府参考人 現時点におきましては、お尋ねのような事例は、後藤久美さん以外にはございません。
また、現行におきましては絶対的欠格事由で免許が問題になるケースがないということにつきましては、私どもといたしましては、そのような方は最初から可能性をあきらめて学校や養成施設に入学してこないことが一番大きな理由ではないかというふうに考えております。
○三井委員 まさしく欠格事由の運用事例がないということでございますが、資格を取得しようとする方が、欠格事由、障害を理由に養成機関の入学をあきらめたり、あるいは途中で挫折したりとか、進路を変更したりとか、実際に国家試験の受験や免許申請を行わなかった人もいるというぐあいに私も聞いております。
というよりも、また、むしろそこまでたどり着けなかった、教育という入り口の部分で問題があると思うのでございますが、現状において、医療関係の大学等あるいは教育機関が障害者をどのように受け入れているのか。また、こうした問題は、私立大学を含めて、むしろ国公立大学が率先して門戸を開くべきだというぐあいに私は思うわけでございます。
ちなみに、後藤さんにいろいろお話をお聞きした中で、十の大学をお問い合わせしたそうでございます。国立の大学は、後藤さんは不得手な科目があるので国立はお聞きしなかった、私立の大学だけ十カ所お聞きしたと。その理由が、ほとんどが、うちの大学では勉強についていけないだろう、あるいは実習はできないでしょう、それから、もし実習中に試験管が爆発したら、あるいは事故が起きたときに逃げることができるのかとか、何か理由にならない理由をつけられて入学を拒否されていたというのが実態なようでございます。しかしながら、幸いにして一校の大学だけは受け入れてくれたということでございます。
また、私のところにも、看護婦さんでありますが、高校を卒業して看護婦になりたい、私は聴覚障害だけれども、どうしても看護婦になって困った人を助けてあげたい。しかし、やはり今申し上げたような理由があって、このままでいると勉強にはついていけませんよ、あるいは最後には、できないに決まっているという決めつけ方をされてしまったという事例があるわけです。こういうようなことが今までの実態でございます。
また、入学試験そのもの、障害者が受験しやすい技術ですとか、あるいはIT技術も進んでいますから試験方法も工夫できると思いますが、どのように検討していくのか、お聞かせ願いたいと思います。
○清水政府参考人 お答え申し上げます。
障害者の方の各大学への受け入れについてのお尋ねでございますが、先生御指摘のように、基本的には学部等への進学の機会を広げるという観点から、私ども、受験機会を確保するよう配慮することを常々指導しておるところでございます。
今御指摘の事例につきましては、恐らく、受験に当たっての配慮あるいはその他も含めまして事前相談等の場でのお話かと思いますが、基本的にはそういう具体的に選抜に当たっての配慮が、当然、先生御指摘のように必要な場合もございます。
例えば、視覚障害の方ですと、点字、拡大文字による出題あるいは試験会場の問題、あるいは聴覚障害の方ですと、いわゆる注意事項というものを文書による伝達等々、さまざまな配慮というものは当然行っていくべきものというふうに思っておりますし、私どもも、その受け入れ体制をもっていわゆる受験機会を与えないというようなことはあってはならないというふうに基本的に考え、指導しておるところでございます。
また、受け入れという問題についてでございますけれども、受け入れにつきましては、施設設備面あるいは教育上、学習上の支援、両方の側面があるだろうというふうに思っております。
私どもとしては、予算上の措置といたしまして、国立大学については、先ほど申し上げました、試験あるいは手話通訳等の教育に係る経費、あるいは障害のある学生のための設備経費について予算措置を講じますとともに、施設についても、エレベーター、スロープ、障害者用のトイレ、手すり等の整備を行ってきております。
公立大学につきましては障害のある学生のための設備整備費の助成を行い、また、私立大学におきましても施設のバリアフリー化を推進するための補助、あるいは経常費助成の中で障害者の受け入れ数に応じた特別助成を行っている、こういうふうな状況でございます。
○三井委員 今回の法改正を契機に、障害者がまた多くの医療業務に従事するための養成施設、大学などへの入学を希望することは多くなるケースがあると思いますが、そうしたことを想定するならば、受け入れる教育機関では学生の選抜方法やあるいは教育指導を行う上で、障害者のための新しいカリキュラムあるいは障害者の種類に応じた補助的手段の整備というのでしょうか、そういうものは必要だと思います。
後藤さんの経験談でも、先生の言っていることがなかなか理解できない、あるいは講義に出ても手話通訳者ですとかノートテーカーですとか、そういう方がなかなか確保できない。そういう中でもっと困ることは、病名ですとかあるいは薬品名ですとか、これは手話用語にないというようなこともございまして、こういうような、今後、教育の場でどのように具体的に支援措置を改善できるかも含めて、簡単でよろしいですから御説明ください。
○清水政府参考人 お答え申し上げます。
基本的に、先生御指摘のように、受け入れ体制をどのように整えるかというのは重要な問題でございます。いろいろ障害の方々の障害の程度、種類に応じてさまざまであろうというふうに思っております。例えば、手話通訳者の配置でありますとかあるいはノートテーカー、さまざまな形、またカリキュラム編成上の配慮というものも当然必要になってくるというふうに考えております。
そしてその場合、特に受け入れ体制の問題といたしまして、教育機関という場ではこの受け入れ体制、学習支援体制を考えます場合に、まさに学生が仲間として、一つの大学というコミュニティーの中でも仲間としてともに支え合う、こういう考え方の中で、例えば学生のボランティア、ボランティア組織と十分連携をとる、そしてその体制を整備していくということが基本的に重要なことであろうというふうに思っております。
受け入れ体制の整備のために私どもとしても努力を傾けてまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。
○三井委員 障害者の方が大学や養成機関を卒業するまでの御苦労というのは、もう本当に健常者でもなかなか大変な中、相当御苦労されて卒業されたと思います。また、国家試験という大変なハードルを越えられてきたわけですけれども、医療関係資格に対する試験の水準は、大変厳しい環境の現場を考えますならば、当然維持されなければならない。
しかし、障害者の受験に際して、資格に必要な知識や技能の評価に障害を理由にした悪い影響を与えないための適切な技術をIT化の進んだ現在、取り入れることが容易だと思います。また、障害者の方に受験可能な技術を用いた試験方法を早期に導入することを私は求めてまいりたいと思いますが、今後、どのように検討、導入されるのか、お答え願いたいと思います。
○伊藤政府参考人 視覚障害者の方が国家試験を受験する際には、現在におきましても、本人の求めに応じまして点字や拡大文字による試験など便宜を図っているわけ00000でございます。
今後、この欠格事由の法律改正後は、さらにこのような試験方法につきまして検討を進めることが重要と考えておりまして、先般、六月十二日に障害者本部の申し合わせによりまして、障害及び障害者の機能を補完する機器の研究開発の促進を申し合わせしていただいたわけでございまして、私どもといたしましては、このような中でIT技術などの活用につきまして積極的に検討を進めまして、障害者の方が国家試験を受験する際に必要な知識及び技能の適正な評価に影響を与えない限り、そうした技術を用いた試験方法の活用につきまして積極的に検討を進めてまいりたいと考えております。
○三井委員 それでは、次に参ります。
実際に資格が付与される段階において、相対的欠格事由に該当するかどうかの的確な判断がこれから必要とされるわけでございます。
今までは一律に欠格事由としていたものを今回見直したわけでございますが、個々の障害者の心身状況を個別に判断して、できる限り支障のない範囲で免許等を付与するものであり、そのための各資格ごとの具体的判断方法を求められることになりますが、今回の法案では、免許を付与するかどうかの具体的判断方法については、省令等での規定事項とされている。しかし、その内容として示されたものには、依然として、個々の省令について、障害を特定する規定を用いて相対的欠格事由を明記している。絶対的欠格事由を外しても、省令で障害を特定しては、何のための法改正なのか。今回の改正案の魂ともいうべき趣旨に即していないのではないかな。
先ほどの午前中の参考人招致の中にもございましたように、この省令ということは、私は、その考え方なりあるいは手続、いま一つ納得いかないものがあるんですが、これについてはいかがでございましょうか。
○伊藤政府参考人 今回の制度改正の大きな柱の一つが、今まで絶対的欠格事由とされておりました、目が見えないこと、耳が聞こえないこと、口がきけないこと、こういう絶対的な欠格事由につきまして、相対的欠格事由に改めるということでございます。これは、全く門戸を閉ざしていたものを、障害を持ちながらも、本人の持っている能力と、それから資格制度によって要求される条件というものを個別に判断して対応していくというのが基本的な考え方でございます。
したがいまして、医師、歯科医師等につきましては、視覚、聴覚、音声、もしくは言語、または精神の機能の障害というものを、一種の、医師の仕事上、相対的欠格事由にさせていただいているわけでございますし、また薬剤師につきましては、視覚、または精神の機能の障害を相対的欠格事由とさせていただいているわけでございます。
これはあくまでも、私どもといたしましては、本人の能力と、資格制度に要求される能力というものを個別に判断していくという趣旨でございまして、今までとは、そういう意味から申しますと、考え方は同じという御指摘は当たらないものと考えているわけでございます。
したがいまして、きょう午前中の参考人の意見の中でも、具体的な判断基準についていろいろ御意見があったわけでございますが、私どもといたしましては、一人一人の事例につきまして、第三者的な専門家の判断を加えながら個別具体的に対応していくという観点で、それらにつきまして省令事項とさせていただいたわけでございます。
○三井委員 わかりました。
それでは、時間もございませんのにちょっと質問が多過ぎますので、どんどん先に行かせていただきます。
この判断基準ですが、この策定に当たり、専門家の意見を聞くということでありますが、どのような形で行われるのか。医療職種もいろいろありますし、先ほどお話ございましたように、特定の職種に偏ることなく客観的な意見を聞くことも大事だと思いますし、何といっても、やはり障害者、当事者の意見を尊重していくというのが本来の姿でなかろうか、こういうぐあいに思うわけでございますが、いかがでしょうか。
○伊藤政府参考人 障害をお持ちの方から免許の申請がありました場合に、まず、私どもといたしましては、医師の診断書、これには、それぞれの障害の程度、そして、その障害を補う補助手段としてどういうものを使って、どの程度の能力があるかといった、いわゆる客観的な医師の診断書を提出を受けまして、そして、それを出していただきますと厚生労働省内で検討させていただくわけでございますが、例えば医師等の医療関係の資格、免許におきましては、その方が大学で臨床実習を受けたか否か、そして、受けたとすれば、その際にどのような項目をどのような補助
的手段を活用して受けたかなどにつきまして、専門家に相談をしながら決めていくということでございます。
そして、さらに、免許の交付を拒否する場合には、もう一度改めて専門家に御意見をお伺いすると同時に、本人からも事情をお聞きしまして、最終的な判断をするということになります。
そして、この専門家といたしましては、例えば医師でございますと医療の専門家、そして、その方が仮に聴覚障害を持っていたとすれば聴覚障害の専門家、さらに医師の教育、養成にかかわる専門家、これは三分野の専門家にそれぞれ厳密に状況判断をしていただきまして、そして、最終的に厚生労働大臣が免許の交付の適否について判断をする、このような手順をとらせていただきたいと思っております。
○坂口国務大臣 今御質問いただきましたところは大変大事なところだというふうに思います。例えば、医学部の入学試験は合格をして卒業はできたけれども、国家試験が通らなくては何にもならないわけでございます。ただ、医学の研究者にはなれると思いますし、基礎研究などはできるというふうに思いますが、しかし、実際に臨床に携わることができないわけでございますから、それは大変大事な点だというふうに思うわけでございます。
今局長が申し上げましたことに尽きるわけでございますが、しかし、その判断はやはり、できる限りその皆さん方に医師なら医師になっていただける道はないか、できるだけなっていただける道はないかということを考えて、そこは判断をしていかなければならない。できるだけ切るということでは決してなくて、できるだけ、どうしたら皆さん方を引き上げる、引き上げるという言葉は悪いですが、合格をしていただけるようにするかという観点でそれは進めていくというふうに理解をしていただいてよろしいのではないかと思います。
○三井委員 まさしくそのようにぜひしていただけるようにお願い申し上げたいと思います。
それから、免許の付与の判断についてですが、最終的な判断というのは、権限は厚生労働大臣にあるわけでございますよね。参議院の審議で我が党の堀委員に、個々の免許の付与については審議会に諮ることは考えていないという局長答弁がありましたが、これの中で、別の体系で行うという表現もなさっていたわけでございますが、これはどこでだれがお決めになるんでしょうか。これを明確にしていただきたいと思います。
○伊藤政府参考人 参議院の本法案の審議におきまして、堀委員からの御質問に対しましてお答えしたことでございますが、まず、この医道審議会におきまして、医師免許を停止するとか取り消すということについて、行政処分の前提としてこの審議会にお諮りをしております。これは、一たん付与いたしました医師、歯科医師免許等につきまして、犯罪等で判決が確定した後に行政処分を行う場合の手続として決められているわけでございますが、今回の欠格事由の法律改正におきましては、免許の交付をするかどうかという全く最初の手続でございますので、医道審議会にお諮りするということは考えておりません。
したがいまして、そういう意味で、今申し上げましたように、障害のある方が医師の診断書を添えて免許の申請をし、そして厚生労働省内におきまして第三者的な専門家の意見を聞いて、そして最終的に厚生労働大臣が免許交付の可否について判断をする、そのことを別の体系と申したわけでございまして、以上でございますので、御理解を賜りたいと思います。
〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕
○三井委員 別の体系というのは、なるべく具体的にぜひともお話しいただかなければ非常に誤解を招く場合があると思いますし、今局長がお話しされたように、第三者的というきちっとした、明確にお話をしていただきたいと思います。
もう時間がございませんので、あと質問もたくさん残っていますが、最後に大臣にお伺いしたいんです。
実は、ことしの三月に分科会で、アジア障害者十周年の、先ほど午前中の参考人からもお話がございましたが、いよいよ最終年ということで、DPIの大会がオリンピックと同じように四年に一回開催されるわけでございますが、RIは大阪で、これはリハビリテーションの会でございますが、札幌で十月に開催される。世界、アジアから約二千人の方がお見えになるんですね。DPIの皆さんも大変熱心に、メキシコでは三億近いお金がかかったそうなんでございますが、今回もそれぐらいかかるだろうと。
しかしながら、この二千人の中には補助者もいらっしゃいますし、あるいは車いす、あるいはストレッチャーで来られる方、こういう方が約千五百人とお聞きしております。こういう方々が、私は札幌出身でございますが、十月というのは大変寒くもありますし、厳しい時期にちょうど入るころでもございます。逆に言うといい時期なのかもしれませんが。そのとき、やはりこの大会を何とか私は成功させてあげたい。そして、多くの方々に日本、北海道を知っていただきたい。障害者がなかなかそういう機会がない、そういうためにも私は与えてあげたい。そのために、リフトカーですとか、あるいはノンステップカーというんでしょうか、床の低いバスですとかそういうものですとか、あとはホテルのバリアフリー化ですとか、いろいろな問題が山積しているわけでございます。
特に私がそこで一番感じたことは、リフトカーというのはどれぐらい必要なんですかとお聞きしたら、約百台ぐらい必要なんだと。しかし、これはもう大臣も御存じのとおり、通常、施設においてもどこにおいても毎日のように、土日も休まずリフトカーは使われているわけですから、どこかから貸与するにしてもなかなか調達は難しいと思うんです。そのときに、内閣府にもそれから外務省にも、当時の河野外務大臣あるいは福田官房長官にもこのお願いをしたわけでございますが、実際問題として、今、直面しているのが来年の十月でございますけれども、こういう援助をぜひとも国を挙げてしていただきたい。
長野のパラリンピック並みとはいかないにしても、本当に障害者の最終年度、アジア最終年度ということでいえば、成功を私たちも一生懸命応援してまいりたいと思いますので、厚生省としてもぜひ大臣にお願い申し上げたいということでございます。
○坂口国務大臣 まことに大事な会議だというふうに思っております。去る六月十二日でございますが、障害者施策推進本部会議というのが官邸で開かれましたが、その中で、この会議につきまして最大限協力をするという申し合わせを行ったところでございます。
具体的な問題につきましては、これからまたいろいろとお話し合いをさせていただきたいと思います。
○三井委員 ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。
これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○谷畑委員長代理 次に、山井和則君。
○山井委員 民主党の山井和則でございます。
三十分間という貴重な時間で、今回のこの欠格条項の見直しについて御質問をさせていただきます。
当然のことながら、今回のこの欠格条項の見直しということは大きな一歩前進であると思います。そういう意味で私も賛成の立場ではありますが、ただし、最大の懸念は、ここで見直したけれども、数年たって見たけれどもまだまだ障害のある方がお医者さんや看護婦さんや薬剤師さんになるケースが非常に少なかったということでは、やはり絵にかいたもちであったということになりかねません。そういう意味では、いかにこれを実効力を持たせるかということが大事だと思っております。
午前中、聴覚障害のお医者さんの藤田先生、また肢体不自由の医学部学生の熊谷さんの、参考人の方々のお話をお聞きして、こういう方々にぜひとも全国の学校を回って講演をしていただきたい。そうすれば、障害のある子供たちも、将来僕もお医者さんになるんだ、私も看護婦になるんだ、私もお医者さんになるんだというふうな、そういう夢を大きく持ってくださるようになると思います。
さて、私の知り合いのお孫さんで、あかりちゃんという四歳になるお子さんがいらっしゃいます。私も先日御相談を受けたんですが、十カ月の時点でやはり聴覚障害であるということがわかった。それで今、聾学校に通っておられまして、先日、私もそこを見学に行かせていただきました。
本当にかわいらしくて、元気いっぱいのお子さんなんですが、やはり親御さんとしては、将来この子がどういう学校で学べるんだろうか、また大学で学べるんだろうか、あるいは人生、どういう職を持って生きられるんだろうか。恐らくあかりちゃん本人は、まだ四歳ですから、そこまでは考えていないとは思うんですけれども、やはり親御さんはもうそういうことを今から考えておられます。そういう意味では、今回のこの見直しが、将来の、あかりちゃんに代表されるように、多くの障害のある方々の人生の選択肢と可能性と自己決定を広げるものであってほしいという思いを持っております。
まず最初、大臣にお伺いしたいんですが、私自身の理解は、今回のこの欠格条項の見直しということに関しては、障害のある方々にもちょっと門を開いて、渋々、看護婦さんやお医者さんや薬剤師さんになることを認めてあげるよという消極的な意味じゃなくて、これから二十一世紀の共生の時代において、これからはどんどんそういう方、いろいろな仕事で社会参加していってくださいという、それを社会が、国がバックアップしていきますよという積極的な意味ではないかと私は思っているんですけれども、そのあたりについて、大臣のこの法案についての思いをお聞かせいただければと思います。
○坂口国務大臣 お話のとおり、この法律案というのは、やはり障害者の皆さん方に大きな夢を持っていただく第一歩でなければならないと私も思っております。今回のこの法律案が完全なものではございませんけれども、まだまだこれから進めていかなければならないというふうに思いますが、その第一歩をこれが開くというふうに思っているわけでございます。
これから進めていきますためには、一つは、いわゆる資格を取得していただきます試験、これに合格をしていただきますための、いわゆる試験を受けていただくためへの配慮というものがまず第一。それから次には、就職をしていただきますときの就業環境における配慮というのが二番目にあって、それからもう一つは、障害を補う機器と申しますか機械器具、やはり補うものの開発が必要ではないかというふうに思っております。
これからこの法律が皆さん方の御協力によって成立をさせていただくということになりますと、まず最初、来年の四月から、三月からと申しますか、いわゆる入学試験があるわけでございまして、まず最初は試験を受けていただきやすい環境を、これは文部省の方に御協力をいただいて整えていかなければならないというふうに思います。
そして、その内容によりまして二年制のものもありますし四年制のものもありますし、あるいは医学部のように六年という長いものもございますけれども、その学生生活を送っていただいておりますその間に、やはり、今度はお勤めをいただきますときに、勤めていただきます職場の環境というものを整えていく準備を、それぞれの大学やそれぞれの病院でやっていただかなければならないというふうに思っている次第でございまして、その一歩をここに踏み出させていただくという思いでございます。
○山井委員 ありがとうございます。
今、いろいろな補助的な手段をどう整備していくかということも含めて御答弁いただいたんですけれども、やはりこれを実効力を持たせるためには、そのような補助的な手段の整備というものをできるだけ早急に進めていただきたいと思います。また、そういう意味では、これは五年後の見直しということになっているようですけれども、ぜひとも三年後ぐらいに見直して、現場に問題点がないかということをきっちりチェックする必要があるのではないかと私は思っています。
今まさに試験の話を大臣おっしゃいましたが、医学部に通った、看護学校に通った、問題はその後きっちりと教育が受けられるかということだと思います。実際、実習のこともあるわけです。そこで、私、お二人の方のことをまた御紹介させていただきたいと思います。
一人は今、工学部の大学二年生の男子学生さんです。私の知り合いです。高校時代まではクラスメートに支えられて一生懸命勉強して、聴覚障害ながら国立大学の工学部に進まれました。そういう聴覚障害ですから、やはりパソコンや情報通信に関心があるということで、情報工学を勉強しておられます。
しかし、大学に入って、一年、二年とノートテーカーの方々をボランティアで集めて何とかやってきたけれども、だんだん専門学科に入ってくると、一般のノート
テーカーの人では対応できない。ところが、そのノートテーカーの人もなかなか集まらないわけなんですね。
これに対して大学も、財源が十分にないからノートテーカーまではつけられないというふうになっている。また、御本人さんは、合格させてもらっただけでもありがたいと思っているんだから、余り自分のことでこれもあれもというのがあるから、大学には言いづらい。でも、そんな中で、実際、授業にもついていけないから大学をかわろうかということまで考えておられる。
やはり、こういうふうに試験を通れても、実際、授業が十分に受けられなくて大学をかわるんだったら、何のための合格か。それだったら、最初から合格させなかった方が親切だったんじゃないかというような議論にもなりかねないと思います。
このことが一点。
もう一人の知り合いも大学二年生なんですが、聴覚障害の女子学生さんです。その大学の福祉学部初の聴覚障害の方ということで、鳴り物入りで合格をされました。ところが、やはりメールで話を聞いてみると、毎日毎日ノートテーカーを集める調整とお願いで走り回っていて、授業以前の問題だということになっているわけなんですね。
単純な話ですけれども、聴覚障害の学生さんが福祉学部で学んで、聴覚障害の福祉の学者が、研究者が出てくるということは、すばらしいことだと私は思うのです。その大学の工学部にも聴覚障害の方がおられるんですけれども、まだ福祉学部だからボランティアの人も集まるけれども、工学部の学生さんなんかは、ノートテーカーも集まらずに、ほとんどあきらめて、授業へ出ても独学で本を読んでいるということです。
やはりこういう現状ではだめで、何が問題か。具体的に二点挙げさせてもらいますと、一点目は、やはり財源なのです。大学で何とかしなさいと言ってもこれはだめで、地方自治体や国が出さないとだめだと思います。
この点に関しては、確かに障害のある学生さんの人数に応じて予算は出ているんですけれども、バリアフリーとか建物を直す予算はそれでフォローできるんですけれども、ノートテーカーやそういう通訳、あるいは実習先にノートテーカーさんなりに行ってもらうときの交通費をどうするかとか、そういうところまではまだまだ非常に不十分なんです。
あるいは、こういうソフト面、人的援助をセットでやらないとだめだと思います。体の不自由な方が大学に入られて、私の知り合いがやはり一人でトイレに行けない。トイレ介助をどうするのか。やはり、そういうこともきっちりと対応していただきたいと思うのです。
それと、このノートテーカーを集める責任が現時点では学生さんにあるのです。
学生さんが頭を下げて集めて回って、また勉強もしてもらってということだったら、それこそ本業の勉強どころじゃないわけですね。そういう意味では、財源の問題と、障害のある方に入学してもらった以上は、ノートテーカーとかそういうバックアップの人は大学が責任を持って手配するという形にしていかねばならないのではないかと思います。
以上のことについて、文部科学省さんにお伺いしたいと思います。
○清水政府参考人 お答え申し上げます。
先生御指摘のように、いわゆる障害を持たれた方が入学された後に、教育の履修にあるいは学習活動に、あるいは円滑な学生生活を送れるように、支援体制をどのように図っていくかということは、非常に重要なことと考えております。御指摘の具体的な事例については、私ども必ずしも把握していなかったわけでございます。
例えば、ノートテーカーという問題につきまして、私どもそれなりに予算上の措置は国立大学に対してはしておるわけでございますが、まだまだ御指摘のような事例に対して対応し切れているかということについて、私どもとしても考えてみなければならないことであろうかというふうに思っております。
また、学生さんが、いわばノートテーカーをみずから確保。なかなか専門領域との関係で難しいという部分も別の問題としてあろうかと思いますが、少なくとも、そういう意味で、何らかの形での組織化、あるいは学生のボランティア等も含めて組織化、あるいは全学的な取り組みというようなことがやはり必要なんだろうというふうに思っております。
そういう意味で、私どもとしても、予算面も含めまして今後努力してまいりたい、こういうふうに思っております。
○山井委員 まさに今、ボランティアという言葉で言っていて、ボランティアでできる面も多少あるかと思いますが、実際、私の知り合いの学生さんも、ボランティアを集めたり、チラシをまいたり、ポスターを張ったりしているんですけれども、なかなか集まりません。というのは、週に一回とかじゃなくて、一日じゅう毎日の
話ですから。
実際、それでしようがなく隣の学生さんに頼んだら、九十分間ノートテークで必死になっちゃって、自分は勉強できたけれども、友達は授業が頭に入らなくなっちゃった、こういうふうなこともあるわけで、やはりそういう支援体制の充実も、権利として、教育を受ける権利というものもこの資格の問題とセットで考えていただきたいと思います。
また、私、民主党の中で今、情報バリアフリー法案、ユニバーサルデザイン法案というような議論などもしておりますが、先ほどの工学部の情報通信を学ぶ学生さんなんですけれども、まさにこれから、こういうバリアフリー、ユニバーサルデザインの情報機器の開発というのは重要になってくるわけですね。そういう中で、やはり聴覚障害の研究者がそういう分野に出てくるというのは、国にとっても社会にとっても非常に重要なことだと思っております。
実際、アメリカでは、リハビリテーション法の五〇八条が二十一日に発効ということで、すべての公共機関が使うパソコン機器は障害者対応でなければならないというような法律もできているわけですから、そういう意味でも、障害のある研究者を、どんどん大学を出てもらうということが非常に重要であるというふうに思っております。
私、スウェーデンで二年間福祉の勉強をしたことがあるのですけれども、その国民高等学校というところでは視覚障害の学生さんが同じクラスにいました。そのためには、やはり付き添いの人がいらっしゃったわけですね。それで、全校集会があって、クラスメートの視覚障害の友達が、視覚障害者に対してどういう援助をするのかというのを普通のクラスメートに教えるのですね。やはり、一般の学校に障害のあるクラスメートがいる、そのことによって、みんなの福祉への関心や意識というのは高まっていくわけです。
また、私も民主党の中で堀利和参議院議員という視覚障害の方と一緒に仕事をさせてもらう中で、非常に勉強させてもらっています。だから、やはりそういう、学校の中に、障害のある方がどんどん一緒に学べるように、そのための付き添いや人的援助をお願いしたいと思います。
次の質問に移らせていただきますが、正直言ってこれはちょっと質問しづらいことなんですが、きょう午前中の参考人質疑のときに、パソコンを使ってそこで筆記をされていまして、それもこの厚生労働委員会始まって以来のことですばらしいことだと思うんですが、そのことに関して、きょうも聴覚障害の方が傍聴にお越しくださっております。要約筆記をしていただいているわけなんですけれども、要約筆記というか、そのときにパソコンを持ち込んでやりたいということをお願いされたそうなんですけれども、やはり音がするとうるさいということで、参考人の方々のはよかったのですけれども、傍聴席はだめだったということなんですね。
皮肉にも、まさにそういうバリアをなくそうという議論をしている厚生委員会のこの場ででもパソコンはだめだというのは、何か非常に残念な気がいたしまして、例えば、財務委員会はだめだけれども、厚生労働委員会は率先して、傍聴席にそういう聴覚障害の方が来られるときには認めますよというようなことや、もし音がうるさいのであれば上にカバーをかけるとか、周りの迷惑にならない、それこそ音がしないパソコンの開発なんてすぐできると思うのですよね。
そういうことも含めて検討していくことが必要かと思うのですけれども、このあたり前向きに、今後、傍聴席への聴覚障害の方へのパソコンの持ち込みも考えていただきたいのですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○坂口国務大臣 それはもう山井さんのおっしゃるとおり、私もそう思います。
○山井委員 ありがとうございます。
今までの前例とかいろいろあって本当に難しいかもしれませんが、一歩一歩、この厚生労働委員会が率先して取り組んでいくということで変えていっていただきたいと思います。
そして、次になりますが、今回のような欠格条項の見直しというのは非常に重要なことだと思うのですが、根本的には、世の中には差別がまだまだいっぱい残っているわけです。このようなことに関して、民主党も昨年以来、政策の中で、日本版ADA法、障害者の権利法ということを訴えておりますし、鳩山代表もぜひともそれを推進していきたいということを言っております。また、公明党さんも二週間前ぐらいに、日本版ADA法を制定しますということをおっしゃっておられます。
やはり、今回の法案も大事ですけれども、行く行くは日本版ADA法、障害者の権利法を制定していくということが必要だと思いますが、このことに関して大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
○坂口国務大臣 前回と申しますか、参議院でも同じような御質問をいただいたように記憶をいたしております。
方向性としましては、私も、そういう方向性に向かっていかなければならないというふうに思っておりますが、アメリカの法律のように、それがもし不可能で、不可能と申しますか、それが実現されなかった場合にはすぐに裁判でというようなことは、余り日本の文化としてはなじみにくい面もあるのではないかという気もいたします。ただし、日本の中におきましても、障害者の皆さん方が、いかなる分野であれ、それが職業であれ普通の生活であれ、健常者と同じように生活をしていただけるようにしていくというのが大前提でございますから、その方向に向かっていかなければならないことだけは間違いがないというふうに思っております。
アメリカと同じようなものがいいかどうかは少し検討をさせていただきたいというふうに思っておりますが、方向性としては私も、そういう方向性で進まなければなりませんし、今回のこの法律もその一環であるというふうに思っている次第でございます。
○山井委員 ありがとうございます。
今ちょっと、不自由があればすぐ裁判というものはいかがなものかという大臣の答弁がありましたが、そういうお気持ちもわかりますが、同時に、やはり今は多くの障害者の方々が、権利を侵害されても、差別をされても泣き寝入りをされているという部分が正直言ってあるわけです。
だから、そういう意味では、私は、裁判を乱発する、訴訟を乱発するというのは、もちろんそういう社会は健全ではないと思いますが、やはり本当に深刻な差
別、人権侵害、そういうことに関してはきっちりと訴訟ができる、そのための権利法的なものというのは、アメリカと同じものがいいとは思いませんが、日本にも、その方向性でやはり議論すべきではないかと思います。
次に移らせていただきますが、先ほどの三井議員の質問にもありましたが、今後、政省令の中で基準や細部について議論していくことになると思うのですが、その中では、障害当事者の意見の反映が必要です。そういう意味では、先ほどの三井議員の質問でも多少触れておられましたが、障害者の当事者が加わった検討委員会の設置というものをしていくべきではないでしょうか。特に、午前中に参考人として来ておられたような医師の藤田さんや医学部学生の熊谷さんのように、実際、そういう障害を持ちながらもその分野で学び、あるいは仕事をされているような当事者の方々を入れることが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○桝屋副大臣 今回の法律案の施行に伴いまして、具体的に政省令の内容でありますとか、あるいは委員からは見直しのお話までいただいているわけでありますが、いずれにしても、これからの運営に当たっては、委員御指摘のように、しっかりと当事者の方々の御意見も幅広く伺わせていただく必要があるだろうというふうに思っております。
もちろん、今回のこの法律案をつくるに当たりましても、パブリックコメントを初め、障害者団体など各種の関係団体から個別にヒアリングを実施するなど、幅広く意見もお聞きしてきたところでございますけれども、これからに向かっても努力を続けていきたい、このように思っております。
○山井委員 今まさにパブリックコメントという言葉もありまして、パブリックコメントも確かに必要だと思います。ただし、当事者の団体の方々からは、パブリックコメントでいろいろ意見を出させてもらったけれども、残念ながらほとんどそれが取り入れられていなかったというような御指摘もいただいております。当然、パブリックコメントというのは、聞ける面は聞きますというふうな弱いものですよね。そういう意味では、そういう弱いものよりも、きっちりその検討委員会の中に
当事者が入る、やはり全然違いますから、そういうことを何としてもしていただきたいと思います。
次に、色覚問題、色覚異常に対する差別の問題について御質問させていただきたいと思います。
といいますのが、私も今、民主党の中で、中野寛成代議士座長のもと、色覚問題ワーキングチームというのをつくりまして、私、事務局長をしておるわけです。実際、男性の場合は二十人に一人、そして女性は二百五十人に一人、全国で四百万人が色弱などの障害を持っておられるわけなんです。
これに関して、例えば教員の採用がどうなっているのか。朝日新聞の二〇〇〇年の十二月十二日の記事によると、二十の自治体で教員採用に関して色覚検査を行っているというようなことも報道されているわけなんですけれども、このような点、文部科学省さん、いかがでしょうか。
○田中政府参考人 色覚異常を持つ教員の採用についてのお尋ねでございますけれども、かつて、多くの都道府県、政令指定都市の教育委員会におきましては、色覚異常である場合には教員の採用選考の受験資格が与えられていなかったというような状況であったわけでございますけれども、文部科学省におきましても、国会の御指導も得ながら、色覚異常があることのみをもって教員の道が閉ざされることのないように指導を行ってきたところでございまして、現在では、すべての都道府県、指定都市で、色覚異常が欠格要件からは外されておるところでございます。
なお、ただいま御指摘いただきましたように、現在、幾つかの教育委員会では教員採用選考に当たりまして色覚検査を行っておりまして、美術や理科の教員の採用選考における参考としているところもあるやに聞いておるところでございますが、正確な詳細につきましては把握をしておらないところでございます。
○山井委員 今御答弁ありましたように、幾つかの委員会ではそういう検査をして採用の参考にしている、裏返せば、ほかの教育委員会ではやっていないということなんですね。そうしたら、色覚異常の方がたまたま運の悪い都道府県に住んでいたら教員にはなれなかった、ほかの都道府県だったらなれたというようなことは、正直言って、国の中で差があってはならないと私はこういうことに関しては思います。
そういう意味では、全国一律そういうふうな差別をなくすようにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○田中政府参考人 教員採用選考の際に色覚検査を含みます健康診断を行いますことにつきましては、その応募者の適性と能力を判断する上で必要のない事項まで把握する可能性があるのではないか、その結果、就職差別につながるおそれがあるのではないかということから、文部科学省におきましても、各教育委員会に対しまして、健康診断を実施する場合には、採用予定の職種ごとにどの程度の能力や身体的条件等が必要なのかといった、健康診断が応募者の適性と能力を判断する上で真に必要かどうかを慎重に御検討いただいて公正な採用選考をするよう指導してきてお
るところでございます。
いずれにいたしましても、文部科学省といたしましては、色覚異常があることのみをもって不合理な取り扱いがなされることのないように、引き続き指導してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○山井委員 よろしくお願いいたします。
こういう色覚異常という問題、本当に表に出ない問題ですけれども深刻な就職差別などもありまして、それこそ中学生、高校生の人たちが悩んでおられます。実際、私の友人も、この問題で結局教師になるのを断念したという友人がおります。
最後になりますが、私、この正月、ヘレン・ケラーの伝記を読んでおりまして、目が不自由、耳が不自由、口が不自由ながらも、障害者福祉の母として世界的に有名な方であります。やはり、こういう方がおられるおかげで、人類の希望の光になっていると思います。そういう意味では、本当に豊かな社会とはどんな社会かということを考えたときに、ある学者の先生は、車いすの方が自立で何キロその国の都市部を歩行できるかがその国の本当の豊かさの物差しになるということをおっしゃっておられます。
私、今回の法案の議論をさせてもらって感じますのは、やはり社会の中でどれだけ障害のある方々がいろいろな仕事について働いておられるか、それが、日本という国が、お金や物だけじゃなくて、本当に豊かな社会になるかどうかの大きな物差しだと思います。そのための大きな第一歩がこの法案であると思います。
そういう意味では、この法案ができたけれども、実際、社会参加が阻まれたということではならないと思います。聴覚障害のお医者さん、あるいは視覚障害の薬剤師さんとか、もういろいろな障害のある方々がいろいろな分野に勤めていく、それこそが、障害のある方々にとっても一般の方々にとっても住みやすい世の中になっていくと思います。
そのような思いを私は持っておりますが、最後に大臣に、そのような障害者の方々の社会参加を推進していく上での御決意をお聞かせ願えればと思います。
○坂口国務大臣 やはり、この法律をつくります以上、この法律ができたので大変世の中が変わった、障害者の皆さん方の生き方が変わった、障害者の皆さん方の生き方だけではなくて社会全体の行き方がそれで変わった、そういうふうに言われるようにしなければならないというふうに思います。
したがいまして、ただこれをつくるだけではなくて、この実行をどう進めていくか。実行していくためにはいろいろのことがあるでしょう。先ほどのお話のよう
に、ノートテークをどうするかといった問題もあるというふうに思いますが、そうした人をどうつくり出していくかということもあります。そういう人を入学させる
以上、その人に付き添うヘルパーの人がやはり必要になってくるんだろうというふうに思いますが、そうしたことも含めてこれから検討をしていかなければならないと思っている次第でございます。
○山井委員 前向きな答弁、ありがとうございます。まさに今大臣がおっしゃいましたように、ボランティアとか助け合いでできる部分はもちろんやっていく、でも、人的なサポートは、やはり公的な責任、公的な財源でつけねばならないところはきっちりつけていかないと、当事者任せではなかなか進んでいかないと思っております。
この問題は坂口大臣がハンセン病の英断を下されたことともつながってくるのですが、残念ながら、二十世紀の日本の福祉というのは、障害のある方を町外れに隔離しようというような方法だったと思います。しかし、二十一世紀は、そういう方々に社会の真ん中に出てきていただいてどんどん活躍してもらおう。そういう障害のある方が社会の中で活躍する姿を見て、またそういう方々を社会全体で、ボランティアでありあるいは行政であり、助け合っていく姿を子供たちに見せていくことを通じて、子供たちも、ああ人間の社会というのはお互い助け合うものなんだなあと、そういう気風が広がってくれば、いじめの問題などもどんどんなくなってきて、本当に人間らしい国に日本が二十一世紀なっていけると思います。そのようなリーダーシップを、坂口厚生大臣にこれからもとっていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
○谷畑委員長代理 次に、水島広子君。
○水島委員 民主党の水島広子でございます。
私は、この欠格事由の適正化について、主に精神障害について質問をさせていただきます。
精神の機能の障害により相対的欠格事由に該当し得る者に係る判断方法として、診断書を作成した医師から確認した障害の程度、内容を踏まえつつ、厚生労働省の担当者及び厚生労働省が選任した医師等の専門家が個別に判断するということになっているわけです。
まず、この精神障害の場合に、この判断を行うためのガイドラインというものはつくられるのでしょうか。どの程度の症状軽快がどの程度の期間持続すればよいかというような基準はあるのでしょうか。
○桝屋副大臣 これは参議院でも議論になったところでございますが、精神障害者の前に、今回の法律案の内容ですが、障害者の免許取得の可否、これ全体でそのガイドラインをつくっていくということがなかなか困難であるということはずっと議論があったところでありますが、その中でも、きょう委員がテーマとして挙げておられる精神障害者の問題はなお一層難しいテーマでございまして、それは恐らく委員も十分御承知の上、今も御質問がありましたけれども、お尋ねだろうと思います。
精神障害者の場合は、障害の状態もさまざまでありますし、さらには、障害が業務遂行に与える影響というものはまさに多様な形が考えられるわけでありまして、さらに複雑な内容もあるだろうというふうに思うわけであります。そういう意味では、今お尋ねがありました具体的な判断基準を定めて取り組んでいくということは困難であるというふうに思っております。委員からお話がありましたように、個々の障害者の業務遂行能力に応じて資格取得の可否を判断するという、まさに今回の法律の趣旨に照らして個々に判断をしていくことが必要になるだろう。
ただ、中長期的な課題としては、そうした判断を積み重ねながら、ガイドラインということは検討しなければならぬというふうに考えておるところでございます。
○水島委員 法律を考えるわけですので、当然諸外国の例も参考にされていると思うんですけれども、諸外国ではこのあたりのガイドラインというのはどのようになっておりますでしょうか。
○桝屋副大臣 これも、私もきょうお尋ねをいただくということでいろいろと調べさせたんですけれども、諸外国の具体的な判断基準については、そうした基準は今のところ我々も目にしていないわけでありまして、また委員の方、いい情報がありましたら御教示をいただきたいと思います。
○水島委員 うまい答弁というか、まだ目にしていないということで、実際にどの程度調べられて、どれらの国について調べてどこにはなかったという、ぜひ本当は事実をお答えいただきたかったんですが、きのう事前通告させていただいた段階で、どうも調べていらっしゃらなかったような様子を伺っております。日本はただでさえ精神障害に関する取り組みが諸外国よりもおくれているのですから、法律をつくるときぐらいしっかりと諸外国のことを勉強していただいて、参考にしていただきたいと思います。ぜひ早急に、どういう扱いになっているのかを調べていただきたいと思います。
また、ガイドラインをつくらないのでしたら、なおのこと、その判断の正確さ、透明性というものが問われると思います。先ほどからその判断のときの方法について同僚議員からも質問があったわけでございますけれども、私は、この厚生労働省が選任する専門家という立場の方についてお伺いしたいんですが、これはどのような基準で選任するのでしょうか。
○伊藤政府参考人 専門家の選定につきましては、まず、各資格に係る専門家、医師であれば医師の専門家、それから二番目といたしまして、それぞれの障害に精通した学識経験者、例えば聴覚障害でありますと聴覚障害の専門家、それから三番目といたしまして、各資格の養成に係る専門家など、こういう三つの観点からあらかじめ専門の方をプールしておきまして、申請者の障害の状態及び申請した資格に応じて、その中から適当な者に委嘱をする方向で検討を進めているところでございます。
人数につきましては、現時点におきましてまだ具体的な結論を得ているわけではございませんが、より客観的かつ公平な判断ができるよう、複数名に委嘱することが適当ではないかと考えております。
○水島委員 今の中で、学識経験者というところが一番注意を要するところだと思うんですけれども、学識経験者にもいろいろいらっしゃいます。本当にずっと大学の一室にこもって御自身の研究活動にしか興味のない方もいらっしゃれば、現場に出て本当に障害者の社会復帰に熱心に取り組んでおられる方もいらっしゃいます。当然、このような内容の判断をするわけですから、その学識経験者という方は障害者の社会復帰に多大な意欲と現場での豊富な経験を持つ方が選ばれるべきだと思いますけれども、そのあたりの基準はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
○伊藤政府参考人 今回の制度改正は、障害者の方に専門職種の取得の道をできるだけ拡大し、そして社会参加を広げていくという観点から行うものでございまして、具体的な専門家の選定に当たりましては、今委員御指摘の点を踏まえて、そういう今回の制度改正の趣旨を十分踏まえて具体的な基準を考えていきたいと思っております。
○水島委員 くれぐれも、名誉職のように、立派な肩書を持った方だからすぐれた学識経験者だろうというような従来型の判断ではなく、なぜその人が数多い学識経験者の中でこの判断のために選ばれたのかという、それをきちんと公開していく透明性もとても重要だと私は思います。ぜひ私たち多くの者が納得できるような方を選んでいただいて、本当に少しでも障害者の社会参加に道を開くような判断をしてくださるような学識経験者を選んでいただきたいと思います。実際にどのような方が選ばれるのか、私も一人の精神科医として大変楽しみにお待ち申し上げたいと思っております。
さて、今回の法改正で、免許の申請者が障害者に係る相対的欠格事由に該当すると認めて免許を与えないこととするときには、あらかじめ意見聴取をするという手続を定めているわけですけれども、この御本人の意見次第では決定が覆されるということはあり得るのでしょうか。
○伊藤政府参考人 まず、申請をしていただきましたときに、今申し上げた専門家の方にそれぞれ意見を聞くということを行うわけでございます。そして、免許を与えないこととした場合の事前の意見聴取の際には、申請者が臨床実習を履修した際にどのような補助的手段を用いて履修したか、それから、当該補助手段を用いた申請者がどの程度の知識、技能をどのように修得したかなどにつきまして確認することを考えているわけでございます。そしてまた、その際に、担当職員から、免許を与えないことと判断した理由について説明を行うこととしております。
また、最終的に免許を与えないこととする場合には、意見聴取の結果を踏まえて、どのような点で業務遂行が困難であると判断したのかなどできるだけ具体的に理由を示す、そういう判断の根拠を具体的に御説明するという形で対応していきたいと考えております。
○水島委員 私が質問しましたのは、だめだということを納得するように説明してくれるのかという質問ではなくて、その質問は後でしたいんですけれども、意見聴取のときの御本人の意見次第で免許を与えないという決定が覆される余地があるのかどうかというところをお伺いしているんですが。
○伊藤政府参考人 もちろん、手続の中では御本人からの意見聴取も必ずやる手順になっておりますし、あわせて、専門家の判断、そして総合的に最終的に厚生労働大臣が判断をするということでございまして、本人からの意見聴取だけで最終的な判断を下すわけではございません。
○水島委員 もう一度伺いますけれども、時間が限られているので次はイエスかノーかで明確にお答えいただきたいんですが、何も御本人の意見だけで全部決めろと聞いているわけではなくて、意見聴取の手続があるからといってそれが結果に反映されないんだったら何の意味もないわけですから、今後のデータのために聞くとかそんなことだったら御本人にとって意見を言う意味はないわけですから、ちゃんとそこで御本人が意見を言うということが結果に反映される、その余地はあるんでしょうかということを、イエスかノーかでお答えください。
○伊藤政府参考人 これは、イエス、ノーという形でお答えするのは非常に難しいわけでございますが、特に精神障害という場面を想定してみますと、やはり御本人からの意見だけで厚生労働大臣が最終的な判断をするということではなくて、やはり第三者的な専門家の御意見を参考にしながら最終的に総合的な判断をするという形になろうかと思います。
○水島委員 何だかここまで来ますと国語の問題のような気がしてきますけれども、何も御本人の意見だけでということを言っているわけじゃないというのは先ほどから繰り返し申し上げているんです。では本当に、御本人が意見を、きのう事前に伺ったときには覆されるというような事前情報を伺っておりますけれども、本当に覆されないんだったら、そもそも意見聴取の手続なんというのを法文上何のために書くんだということになるわけです。
御本人の意見をそこで申し立てる意義というのは、その上でもちろん専門家の判断があって、最終的に大臣の判断があるということで、それは全然構わないんですけれども、ちゃんとそこで御本人の意見というのは反映されるわけですよね。
○伊藤政府参考人 障害を持っておられる方が免許を申請される場合に、最初から拒否をするという前提で私どもは受け取るわけではございません。したがいまして、免許交付の申請書を受理するときには、免許を交付する場合もあるし免許を与えない場合もあるということでございますから、申請の時点で拒否をするということで決めつけられれば、それは変わることもあり得るということになるわけでございますが、あくまでも申請の時点では、免許交付の可否について、本人からの意見聴取、それから第三者的な専門家の判断、そういうものを総合して厚生労働大臣が判断するということでございます。
○水島委員 まさかこんなところでこんなにひっかかると思っておりませんで、なぜここの質問にさらりと答えていただけないのかというところで、何か私の中にも不信感が芽生えてまいりましたけれども。当然いろいろな方たちの総合的な判断で最終的な決定がされるのは、それは当たり前のことなわけですけれども、そこにわざわざ本人の意見聴取をするというのを高々とうたっているわけですから、当然本人にも意見を言う権利があるということを言いたい法案なんじゃないんでしょうか。
そしてまた今、特に精神障害の方の場合はとおっしゃいましたけれども、精神障害の方でも、一番自分の病気と長くつき合っていて、よくわかっている。だから、こういうふうに働いていけばストレスが過剰にかからなくて大丈夫なんだとか、そういういろいろ一番わかっているのは自分自身だということも当然あるわけですから、当然そういう御本人の意見を聞いた上で、どうも従来の判断よりもこの御本人の場合はケースが違うようだというふうに判断が変わるのも当たり前なんじゃないでしょうか。ちょっとそこだけ、もう短時間でお答えください。
○伊藤政府参考人 免許を与えない旨決定された後に不服申し立てがあった場合に、御本人からの意見聴取をしてその判断が変わることはあり得ると思います。
○水島委員 違いますね。違いますねというか、私が法案を御説明するのは立場が違うんですけれども、今回の内容では、仮決定があったところで意見聴取が行われて、その後に最終決定が出るということで、不服申し立てはその後のことですから、きちんと理解されていらっしゃらないんじゃないでしょうか。
ちょっとそういうことですとここで議論していても本当に時間がむだになりますので、先に進ませていただきたいんですけれども、今不服申し立てのプロセスはどうなっているのかということを伺いたかったんですが、今のお答えの中から、そういう不服申し立てということができるということでございます。
ただ、一般の国民感情として考えますと、一たび厚生労働省が免許を与えないと決定したものに対して不服申し立てを行っても、役所が一度決定したものが覆されるということは余り一般的に期待できないと思います。そんなにしょっちゅうころころ決定が変わっているようでしたら、またそれは役所としての信頼性の問題にもなってくるんじゃないかとも思いますけれども。
この不服申し立てについては、私はむしろ第三者機関を設置すべきではないかと思いますし、実際そのような意見を出されている方もいらっしゃいますけれども、この第三者機関の設置の必要性について、大臣のお考えはいかがでしょうか。副大臣でも結構です。
○桝屋副大臣 済みません。先ほどからの議論をしっかり横で聞いておりまして、のめり込んでおりました。
今のお尋ねと若干違うかもしれませんが、先ほどから委員が議論されているポイントは、相対的欠格事由に該当する、その上で免許を与えないとする決定が当然あり得るわけで、その場合の事例を今るる言われているわけですよね。その上で当然本人の意見聴取ということもあるということでありまして、当然、本人の意見聴取の結果というのは、聞いた意見を十分踏まえましてさらに専門家で検討するということでありますから、その意見聴取をした内容というのは、私は結果に大きな影響を与えるものだというふうに思っております。
その上で、恐らく今委員お尋ねのことは、不服申し立ての際の第三者機関のお話かと思います。
今回、相対的欠格事由に該当するから免許を与えないという場合の取り扱いでありまして、この場合はまさに、委員はもう御承知のように、二段階において専門的な方の御意見を伺うということにしているわけであります。一点目が、申請があった段階で、相対的な欠格事由になるかどうかということでまずは一点検討があるわけであります。それからさらに、今の意見聴取も踏まえて最終的に免許について拒否をするというような場合に、再度、免許を与えないことが適当と判断をされた時点で、さらに重ねて外部の専門家グループによる審査を行うということになっているわけでありますから、それでも最終的に免許を与えない決定がおりた段階で御本人が異議申し立てをされる、不服申し立てをされる、そのときにさらに第三者機関というのはあえて必要ないのではないかというふうに考えている次第であります。それとほぼ同じ仕組みが用意されているというふうに私は考えております。
○水島委員 今のお話、説得力があるようでありながら、何かちょっと危険だなという感じがするんですが、そこまでやって決めるんだから間違いようがないということをおっしゃりたいのかな、そんな感じもいたしまして、それでもまだ不服があった場合には、もうこれは司法の現場で争うしかないということになるんでしょうか。
○桝屋副大臣 それでもという話がありましたが、それでも不服申し立ての最後の手段は残されているわけですね。第一段階、第二段階、御本人の状況も十分調査をし、御本人の意見も聞いた上で二つの段階で専門家の意見を聞く。そして、最終的に免許を与えないという決定が出た段階で、御本人さんに不服があれば不服申し立てができるということになっているわけで、その時点で再度専門家の意見を聞いて変わるようなものだったらどうなんだろうかということも感じるわけでありますが、もちろん、委員がおっしゃった司法に訴えるということは、十分できることだと思っております。
○水島委員 そういうことでしたら、ちょっと今後この法律が成立しました場合にどのように運用されるかを拝見させていただきまして、やはりこれは信頼できる第三者機関をつくらないとまずいんじゃないかということになってまいりましたときには、ぜひ御協力いただきまして、そのような体制をつくっていただきたい、そのための法改正をしていただきたいと思います。
さて、精神障害の場合、社会的偏見を恐れて障害を隠して医師免許を取得する人もいます。周囲もそれに気づきながら見て見ぬふりをせざるを得ないというケースも、私自身実際に目にしてまいりました。
本来は、必要な治療を受けて周囲からのサポートを受けながら自分の能力を発揮していくべきだと思いますし、病気の状態が悪いときにはそれをオープンにしてきちんと休むということが必要だと思います。今の日本では、精神障害に対する偏見が強いため、かえって業務の安全が損なわれていると言わざるを得ないのではないかと思います。
精神障害者への偏見の強さを改めて見せつけられたのが、今回の大阪池田小学校の事件でございます。私も小さな子を持つ親といたしまして、今回の事件には筆舌に尽くしがたい思いを抱いておりますけれども、でも、きょうここであえて取り上げたいのは、事件以降の小泉首相の言動でございます。
事件の翌日、まだ容疑者の精神鑑定もされていない、事件の詳細もわからない段階で、小泉首相は、精神的に問題がある人が逮捕されても、また社会に戻ってああいうひどい事件を起こすことがかなり出てきていると述べ、刑法見直しを検討するよう山崎幹事長に指示されています。これは、暗に今回の犯行が精神障害によるものだと決めつけていることを意味すると思います。
ただでさえ今回の事件によって多くの罪のない精神科の患者さんたちが、あの人も精神科に通っているから何かしでかすに違いないという目で見られて苦しんでいるのです。障害に対する理解を得ようと苦労し、地域に溶け込んで何とか暮らしていこうとしている人たちに新たな苦しみを植えつけているわけです。私のもとにも、患者さんたちからの声が寄せられております。小泉首相の言動の陰で、どれだけ多くの精神障害者の方たちが苦しんでいるか、御存じなのでしょうか。先日のハンセン病控訴断念のときとは打って変わったその姿に、一国の首相としての余りの人権感覚のなさに私は唖然とさせられております。
まず、この小泉首相の言動について、厚生労働大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 今回の大阪の事件は、筆舌に尽くしがたい、本当に大変お気の毒な事件であって、私も小さな子供が、私の場合は孫でございますけれども、いるものですから、本当にびっくりしたわけでございます。
やはり今回の場合に、あの犯人の人がいわゆる精神障害で起こしたかどうかは、これはわかりません。これはもう少し捜査の結果を待たなければなりませんし、やはり専門家の判断が必要だろうというふうに私も思っております。
小泉総理がおっしゃったのは、それはいわゆる一般論として、重大な犯罪を犯す精神障害者の場合にはどうするかということをおっしゃったんだろうと思うのですが、時が時だけに非常に誤解を生むことになったかもしれません。しかし、その問題は一般論でございまして、大阪の場合におきましては、委員が述べられましたように、精神障害によって起こったものかどうかということは、これはすぐには判断のできない問題だと私も思っております。
○水島委員 坂口大臣としてはそのように弁護してさしあげるしかないのかもしれないですけれども、ただ、これは本当に、日本に一番重大な影響を与える政治家の言動といたしまして、持つ意味は非常に大きいと思います。幾ら御本人が一般論のつもりでやっているとしても、あのように本当に日本じゅうを衝撃に陥れた事件についてのコメントを求められて、それについてこういうことをおっしゃっている。それも、その当日だか翌日だか、本当にその衝撃がさめやらないときにこういうことをおっしゃる。これは本当に、何か重大な事件が起こったときにばあっと差別的なデマが流れるのと構造はほとんど同じなんじゃないかなと私は思っております。
本当に、日本じゅうがどういう状態に陥っているときかということをきちんと冷静に判断した上でみずからの言動を考えられるというのが一国の首相としての責任ある姿だと私は思いますし、御本人が幾ら一般論であると言ったとしても、そういう日にそういうコメントをするということの責任の重さというものを本当に痛感していただきたいと私は思っています。そして、それが理解できないような方であれば本当に首相としてふさわしくない、私はそのように思います。
もちろん私たちも、司法と精神治療の連携が現在のままでよいとは一般論として思っておりません。私自身も精神科医として、刑法と精神保健福祉法という性質が全く異なる法律が中途半端に結びつけられた現行制度の不備を痛感してきた立場です。私たちも、民主党内に司法と精神医療の連携を考えるプロジェクトチームをつくって、既に検討を始めております。
新聞報道によりますと、大臣は、重大な事件を起こした精神障害者への対応をめぐり、退院した後、在宅の患者から目を離さず、さまざまな問題の相談に乗ることができる制度が必要だと、退院後の支援体制の見直しを重視する考えを示されたそうです。また昨日は、司法精神病院の設立についても言及されているようでございます。大臣は政治的な判断をする時期に来ているとおっしゃっているようですけれども、具体的にどのような体制を考えていらっしゃるのでしょうか。
○坂口国務大臣 これは、安全と人権と、両方からの大変難しい問題を抱えているというふうに思っております。
そして、一般論として言えば、重大な犯罪を犯す障害者もあることは事実でございます。その場合に、その人たちを一体どのようにしていくのか、同じ一精神科の患者として扱っていくだけで果たしていいのかということを考えました場合に、そういう重大な犯罪を犯す人というのは再びそれを繰り返すということもございますので、そうした意味で私は、それは一握りの人ではありますけれども、その人に対しましては、医療と、そして生活におけるさまざまな教育等も行いながら、そして退院をいたしましたときには相談に乗る人がやはり必要になってくるのではないか。
そうした意味で、特別な病院をつくるというところまで私は思っておりませんけれども、しかし、病院の中で、一病棟あるいは特定の病室等でそれ相応の治療はやはり受けていただかなければならないのではないか。
一般の精神科の患者さんと同じようにその治療だけを受ける、そして治ればどんな重大な犯罪を犯した人でも同じように社会に帰っていくというだけでいいのかということを私は申し上げているわけでありまして、そこには、一般社会の皆さん方の安全というものもやはり大事でございますから、目を離さない何らかの仕組みというものをやはりそこにつくっていかないといけないのではないかということを私は今言っているところでございます。
○水島委員 一般に、この社会の安全の問題と人権の問題というのは非常に相反するところがあって難しいなどと報道で語られたりしておりますけれども、私は、決してその二つが矛盾するものだとは思っておりません。患者さんにしましても、正しい治療を継続して安心して受けられる体制の中できちんと社会に適応していくということが何よりも幸せなことであるわけですし、それによって社会の安全もまた守られていくという姿が最もふさわしいと思っております。
今の大臣の御見解を聞かせていただきますと、私が考えているようなことと恐らく共通する部分もかなりございますので、ぜひそこは、正しい人権感覚を持って、くれぐれも保安処分制度などというような人権に逆行するような制度ではない形で、慎重かつきちんとした勇気を持った御検討をいただきたいと思っております。
また、司法と精神医療の連携という観点のほかに、何といっても、現在の日本における精神医療の貧困さがすべての背景にあると思います。ただでさえ医療密度の低い日本におきまして、いわゆる精神科特例によって精神科は最も医療密度が低く、在院日数の異常な長さにつながっています。重大な事件を起こした精神障害者の問題を語るのであれば、精神医療全体の質を高めるということは避けては通れない課題です。行政がリーダーシップを発揮して精神科病床を減らすことが必要です。
急性期の治療にスタッフを手厚く配置し、短期間で退院できるようにするとともに、退院後の住まいの確保、またその後の支援体制の確保などによりまして再発を防ぐといった体制をつくることが重要だということを私もかねてから主張してまいりました。また、病床をスムーズに減らすためには診療単価の引き上げも検討すべきであると思っております。
この際、腰を据えてこの精神医療の質を上げるということに本格的に取り組むべきだと思いますけれども、最後に、その点についての大臣のお考えあるいは決意の御表明をお伺いいたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
○坂口国務大臣 確かに、精神医療の質を高めなければならない、もうそのとおりだろうというふうに思っております。
委員は、重大な犯罪を犯す障害者が出るというのは、それは精神医療が未熟だから起こってくるのであって、そこを充実すればそういうことも起こらないのだというふうにおっしゃるのではないかというふうに聞かせていただきましたが、私もある程度、それはそのとおりではないかというふうに思っております。
ただ、それでもなおかつ重大な犯罪を犯すような人たちもいるものですから、そこはどうするかという問題は別途あるというふうに思いますが、この精神科の内容につきましては、過去の精神科医療というものとは随分内容も変わってまいりましたし、もっともっとやはり開かれた精神医療に一般的にはしていかなければならないというふうに思っておりますので、そこは質的向上が第一、人的配置もしかりでございまして、その点を踏まえながら、これから考えていかなければならないと思っている次第でございます。
○水島委員 どうもありがとうございました。
○谷畑委員長代理 この際、暫時休憩いたします。
午後二時四十一分休憩
――――◇―――――
午後三時五十八分開議
○鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。佐藤公治君。
○佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。お疲れのことかと思いますが、三十分間おつき合いいただきたくお願い申し上げます。
まず最初に大臣にちょっとお尋ねをしたいんですけれども、また、確認というよりも基本的なことで申しわけございませんが、やはり今の全体の日本のこの社会において、また国において、基本的な大臣の障害者の皆さん方に対する考え方というのをもう一度改めて簡単簡潔にお聞きをしたいことが一つと、この改正案が出るということは、大変僕らにとっても喜ばしいことであり、前向きな、本当に先進国としての必要最低条件、また環境整備というふうにも思います。そういう改正案なんですけれども、考えようによっては、先進国の中でかなりおくれた形でこの改正案がされている、こういう法律の議論がされている、ここまで来たのかなという気がいたします。
そういうことからしますと、大臣が、遅くなっていない、これは十分早いと言われるのであれば、もうそれはそれでいたし方ないことですが、もしも、この改正案
がやはり多少おくれている、遅くなって今回こういう形ででき上がってきているということをお思いになられるのでしたらば、なぜおくれてしまったのか、その辺
を、大臣のお思いになることを、検証というかそこら辺を反省材料とし、お考えをお聞かせ願えればありがたいかと思いますが、いかがでしょうか。
○坂口国務大臣 障害者の問題につきましては、今までから、町づくりでありますとか、あるいはまたいろいろの建物の問題でありますとか、障害者の皆さん方も健常者の皆さんと同じように生活ができるようにという、いわゆる生活の場を改革していこうというのが日本の中では先行をしてまいりました。そして、これもまだ途上でございまして、全部でき上がったわけでもございません。
しかし、地方の都市に行きましても、バリアフリーという考え方がかなり行き届いてまいりまして、いわゆるエレベーターの問題でございますとか、あるいはまた歩道の問題でございますとか、建物の構造でございますとか、そうしたところはかなり改善もされてきたというふうに思っておりますが、しかし、肝心かなめの人間社会の仕組み、そちらの方の改革が非常におくれてまいりました。
今まで、障害者の皆さん方がおつきになります職業というのは、例えば目の御不自由な皆さんでありましたら、はり、きゅう、あんま、そうした判で押したようなお仕事しかありませんでした。性格的には必ずしもそうしたお仕事に不向きな皆さん方もおみえになるわけでございますから、私は、そうした狭い範囲の中で職業の選択をしていただくというのは大変気の毒だというふうに思ってまいりました一人でございます。
そうした中で、今回、さまざまな分野で活躍をしていただけるように、試験をお受けになったりあるいはまた資格をお取りになりますときの欠格条項、これを直していこう、こういうことになったわけでございます。大変これは喜ばしいことだというふうに思いますし、その一歩がここに踏み出されたというふうに思っている次第でございます。
ただ、委員も御指摘になりますように、日本がそれでは諸外国に先駆けてここまで来ることができたかといえば、それは、残念ではございますけれども、先進諸国の中で決して早かった方ではないということだけは事実だというふうに思います。
その理由が何であったのか、なぜおくれたのかということにつきましては、理由はいろいろあるだろうというふうに思っておりますが、やはり日本の社会の中で全体に、障害者の皆さん方の人権というものを一般の皆さん方と同じように考えていく、そういう基本的な理念と申しますか、そうしたところに欠如があったのではないか、私はそう考えております。
全然なかったわけではございません。それなりに一生懸命やってきた分野もございますけれども、その点が十分だったかといえば、私は、十分でなかったのではないか。やはり、これからもっともっと障害者の皆さん方に多くの分野に進出をしていただけるような社会にしていかなければならない、急激に最近その考え方が浸透してまいったというふうに思っております。急激に浸透してまいりましたこの考え方を、ぜひこの皆さんの熱い思いの間にさらにこれを進めていかなければならないとも思っている次第でございます。
○佐藤(公)委員 まさに大臣がおっしゃられましたように、意識の改革とか障害者の方々に対する認識、教育も含めてですけれども、そういうものがやはり今までまだまだ不十分だった。そういう意識改革が徐々に徐々に大きくなっている、動いているのかなというのが私も思う部分であり、またそういう部分が、おくれてきた理由の大きな根本的な原因にもなっていると思います。
この件に関してはまた後で話をさせていただきますが、厚生労働行政含めて、やはりこういった出おくれている部分というのはこれだけに限らず多くのことがあると思いますので、ぜひともそういう広い範囲で、目でやはり大臣も見ていただいて、今、坂口大臣が大臣のうちにできること、わかること、気づくことをどんどん指摘して、そういう部分を早めていただければありがたく、よろしくお願いをいたしたいかと思います。
こちらの改正案の方を私も見させていただき、確かに、本当に今まで障害を持たれている方々に対しての新たなドアが開かれていったということで、喜ばしい部分もございます。ですが、私は、こんなつもりで、これから言うつもりでおつくりになられた、それを整理したとは思いませんが、この法律自体が、絶対的から相対的になって間口が、ドアが大きく開いたことは事実ですが、逆に、相対的になったことによって、今まで取れていた人たちが取れなくなるようなことというのがあり得るかもしれないのかなと。
つまり、法律がひとり歩きをしていった場合に、それを判断する、見る人たちによっては、今までは何の問題もなく取れていた人たちが、やはりそれを見る人たちが、見方によっては、そういうものが取れなくなってくるということもあり得るのかなという気がいたしたのですが、その辺のあたり、いかがでしょうか。
○伊藤政府参考人 今回の法改正は、障害者に係る絶対的欠格事由を相対的欠格事由に改めまして、障害者の業務遂行能力を個別に判断することによりまして免許を取得できる道を広げるものでございます。したがいまして、今回の法改正によりまして、欠格事由の対象が拡大して障害者が不利益をこうむることは全くないというふうに私どもは考えております。
しかし、非常に重要な点は、この法律をどのように運用していくかということでございますので、今後とも、障害者の社会参加を促進する観点から、この法律の具体的な運用に当たっては個別ごとに判断をして、できるだけ参加の機会を拡大していくという観点から常に運用に当たることが重要だというふうに認識をしております。
○佐藤(公)委員 まさにその運用の仕方一つで、いい法律であり、悪い法律にもなりますので、その辺は十分気をつけた上、していただければありがたいかと思います。
もうこの法案に関しては随分参議院でも議論をされておりますが、常に、きょうの委員の間でもお話が出ておりますけれども、教育、大学、やはり養成機関、教育機関のあり方というものが非常にいろいろと議論として出てきているわけでございます。
各諸外国におきますいろいろな状況を見て調べていく。そして、きょうも参考人の中で熊谷先生がおっしゃられましたこと、数あるいろいろな教育機関でやらなきゃいけないことの中でやはり基本的に大事なことは、カウンセリングというか相談窓口というか、リハビリテーションということで熊谷先生おっしゃっていましたけれども、そういうちゃんとした窓口なり、いろいろな意味でのカウンセリングを含めたそういう担当の部分が必要だというふうに感じる部分がありますが、こういうものに対して、教育機関の方として、文部科学の方としましては、そういうことを含めて今これに関しては考えられているんでしょうか。
○清水政府参考人 お答え申し上げます。
教育機関それぞれ、例えば小中高等学校、あるいは障害者を対象とする盲、聾、養護学校等の機関がそれぞれにあるわけでございます。また、高等教育レベルでの大学の受け入れにつきましては、いろいろお尋ねがございましたように、教育上の配慮あるいは学習上の支援ということについて、それぞれの大学においてさまざまな工夫というものはされておるというのが現状でございますが、私どもとしても、その受け入れあるいは支援についてのやはりそういう意味での組織的な体制づくりということが重要であろうというふうに思っております。
今後、大学に対しても、そういう受け入れの体制、そういう意味での組織的な支援体制づくりというものについて指導していきたい、こういうふうに考えております。
○佐藤(公)委員 手すりをつけるとかいろいろなことでの物理的な、障害者の皆さん方が暮らしやすい、勉強しやすい形をとっていくこと、これはある意味で当然といえば当然、見えやすい、わかりやすいことですが、私がずっと今回のこれをいろいろな方々とお話をしていくに際して一番の大もとは、やはり、まさにきょう熊谷先生がおっしゃった、当事者という意識。
その人たちが本当に今後つくり上げていく、また考えていく、またその意見を聞いていく、そういう窓口がきちんと存在をする。また、精神的にもいろいろな苦痛があり、いろいろと問題点があり、悩むことがある。そういうことをきちんと受け入れて、その声を聞き上げて、そして具体的に一緒になって学校をつくっていく。そういう雰囲気と方向性というのがすごく大事なのかなという気がいたします。
まさに、僕らの、本当に何も、何もというか、ちゃんとした健康な体で問題がない人たちが考えるよりも、本当に当事者の人たちが、私の一つの理想として申させていただければ、学校側のそういった窓口と一緒になって、意見交換をしながら、相談しながら、学校を、受け入れ体制のできるような準備、またはそういうものをつくり上げていくということがこれからすごく大事なことだと思います。上から、もしくはある一つの意見だけでぽんぽんとつくるんではなくて、そこに、やはり学校として、入った人たちに対しての、時間がかかるかもしれませんが、そういうものが必要だということが一点。
それともう一点は、きょう参考人の中からもお話がたくさん出ていますし、これはもう言うまでもないかと思いますけれども、財政的なことがかなりあると思います。
国立大学含めて関係者の方々からいろいろとお話を聞きますと、私立ということもございますが、大学もございますが、非常に予算がない、お金がない中でやっているというのが実情だと私も聞いております。そういう意味で、ぜひ、障害者の方々でせっかくこういう門が開かれたのであれば、常にやはりお役所的な発想で、確かに税金である、大事な使われ方をしなきゃいけない、きちんと目的を持って、わかります。わかりますが、やはり相談窓口とかカウンセリング、そういう方々と障害を持たれている方々が話をし、これは早く欲しい、すぐ欲しいというときにそれがつけられる。まあ予算の額にもいろいろとあると思いますけれども。やはりそういうある程度の予備予算というか、潤沢にある程度使えるような多少の予算を、私立もございますけれども各大学機関もしくは教育養成機関に、少しずつでも、今までよりも多くこの目的のために学校側にお金をお渡ししていくという考え方。
やはり、財政。意識の問題、窓口、それをすぐさま実行できる、それには財政が要る。こういう部分の仕組みというものが教育機関には非常に今これから必要なんじゃないか。
これは、お金だけつけてもだめ。相談窓口だけつけても、意見だけを聞いて、実際やるのには一年後、二年後というふうになってしまう。こういう部分だったら、せっかくのこれがまたどんどんおくれていくような気がするんですが、その辺のあたり、審議官、いかがお考えになられるか。もしも予算要求をしたいんであれば、ここで厚生大臣も含めて私どもに予算要求をしていただければありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
○清水政府参考人 お答え申し上げます。
御声援ありがとうございます。
私ども、例えば国立大学ということで申し上げますと、障害者の方々を受け入れる場合に、障害の種類、程度によって、それぞれのさまざまな対応があろうかというふうに思っています。一般的に申し上げますならば、施設設備関係が一つございますし、もう一つは教育上の配慮、特別な配慮に関する予算措置がございます。
そのほかに、私ども国立大学関係の予算というのは、実はかなり、いわゆる校費というような形で、柔軟、弾力的な形をとっております。それとあわせまして、そういう中で費目間の制限は必ずしも、一定の枠組みではありますけれどもかなり柔軟に使えます。それと同時に、各大学の学長には、学長裁量経費ということで、さまざまなそれぞれの大学におけるニーズあるいは戦略というものも含めて柔軟に対応できるような予算措置もしておるところでございます。
いずれにいたしましても、いろいろな仕組みと相まちながら、それぞれの部分でのいろいろな障害者の受け入れに関連いたしまして、そういう予算上の措置についての努力と同時に、柔軟かつ多様に、先生が御指摘になられたような対応ができるための努力ということもしていきたいというふうに考えております。
○佐藤(公)委員 本当に、その学校の中でのいろいろな知恵とアイデアがあると思いますので、学生の間でのボランティア、また、そういうものを一つ考えたり作業することによってそれを単位とするとか、いろいろなやり方があると思います。ぜひとも、いいアイデアを出しながら、本当に足腰のある物のつくり方をしていただきますことを、文部科学省の方にはお願いを申し上げたいと思います。
そして、この法案の中で、私は、きょう委員の中、水島議員がおっしゃったことと相通ずることがあるんですが、私は専門医でもなければそういうものではございませんが、やはり、いろいろと調べていくと、精神障害というものが一つ非常にわかりにくいというか、線引きをしにくい部分が多くあるかと思います。
これは水島委員もおっしゃられましたけれども、私の知り合い関係も含めて、医学部なら医学部にいる間に、自分がやはり精神的にいろいろと持っているけれども、それを隠しながら最後まで卒業していったという方々が何人かいらっしゃるのは事実でございます。
そういう部分で、では今後、これから門が開かれたわけでございますけれども、国立大学、これは文部科学省の方の御担当になるんだと思いますが、特に精神障害的な部分での今の大学の実態というものを把握したもの、調査したものがあり得るかどうか、あればその内容がどんなものかを御説明願えればありがたいと思います。
○清水政府参考人 お答え申し上げます。
大学の医学部、歯学部におきます精神に障害のある方の在学の状況については、私ども把握しておりません。
○佐藤(公)委員 それは、今までどうして、必要がないということでされなかったのか、問題がなかったのか、その辺はいかがでしょうか。
○坂口国務大臣 正式な数字があるかないかは調べていただくとしまして、我々、学生時代に、一クラス約一割ぐらいの人は精神的ないろいろの症状があるというふうによく言われたものでございます。それが多いか少ないかはよくわかりませんけれども。入学しますときにはお互いに全然そういうことはなかったわけでございますが、途中で、一生懸命勉強をしておりますうちに、いろいろの症状を持ったりする人がございました。しかし、立派に立ち直って国家試験も合格し、そして立派に今も働いている方もお見えでございますし、途中でそれがだんだんと悪化をし退学をされた皆さんもお見えでございます。
ですから、そういうことがございますから、私は、いわゆる国家試験を受ける段階でどのぐらいの数があるのか、これはなかなか把握しにくい面があると思います。非常に軽い方というのはわからないこともございましょうし、わからない。しかし、重い症状の方はそこまで行かずに途中で挫折をするということもあるわけでございますから、数字としてどの時点でどう見るかというのはなかなかわかりにくい話だろうというふうに思います。
最近はまた精神医療も治療が非常に発達をしてまいりましたから、そうした治療を受ければ十分に、卒業し、そして職につく能力を身につけることができ得るという人もふえてきているのではないかというふうに思います。
○佐藤(公)委員 まさに、大臣はよくその辺の実情は大体おわかりになっていらっしゃると思います。
僕は、それで非難をするというか、何でそんなのを放置しているんだと言うつもりはなくて、やはりこれから本当に大事なことだと思うのです。そういう部分を、いつまでも隠してなければいけないという部分じゃなくて、ある程度の調査をしながら実態を踏まえて、そういうものを、大学の中にもカウンセリング機能を設けながら、やはりよくなっていく。
または、今大臣がお話ししたのは、入ったときはわからない、もしくは入ったときはなってない、でも、在学中にやはりいろいろ大変なストレスがたまる、いろいろなことによってなっていく方、一時的にも短期的にでもあり得るのかなという気がいたしますが、そういうものをきちんと調査して、現実を把握してやっていくというのは、今後こういう新たな改正になっていくに際しても、やはり非常に重要な、また大事な下地になっていくような気がいたします。そういう部分で、そういうものを今後また文部科学省としましても考えてやっていただければありがたいようにも思えます。
また、この次はお医者さんの方なんですけれども、お医者さんに皆さんなられた、もしくはいろいろと技術者になられた、医療関係の免許を取られた、こういう方々の中、とりわけお医者さんということをとったとしましょう。お医者さんにおける、なった後の精神障害的なデータというものが何かあり得るのかどうか。いかがでしょうか。
○伊藤政府参考人 医師、歯科医師の免許を取得した後に精神障害となった者の数は、把握しておりません。
これはなぜか申し上げますと、免許取得後に精神障害になった人たちの数を正確に把握するような仕組みというのは現実問題としてなかなか、みずから不利益なことにつきまして、役所に報告をさせる制度等が考えられますが、しかし、そのような制度をつくるということにつきましては、そういう障害を持った方に対する人権上の配慮などと関連いたしまして非常に難しい問題でございまして、私どもとしては、現時点におきましてはそのような数も把握しておりませんし、正確に把握するということにつきましては、今後とも難しいのではないかと思います。
○佐藤(公)委員 今、こういう案がいいのかどうかわかりませんが、お医者さんに関しては、一回そういうものを取ったのであれば、今は特に問題がなければ一生涯続くということですよね。では、ちょっとそこの御説明をお願いします。
○伊藤政府参考人 今、医師、歯科医師の免許を含めまして、我が国の医療関係職種の免許は基本的には期限なしの免許でございます。
したがいまして、精神障害と医師、歯科医師の免許の関係で申し上げますと、精神障害により例えば自傷他害のおそれがあるといった患者さんでございますとか、さらに精神障害によっていろいろ刑法に触れる犯罪を犯した、そして司法上の処分が決まった、こういう方につきましては、医道審議会におきまして免許の停止なり取り消しという処分を厚生労働大臣が行っております。これが現在の状態でございまして、直ちに免許取得後に期間を区切ってそれを見直していくというような制度は現在のところ考えておりません。
○佐藤(公)委員 諸外国においては、障害者の方々に対して何年か置きに、免許という広い範囲の中の考え方からすれば、普通の人に対しては上げっ放し、でも、障害者の方々に対しては何年か置きにいろいろな意味で書きかえというか見直しというか検査、いい意味で私はとらえておりますけれども、そういうふうにあるというところも何カ所か各国あると思います。
私が思うことは、別に障害者の方だけじゃなくて、やはりいろいろな広い免許がありますけれども、特にお医者さんということで考えるに際して、私の今の意見じゃなくて、大臣にちょっとこれは一点、この案に対してというよりも考えをお聞かせ願えればありがたいのですが、やはり何年かごとに技術革新が進み、いろいろなことがあります。医療もどんどん進歩していく。そういう中で、何年かに一回、やはりある程度の見直しというか書きかえというか、免許ということに関してしていこう、していった方がいいんじゃないかというようなお話も今までも何回かあったかと思いますが、そういうことに対して大臣はいかがお考えになられますでしょうか。
先ほど局長は、そういうことはないということはおっしゃられたんですが、私は大臣の考えをできれば聞かせていただければありがたいのですが。
○伊藤政府参考人 今回の法律改正によりまして、例えば医学部を卒業された方が国家試験に合格をしまして、そして障害を理由として最終的に免許の交付をしないという判断があった、こういう例があったと仮定いたしましても、その後、患者さんの状況が改善したということでございますとか、さらに補助的な手段の開発が進んで、そして免許を与えるに相当だということが確認されれば、一度、免許の不交付、免許を交付しないとした厚生労働大臣の決定は、その時点で変更をするということは当然あり得るわけでございまして、その時点におきまして改めて免許の交付の申請をしていただくということは今想定しているところでございます。
○佐藤(公)委員 僕の言っているのはちょっと違いまして、説明がよくなかったのかもしれませんが、取った人が三年、五年で書きかえるというか、また新たなそんな試験を受けるということはやり過ぎかもしれませんけれども、お医者さんならお医者さんでも、三年でも五年でも一回そういう書きかえをしていくというか、そういう試験を受けていってもう一回やっていくというようなことを聞いたんですけれども、もう時間がなくなりましたので結構です。
あとは、もう最後になりますけれども、やはり本当に大事なことは社会全体の啓蒙だと思います。それは啓蒙であり教育だと思いますので、そういう部分になお一層の力を入れていただきますことをお願い申し上げ、私からの質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、木島日出夫君。
○木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
本法律によりまして、医師等のさまざまな資格免許の付与に関して、これまでのように障害者を一律に排除してきた絶対的欠格条項が廃止されていくということは、障害者の基本的人権の尊重、そして障害者の全面参加と平等を進める上から大変意義深いものだと私は思います。この法律改正が出発点となって障害者の皆さんの社会への大きな活動が前進することを期待したいし、そのために、私ども国政に身を置く者も全力を尽くしたいと思います。
しかし、残念なことは、今回の改正で障害者に対する相対的欠格事由が残されたということであります。障害者団体の中にはこれも外してもらいたいという強い要求があるのは御存じのとおりだと思います。なぜこういう形で相対的欠格事由という形が残ったのか、そもそも相対的欠格条項とはどういう仕組みなのか、基本的な考え方を厚生労働大臣からお聞かせいただきたいと思うのです。
○桝屋副大臣 では、私の方からお答えをいたします。
今回の法改正は評価をいただいた上で、相対的欠格事由をなぜ残したのか、こういうお尋ねでございます。
今回の改正は、委員もおっしゃるように、心身に障害のある者についても、その業務遂行能力がある場合には免許の取得等ができるようにするものでございまして、委員が評価をいただいたとおりでございます。
ただ、国民の安全の確保の観点という視点からは、業務の適正な遂行を確保するということが必要でありまして、このため、各資格制度につきましては、関係審議会の御意見をいただきながら慎重に検討を行った結果、国民の安全の確保の観点から真に必要な事項について相対的欠格事由として残すということになったものでございます。各障害者団体からの御意見も伺ってはおりますが、そうした結果になったわけであります。
この相対的欠格事由を外すということになりますと、免許の取得の可否を個別具体的に判断するとしても判断の基準となる法律上の根拠がなくなるということでございまして、相対的欠格事由をなくすことまでは困難と考えているところでございます。
○木島委員 国民の安全という観点が過度に強調され過ぎたために、今日まで我が国では不必要な絶対的欠格条項が残されてきたんじゃないんでしょうか。だから、そこが不当に強調されますと、せっかく今回それを外して相対的欠格条項になったけれども、その運用がよろしきを得なければ、現実には絶対的欠格条項と同じような仕組みになってしまうこともまた懸念されるところであります。
そこで、適正に運用していくこと、これがまことに大事になってくると思います。公正な基準をいかにつくるのか。しかも、その観点は、午前中の参考人からもありましたが、発想の根本的な転換をやってもらいたいと。免許を与えちゃだめなんだ、与えたらいかぬのだという発想じゃなくて、いかにして障害者の力を引き出すか、そういう発想の転換をして運用をしてもらいたいという叫びがありましたが、そのとおりだと思うのです。
本改正後は、厚生労働省令で資格免許の取得要件が三ランクに分類されるとお聞きをしております。医師等七つの免許は、視覚、聴覚、音声、言語、精神の機能の障害の程度により免許を与えないことがある。薬剤師等六つの免許は、視覚、精神の機能の障害の程度により免許を与えないことがある。理容師、美容師など十二の免許、許可は、精神の機能の障害の程度により免許、許可を与えないことがある。そういう問題であります。
そこでお聞きしますが、それぞれの機能の障害がどの程度の場合には免許、許可が付与されるのか、どの程度の場合には免許、許可が付与されないのか、公正で客観的な基準を省令で明示するつもりなんでしょうか。
○伊藤政府参考人 まず、相対的欠格事由に係る明確な判断基準を設けるべきではないかという御指摘でございます。
委員も御案内のように、障害の種類、それから、人によって非常に多様であるということ、それから、いろいろの職種に要求される能力が職種によって異なる、そういうことから考えますと、現時点におきまして一律の判断基準というものを規定することは困難であると考えております。したがいまして、個々の事例に即して対応していくということが必要になってくるわけでございます。
例えば、医師等の医療関係の資格免許におきましては、身体の機能の障害がある者につきまして、例えば臨床実習を受けたか否か、その際にどのような項目をどのような補助的手段を活用して受けたかなどを勘案して決定することとしております。また、その際には、用いた補助的手段が、現在の科学的技術水準、一般的な医療水準にかんがみて、普遍的かつ実用的な範囲にあるか否かを基準とすることとしております。また、特に精神の機能の障害がある方につきましては、障害が業務遂行に与える影響の多様性、複雑性等にかんがみますと、判断基準を設定することはより一層困難であると考えております。
したがいまして、具体的な、明確な判断基準というのは、つくれればそれにこしたことはございませんが、私どもといたしましては少し中期的な課題だと考えておりまして、今後、いずれにいたしましても、判断事例を積み重ねながら、判断のあり方をできるだけ明確にしていく努力が重要だと考えておるところでございます。
○木島委員 確かに非常に難しいことだと思うのです。視覚や聴覚の機能の障害は、比較的その程度、態様を客観的な数量で示すことができるように考えがちですが、けさ午前中の参考人の高岡正全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長のお話によりますと、聴覚障害も幅があるんだ、条件によって変わるんだ、身体の条件によっても変わるんだというお話でございました。ましてや、精神の機能の障害は、その程度や態様は、とてもじゃないけれども数字であらわせるものじゃない。それだけに、私も、客観的な基準をつくるというのは非常に難しいだろうとよく理解しているところなんです。
しかし、だからといって、公正な一定の基準がないと逆に、免許申請があって、それに対して免許を許可するか、免許を付与するか、全く基準がないと判断権者の恣意に任されてしまう。それもいかぬと思うのです。
判断権者の恣意に任されてしまいますと、障害者の皆さんへの偏見が非常に強く残るもとで、また国民の安全というのが過度に強調され過ぎますと、それは相対的欠格条項が、逆に、事実上の絶対的欠格条項に転化してしまうのじゃないか、そういうおそれもあるんですね。逆に、変な基準をつくられると、これもまた事実上の絶対的欠格条項になってしまう。
そこで私は、補助手段の問題がありました。今答弁で、現在の基準、普遍的、科学的かとおっしゃいましたが、普遍的なんというとみんながその手段を持っていなければ免許を与えないということになりますが、そうじゃなくて、最先端の補助手段。けさ私も見せていただきました。聴覚障害者の皆さんがしゃべります、それがみんな補助者によってパソコンで絵になって出てくる。また今、聴覚障害者の皆さんが電話をかけることができるというのです。すばらしいことです。こういう最先端の補助手段も、おれはやるんだ、これをつけた上で自分の能力を判定してもらいたいと。
そういう判定基準を、最大限障害者の皆さんの力を引き出すという立場で、そういう基準をやはりつくるべきじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○伊藤政府参考人 さっき申し上げましたように、確立した一律の基準を設けるということは非常に難しいわけでございます。したがいまして、いかにしてこの免許の可否の判断というものを客観的に行うかということが、手続上非常に重要になってくると考えております。そのため、私どもといたしましては、障害者に係る欠格事由の判断を行うに当たりまして、専門的な見地から免許拒否の原因となる事実の認定、その評価を行うため、外部の専門家による審査を行うということを考えているわけでございます。
そして、この審査に参加する専門家といたしましては、免許申請者の有する障害について十分に理解がある者を想定しておりまして、例えば、当該資格に係る専門家、それから当該資格に精通した学識経験者、そして当該資格の養成、教育に係る専門家などを想定しているところでございます。
そして、こういう外部の専門家の判断も入れまして、その免許申請者が持っている個別具体的な能力、そしてその方がどのような補助手段を用いているのかということを総合的に勘案いたしまして、厚生労働大臣の最終的な免許付与に当たっての判断をするということを考えておりまして、御指摘のように、この手続は、中立性、客観性というものを担保することが非常に重要であるというふうに考えております。
○木島委員 公正な判定をするには、もう一つ、判断権者が非常に大事だ、公正で中立的な外部専門家の判断に仰ぎたいというのは私も賛成です。
それと同時に、障害者の全面参加と平等を前進させるという観点がやはりどうしても必要だと思いますので、それが今度の法改正の基本的な理念であり趣旨であると思いますので、その集団的検討チームの中に、ぜひ障害者団体の代表を入れてもらいたいと思うのですが、どうでしょう。
○伊藤政府参考人 個別に免許付与の可否につきまして判断するわけでございますが、もちろん、その手続の過程におきましては、免許申請者御本人からお伺いするのは当然でございますし、また、診断書を作成した医師からも御意見をお伺いするということも想定しておりますが、この審査過程に障害者を支援する団体の意見を介在させるという点につきましては、事実認定及び評価の中立性、客観性に影響を与えるということが想定されますので、困難ではないかと考えているところでございます。
○木島委員 その見方は、本当に私はおかしいと思うのです。
障害者の皆さんの状況を本当によく知っている、一番知っている者は、専門的な学者じゃなくて、そうした人と身近にいるそういう団体の人たちじゃないのでしょうか。そういう人たちの意見というもの、その人たちに任せろと私は言っているわけじゃないのです、検討チームの一員としてそういう皆さんを加えることが本当にこの法改正の趣旨を生かすことになるんじゃないか。そういう人を入れると中立性、客観性が壊れる、損なうという見方こそが変えなきゃいかぬ状況に来ているんじゃないかと私は思いますので、これ以上詰めませんが、再検討していただきたいと思います。
それから、具体的に申請から免許の付与の行政処分に至る手続の透明性は非常に大事だと思うのです。これは省令でつくるのでしょうか。
○伊藤政府参考人 具体的な手続は省令で書くということを想定しております。
○木島委員 きょうは時間がありませんから、その手続がまた非常に大事だということだけ指摘をして、公正で透明で客観的な手続規定をきっちりつくってもらいたいとお願いします。
その問題では最後に、免許、許可をしないという障害者にとって不利益な行政処分が下ったときの問題であります。
免許、許可をしない処分に対して、本法律案は何にも規定しておりません。したがって、法の建前から、行政処分でありますから不服申し立ては行政不服審査法による異議申し立て、これは処分権者である厚生労働大臣に対する異議申し立てになると思うのです。それでだめなら、これはもう処分取り消しの裁判しかないということになるわけでありますが、それでいいんですね。
○伊藤政府参考人 そのとおりでございます。
○木島委員 そこで、一つ要望を出しておきたいのですが、障害者の基本的人権にかかわるものであり、かつ非常に高度で専門的で難しい判断に関する行政不服審査請求でありますので、判断権者である厚生労働大臣に異議申し立てというのじゃなくて、これはひとつ第三者機関をきっちりつくって、行政裁判に行く一歩手前ですから、そういう不服申し立てに対するさらに公正な判断ができる機関をつくっていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
○伊藤政府参考人 まず、免許拒否の結論を出す前に、免許の申請があった時点、また免許を与えないとの決定を行う時点、この二段階におきまして外部の専門家による検討を行うこととしておりますので、判断の客観性、中立性を確保できるものと考えております。
そしてまた、それによってもなおかつ不服の場合は、行政不服審査法に基づきまして異議申し立て等を行う形になるわけでございますが、この異議申し立ての手続といたしましては、申立人から反論事由を明記した申し立て書をこの場合でございますと厚生労働省に提出していただきまして、必要に応じて証拠書類の提出や参考人の陳述等を行った上で裁決を行うということを想定しておりまして、現時点におきましては、第三者的な機関の設置は検討しておりません。
○木島委員 そんなんじゃ全然だめなんですよ。判断権者が免許申請を却下する、免許を与えないという行政処分をする。それに対して法律上異議申し立てをする申し立て権の相手方はその判断権者なんですよ、今の行政不服審査法の手続から。同じ穴のムジナどころか、判断権者に異議申し立てをしたってひっくり返る可能性はほとんどない。機能していないのです。ですからこそ、障害者の基本的人権の根幹にかかわる。
障害者は、これで免許を与えてもらいたい、おれはこれができるんだという確信を持って申請しているのですが、残念ながら、免許申請が棄却された、あるいは却下された、付与されなかった。それに対する不服申し立てなんですから、さらに高度の客観性を持った第三者機関をつくることが今必要じゃないか。一つこれも要望に残しておきます。
それで、一つだけ、事前通告ありませんが、努力をしてもらいたいというので、現在の日本の我が国の行政は、行政不服審査請求に対して、点字による行政不服審査請求は受け付けない。点字なんかだめだ、そういうことをやっているようであります。これは速やかに、そんなものはまず是正するところから始めていただきたいと思うのですが、厚生大臣、努力すると言ってもらえますか、当たり前のことですよ。
○桝屋副大臣 今、大臣とも協議いたしましたけれども、突然御指摘をいただきまして、私の記憶でも、私も随分審査請求はいろいろな事例を見てきましたけれども、点字で審査請求をされるケースが、まだ私見た経験がないんです。そういう御指摘も今いただきましたので、ちょっと調査をいたしまして、厚生労働省としても対応を検討したいと思います。
○木島委員 今、非常に大事なこの運用の問題について、基準の問題、判断権者の問題、手続の問題、不服申し立ての問題、四つほど指摘しました。私は、こういう大事な四つについて、せめてその基本的な考え方を法律に書き込んでもらいたかったなと思うんですが、残念ながらありません。ぜひ障害者の能力を引き出すという立場で立派な政省令をつくってもらいたいと要望して、次に進みたいと思います。
これはやはり出発点だと思うんです。この開かれた仕組みが障害者の皆さんにとっては希望を与えるものだということだと思うので、前途に大きな可能性を生み出すわけでありますから、その可能性を現実のものにすることができるかどうか、一つは、一にかかって障害者に対する教育条件の整備にかかっている。ほかの委員からも指摘されたとおりであります。
それで、簡潔な答弁で結構なんですが、障害者の皆さんの大学や専門学校等への進学の現状、それへの支援体制をどのようにつくっていくつもりか、御答弁願いたい。
聴覚障害者の皆さんの手話通訳、非常に大きな役割を果たしているんですが、教育分野では公的補助がない、ボランティアに基本的にゆだねられている。基本的にそこに援助してもらいたいという要望が非常に強くありますので、今後の支援体制をどのようにつくるか、決意のほど、答弁願います。
○坂口国務大臣 やはりスタートは教育の分野であると思います。ですから、教育の分野でバックアップ体制というものが整備をされなければならないというふうに思いますので、ここは文部省とよく相談をさせていただいて、文部省の協力も得ながら、そして、ここは的確に進めていけるようにしなければならないというふうに思っております。
受講に際しましての、例えば、手話通訳でありますとか、あるいはまた移動介助の便宜の機器でありますとか、あるいはまた点字教材でありますとか、障害に応じました教育機材の配置でありますとか、いろいろのことがあると思いますし、委員が先ほど御指摘になりましたように、これからどんどんこの分野は発達もしてくるだろうというふうに思いますから、新しいそうしたものをどんどん取り入れて、そして皆さん方の御要望におこたえができるようにしていきたいというふうに思っております。
厚生労働省としましても、所管の養成施設、看護学校でありますとかあるいはOT、PTの学校等をやはり持っておるわけでございますから、我々の方も、文部省に言うだけではなくて、そうした学校においてそれが可能になりますように努力していきたいと思っております。
○木島委員 よろしくお願いをいたしたいと思います。
次に、障害者の皆さんの就業が本当に促進されなければ、欠格条項の見直しをして免許や資格を付与したその趣旨が生かされないことになる。やはり出口は、本当に就労ができる状況をつくり出すことだと思うんです。
障害者の皆さんの雇用状況をお聞きしましたら、昨年十二月の労働省の発表では、民間企業への実雇用率は前年と横ばいの一・四九%であるようであります。法定雇用率は一・八%でありまして、その達成にはまだはるか遠い状況であります。法定雇用率の達成のためどんな手だてをとるつもりなのか、お伺いしたいと思います。
○坂口国務大臣 総論といたしましては、去る六月十二日に障害者施策推進本部が開かれまして、そこで障害者に係る欠格条項見直しに伴う教育、就業環境等の整備についての申し合わせを行ったところでございます。
従来から、厚生労働省といたしましては、業務を遂行いたしますために、職場定着を援助する者や障害を補う補助機器の配置、それから職場のバリアフリー等を行う事業主に対しまして、その費用の一部を助成等もしてきたところでございます。
それからさらに、雇用の分野におけるノーマライゼーションを一層推進する観点から、いわゆる障害者の雇用率制度、何%と決まっておりますが、この雇用率制度における除外率制度というのが御承知のとおりございます。この除外率制度でありますとか除外職員制度につきまして、これを、基本的に縮小を前提とした検討を行っておりまして、障害者の職場の拡大を今図っていきたいと思っているところでございます。
○木島委員 今、除外率を縮小するという方向でいきたい、大変結構なことだと思います。
それで、最後に具体的に二つの点だけ私の方から実態を指摘いたしまして、厚生労働大臣に決意のほどをお願いしたいと思うんです。視覚障害者の皆さんの公務員への採用の状況であります。
調べてみますと、点字による地方公共団体の採用試験実施団体は、全国約三千ある自治体の中で、平成十一年度でわずか七十九自治体にすぎません。
また、国家公務員試験について、点字試験、拡大文字試験の受験状況を見ますと、点字試験は、平成三年から十二年まで、この間、1種の試験で受験者十一名であります。合格者ゼロです。2種で、受験者二十九名で、合格者はわずかに一人です。拡大文字試験、時間延長で、この分野では、平成五年から平成十二年まで、1種の国家公務員ですか、受験者十二名で合格者ゼロです。2種で、受験者二十四名で合格者三であります。
合格、不合格はそれだけではないかもしれませんが、余りにも受験者の数そのものが少ない。ましてや、地方公共団体の採用試験実施団体の中、わずかに七十九自治体しか点字での試験をやっていないというのは大問題だと思うんです。まず、国と地方自治体からこうした状況を打開して、障害者の採用がふえるような、そういう枠組みをつくっていくことが必要かと思いますが、御努力をお願いしたい。決意のほどだけで結構ですが、厚生労働大臣。
○坂口国務大臣 今の数字が、全体で一体どれだけの皆さん方がお受けになって今御指摘になりました数字になっているのかということを、私もちょっとよくわかりません。あるいは、もうその入り口のところで、受験をしてももうそれは無理だというので、受験のところであきらめておみえになるということも多いのではないかという気もいたします。
こういう法律を今回つくるわけでございますから、国だけではなくて、都道府県あるいはまた市町村にもこのことが浸透いたしますように、また、各事業所、一般民間事業所にも浸透いたしますように、これから努力をしたいと思っております。
○木島委員 では、最後に一点だけ。障害者の皆さんのバリアフリー化の支援事業の問題であります。
午前中も、私自身、パソコン等がどんなに大きな力を発揮するか、目の当たりにいたしました。重度の視覚障害者、重度の上肢不自由者の皆さんに、パソコン等の必要な周辺機器、ソフトの、情報機器の援助制度があります。しかし実態は、いろいろ対象品目はあるんですが、助成額は、周辺機器について、機器の購入に直接要した費用の三分の二以内で、十万円が限度であります、頭であります。事業規模が十億円であります。国が五億円、地方が五億円。これでいきますと、一万人しか対象にならぬ。しかし、現実には、重度視覚障害者の数は十七万人であります。重度上肢不自由者の数は三十四万人であります。合計五十万人でありますから。
しかも、これは周辺機器なんですね。助成対象品目からパソコン本体を除外しないでもらいたいという物すごい強烈な要求がありますし、周辺機器についても、この助成率を上げてもらいたい、大きな要求があるので、ちょっと実態がわかったら答弁していただきたいんですが。
こういう点で、大事な、政府が今力を入れているITの分野でもありますから、助成を前進させるという答弁をいただきたいと思うんですが、厚生労働大臣、よろしくお願いしたい。
○坂口国務大臣 ちょっと全体としての数字は今持ち合わせておりませんのでわかりませんが、こういう時代でございますし、そして多くの皆さん方がそうして働くという大きな意欲をお持ちでございますので、それは私たちもできる限り、少ない予算の中でございますが、頑張りたいと思っております。
私も先日、ある事業所にお邪魔させていただきまして、そうした中で働いておみえになります、いわゆる上肢の、両方の手の御不自由な方のお姿も拝見をしてきたところでございます。
○木島委員 ありがとうございます。時間ですから、終わります。
○鈴木委員長 次に、中川智子君。
○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。今回の改正案は待ちに待っていたものでありまして、大変うれしくこの審議に臨ませていただきます。
今まで本当に門前払いだった障害者の方たちの欠格事由の医師法の改正なんですが、私は、門前払いだったのが、ともかくその門は開かれた、でも、開かれて、また中に入ると門があったということには決してならないようにしていきたいと思いながら質問させていただきます。
まず第一に、これは坂口厚生労働大臣にはまだ御紹介していないんですが、介助犬というのがございます。そして、この間、九九年の七月に、超党派の議員で介助犬を推進する議員の会というのをつくりました。そして、ことし、通常国会開かれました後は、各党からワーキングチームで代表者が出てきまして、十六名ぐらいのワーキングチームで、議員立法をつくるために、本当に毎週毎週いろいろな議論を積み重ねてまいりまして、いよいよその法案が最終段階までやってまいりました。
介助犬、盲導犬、そしてまた聴導犬という、生きた自助具として犬が果たす役割というのが大変大きいなということで、その犬を持っていることがかえってバリアになる、それであっては社会参加はなかなか難しいということで、盲導犬や介助犬や聴導犬が本当に社会的にアクセスするために、就労も促進できるように、そのようなバリアを取り除く法律をぜひともつくりたいということで努力を重ねてまいりました。そして、良質な身体障害者補助犬の立法ということで名称もできているわけなんです。
ぜひとも一度、坂口厚生労働大臣に、この介助犬や盲導犬や聴導犬が障害者の人たちと一緒に活躍している姿を見ていただきたいというお願いと、国会が終わった後で少しお時間があったときで結構ですが、それをぜひともお願いしたいということと、いま一つは、この法案が提出されましたときにはぜひとも大臣にもお力添えをいただきたいと思いますが、御感想を含めての御意見をお願いいたします。
○坂口国務大臣 私も、映像ではずっと拝見をしたことがございますが、実際に拝見したことはございませんので、機会がございましたらぜひ一度勉強させていただきたいというふうに思います。
厚生労働省の方も、昨年の六月でございますか、検討会を設けまして、近々その報告書がまとまるようでございます。いずれにいたしましても、介助犬というのは肢体不自由者の皆さん方に大変有効なものであるということは、その中でも議論がされているところでございます。議員の皆さん方で法律がつくられるということになりましたならば、ぜひ私たちもできる限りの御支援をさせていただきたいと思っておるところでございます。
○中川(智)委員 本当に力強い御決意ありがとうございます。厚生労働省の検討会の報告が出まして、それをしっかりまた参考にさせていただきながら、一緒に連携して、これは、盲導犬に関しましては国家公安委員会の方の道路交通法とかさまざまなことがございまして、いろいろな省庁にまたがる法律になりますので、ぜひとも皆さんのお力もかりながら頑張って成立に向けて取り組みたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
続きましては、きょうのこの審議で何度も要望として出されております、可否の決定に際して広く意見を聞くというところでの第三者機関を、私も、ぜひともつくるべきだし、またつくらなければかえって、私が先ほど申しましたように、門は開かれた、そして頑張って勉強して試験に合格したのにその努力が水泡に帰すということがあってはならないということを強く思います。
そのときに、本人も納得できて、そして広くその情報が開示されて、それが実現に向かうためにさまざまな人の御意見をそこで聞いていって、その免許を獲得できるようにしていくということがやはり今回の法律の魂であろうと思うわけです。
先ほどからの伊藤局長の御答弁の中では、第三者機関はつくる予定はない、行政、医師、そして判断は公正公平にということをおっしゃられていますが、なぜつくらないんでしょう。この間の、やはりつくるべきだということに対して、なぜそのような考えがないのかということをもう一度聞かせてください。
○伊藤政府参考人 第三者機関をなぜ設置しないのかという今お尋ねでございます。
今私どもが想定しております仕組みにつきましては、当委員会におきまして再三御説明させていただいておりますように、まず医師の診断書、それから必要によっては医師から直接お話を聞くこと、そして二段階にわたりまして外部の専門家を入れての合議といいますか、そういう手続を経て最終的に厚生労働大臣が判断をするということを考えておりますので、私どもといたしましては、第三者機関による判断と同等の客観性は担保できるものという判断をしておりますので、第三者機関の設置については今のところ検討していないと申し上げたところでございます。
○中川(智)委員 きょうの四方の参考人の方々も、やはり実際に免許を取得されて活躍していらっしゃる方々です。ぜひとも、社会でもう既に活躍していらっしゃる方々、その方々の意見というものも入れていっていただきたい。最初から、これでまずスタートするんだというところのその途中で、やはり広く意見を聞くという仕組みを前向きにつくっていっていただきたい、これは要望として申し添えておきます。
この後、ガイドラインをつくるときに当たっての要望なんですけれども、私は、これは事例をたくさん積み重ねていくこと、このことが何より大事だと思っております。最初から、やはりもうこれは無理だろう、無理だろうということではなくて、ともかく、今回このような形で欠格事由がなくなった、その後で免許取得をされて、その後どんな問題が起きてきたのかということでガイドラインというものを、事例を積み重ねていくこと、そしてつくっていくことが大事だと思うのです。なぜこの人は合格で、この人はなぜ拒否なのかというところの情報公開と、そして事例を多く積み重ねていくという姿勢でおやりになるのかどうか、そこのお考えを聞かせてください。
○伊藤政府参考人 具体的なガイドラインを作成するためにはさまざまな判断事例を積み重ねる必要がございまして、中長期的な課題であると認識をしております。
そして、個別具体的に免許拒否の最終的な判断をする場合には、なぜそういう判断を厚生労働大臣がするかということにつきましては、十分納得いただけるように、その理由を明確に開示するということも必要だと思っております。
そして、個別具体的な事例ではなく、この制度をいかに運用していくのかということにつきましては、それぞれ障害を持っておられる方々が、学校やそれぞれの地域なり仕事をしていくその職場環境の中で、いろいろな現場からの意見を出していただくということが障害者の免許取得の機会を拡大していく上で重要でございますので、いろいろの、制度の運用なり政省令の具体的な書きぶり等につきましては、各種の障害者の団体から十分意見をお伺いして、最終的な政省令の案をまとめていきたいと考えておるところでございます。
○中川(智)委員 参議院のあれを見ましても、中長期的な課題ということで、その中長期というのが非常に漠然としているんですが、大体のあれはあるんでしょうか。
○伊藤政府参考人 具体的に何年というのは難しいわけでございますが、具体的な事例を積み重ねていくことによって皆様方に納得いただけるような大体の判断基準というものが徐々にでき上がっていくのではないかというふうに今考えております。
○中川(智)委員 あきらめることを納得させるんじゃなくて、本当に受け入れていく体制を、いかに基盤をつくっていくかということがやはり大事だと思いますが、時間が余りないので次に移らせていただきます。
きょう、文部科学省の審議官にもおいでいただいているんですが、国公立はある程度、今回のこの改正で結構いろいろな条件というのを整わせていくことというのはできていくかもわかりませんが、特に私立とか専門学校とかそういう学ぶ場が保障されているかどうかというのがとても心配です。また、このように、試験が受けられるけれども、その中で入学試験の配慮とか授業に対しての、私立の学校などの取り組みに対してどのような行政指導なり援助を行っていくんでしょうか。
○清水政府参考人 お答え申し上げます。
特に大学、とりわけ私立大学における障害者の方の受け入れにつきましては、それぞれの大学、あるいは障害の程度、種類によって実はさまざまというふうな状況がございます。
御指摘のように、私立大学の中でも、とりわけ受け入れ体制ということで、例えば障害者の方々からそこについて、あえて申し上げればランキングというようなことをされているところもあるわけでございますけれども、そこの中では、とりわけ私立大学において非常に高い評価を得ているというのもないわけではございません。
私立大学につきまして、私どもといたしましては、施設のバリアフリー化ということを中心に補助あるいは融資等の予算措置を講じておりますと同時に、また、障害者の受け入れの数に応じて私学助成等におきまして特別な補助を行っている等々の措置を講じておるわけでございます。
障害者の方の受け入れという問題につきましては、予算措置につきましては、それぞれ設置者があることでございますが、受け入れの体制あるいはその考え方ということについてはそれぞれ、国公私、基本的には同じだろうというふうに思っております。
私どもとしては、いろいろな機会をとらえまして、私立学校も含めて、関係者に対して受け入れ体制の充実について指導を続けてまいりたいというふうに思っております。
○中川(智)委員 それでは、最後に大臣に伺いたいんですが、午前中の参考人質疑のときの熊谷さんのお話はとても感動したわけですけれども、課題があればそれに対して、クリアしていく、そして優先順位をつけていきながらそれの実現に向けて努力していく。それは、今回の法律を本当に生きたものにして、障害者の方々がまず夢を持ち、その夢の実現に対して私たちが一体となって努力していくことがやはりとても大切だと思います。
私は、合格したら基本的に全員免許が取れて、その後は、受け入れ側の方の努力に対して国もバックアップしていくということが本来やっていくべき方向だと思うんですが、大臣のこの法改正に向けての御決意と、今後の展望に対しての御意見をちょうだいしたいと思います。
○坂口国務大臣 今お話しになりましたように、この法律は、障害者の皆さん方にできる限り希望されます職におつきをいただけるようにどうするかということだろうというふうに思っています。
したがいまして、その資格をお取りいただけるように、学校教育も含めてでございますけれども、それぞれの個別の立場、それぞれあるだろうというふうに思いますが、その皆さん方のいろいろの御意見もお聞きをし、それぞれの立場もよく踏まえながら、そして、一人でも多くの皆さんが職についていただけますように、あるいは資格を取っていただけますように我々は努力をしていかなければならないと思っております。
○中川(智)委員 終わります。ありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、阿部知子君。
○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
冒頭、本来の本日の法案審議とは異なるテーマでございますが、実は先週、六月十二日並びに十三日に、厚生労働省管轄下にございます公益法人臓器移植ネットワークが関係いたしますいわゆる金銭の出納の不透明な部分というのが相次いで報道されておりまして、やはり管轄省庁としての厚生労働省に、本日、私の方から御提案したき件がありまして、それを冒頭させていただきます。
先々回、私、御紹介いたしましたが、臓器移植ネットワークと日本馬主協会連合会というところのお金の、寄附金等々のやりとりが、小紫会長という同じ方が両方の会長になっていることによって行われていた事実、あるいは、今般明らかになりましたことは、この臓器移植ネットワークを通じまして、製薬会社が寄附をまず臓器移植ネットワークにいたしまして、そこから各種学会に寄附が流れていく、いわゆるトンネル寄附というような事態が発生しているというふうに新聞等々で報じられております。
国民に与えます不安感あるいは不透明感も強いことでございますし、関係省庁として、ぜひとも臓器移植ネットワークへの立入調査、事実究明ということについて早急に実施していただきたく、御答弁を賜りたいと思います。
○篠崎政府参考人 前回も先生から御質問いただきましたが、ただいま御指摘の点も踏まえまして、厚生労働省といたしましては、今後、ネットワークへの立入調査を行った上で、問題があれば厳正な対応を図ってまいりたいと考えております。
○阿部委員 ありがとうございます。
引き続いてもう一点。いわゆる大阪の池田小学校をめぐりまして、けさも水島委員からの御質疑がございましたが、私は、医療関係で、特に坂口厚生労働大臣並びに関係部局への御質問がございます。
先回も確認、御質問いたしましたが、いわゆる精神障害ゆえの措置入院を受けた患者さんの実態の調査が、まずどのくらい厚生労働省として把握しておられるかが一点。お教えくださいませ。
○今田政府参考人 お尋ねの措置入院の患者、つまり自傷他害のおそれが強いということで結果として措置入院になった患者さんのその後の実態でありますけれども、現実的には、こういった方々は、その後引き続いて、つまり措置症状はなくなったけれども引き続いて医療保護入院あるいは任意入院を継続されていらっしゃる方もいらっしゃいますし、継続して通院医療を受けていらっしゃる方もいらっしゃいます。
ただ、それは一般の医療としての扱いでありますので、措置入院をしたということに着目をしてその方のフォローアップをきちんとしているかという御質問に関しては、それは現実的に難しいということで、調査そのものをやっておりません。
○阿部委員 せんだってもお伺いいたしましたことなので確認の事項にはなりましたが、実は、そのやさきと申しますか、せんだっても坂口厚生労働大臣を初めとして、精神科の特別な病棟の設置、こうした犯罪を起こしたと思われる精神障害者、措置入院等々も含めた形の患者さんたちを特別な病棟に分けて、あるいは特別な病院に分けて加療しようというお考えもあるやに報道で承っております。
私の個人的な経験からいたしましても、患者さんたちの中に特殊な枠を設けていくということは、これはバリアをつくる方向にもなってまいります。そして、私が短期間留学しておりましたアメリカのミネソタにございます小児の精神科の病棟では、実は十六歳で銃で人をあやめた少年と、そのほかの拒食症とかいろいろ不登校の子供たちが、同じフロアで治療を受けておりました。私は、患者さんたちというのをどの程度特別視したり隔離したりすることが本当に治療上に役に立つのかは、専門の治療にかかわる先生方の意見も深く聞いてから方策が立てられるべきと思います。
そこで厚生労働大臣にお願いでございますが、この件についていろいろな見解表明、小泉首相の表明も含めましてございますが、少なくとも厚生労働省といたしましては、今の精神科の医療現場、措置入院を受けた患者さんのその後も含めまして、実態をいま少しつまびらかにして後に方針をお立てくださるように、時間的なものはございますでしょうけれども、その原則を堅持していただければと思いますが、御見解をお願いいたします。
○坂口国務大臣 けさも御答弁を申し上げましたが、大阪におきます事件は、精神障害によって起こったものかどうかは今のところ明白ではございません。
しかし、一般的に申し上げますと、精神障害者の中で重大な犯罪を犯す人が存在することも事実でございます。ではその場合に、その皆さん方を一般の精神障害者と同じように治療をするだけで、そうしてその症状が軽快をいたしましたら家庭に帰すというだけでいいのだろうかという疑問が実はもう一方であるわけでございます。
したがいまして、いわゆる患者さんの人権というものと、そして障害者の犯罪によって起こります一般の人たちの人権の問題と、両方あるものでございますから、その両方を見ながら決着をつけなければならない問題であるというふうに思っております。
でき得る限りは特別な病院あるいは病棟といったものをつくらずにいくという方針も、一方ではあるわけでございます。私も、そういう御意見が非常に精神科の先生の中に多いことも承知をいたしております。あるいは、日弁連の先生方の中にそうした御意見が多いことも承知をいたしております。
しかし、重大な犯罪を犯す精神障害者がそれを繰り返すこともまたあるわけでございますので、それを一体どうするかということもまた考えていかなければならない問題でございます。在宅の場合には、その在宅の患者さんから目を離さないような仕組みといったものもやはり必要でございましょうし、それから、入院をされますときには、ただ医学的な治療のみではなくてもう少し幅広い、いろいろ、そういう方の教育と申しますか治療のあり方、広い意味での治療のあり方をやはり考えないと、一般の方と同じでいいというのではないのではないかというのが私の現在の思いでございます。
○阿部委員 厚生労働大臣としての御見解はさように承りましたが、私のお願いは、やはり精神科の現場にある医師たちがどのように考えながら実践しているかということもいま一度お聞き願いたいということと、それから、日本は、とりわけ地域での支える体制、例えば精神障害を持った方へのデイケア、デイサービス等々、極めて未発達でございます。そういう実態も踏まえての地域支援体制ということもいま一方にあろうかと思いますので、先ほど前半でお話ございましたなるべく特殊視しない方向というのも一方において重々心におとどめいただきたいというふうにお願いいたしまして、本来の質問に入らせていただきます。
きょうのこの、障害に関する欠格事由の廃止法案でございますか、私でもう最後でございますので、私としてきょうの論議を承りながら、例えば、私は民間病院を預かっておりましたが、民間病院でこういう方を受け入れるとしたら、果たしてどんな病院にとっての財政支援策等々があろうかというふうに問題を立ててみました。
そこで担当部局にお伺いいたしますが、いわゆる厚生労働省の分野で障害者の雇用にかかわりますときに、例えば障害者雇用促進法の中には介助者制度がございますし、障害者雇用助成金制度というのもございます。ただし、参議院での論議を読みますと、例えば障害者助成金制度については二〇〇一年度では一億五千万円の予算減で計上されておりますし、障害者雇用促進法の介助者制度がどの程度利用されているかについてもつまびらかな資料提示がございませんでしたので、現状での障害者雇用にかかわります補助制度のあり方について、まず御答弁をお願いいたします。
○澤田政府参考人 お尋ねの件でございますが、まず、基本的に、民間の医療機関が障害者を含めて就職が特に難しい方々を雇った場合には、一年あるいは一年半、賃金の一部を助成する制度がございます。これは、就職困難者として雇った障害者の方々をいわば常用として雇うという条件がついておりますので、そういう形でやっていただければ助成が出るということになります。
それから、今御指摘の、介助者を企業内に設けるとか、バリアフリーのための設備等を整備するとか、そういった事業主に対しましても、費用の一部を助成する制度がございます。これは、今お話がありましたように、障害者雇用率をバックにいたしました雇用納付金制度という仕組みの中でやっておりますので、これには民間の事業主が対象になっているということであります。
それから、御指摘の、それぞれの予算が今どうなっているかにつきましては、ちょっと今手持ちにございませんが、後ほど詳細にお届けいたしたいと思っております。
○阿部委員 前者の障害者雇用促進法においても一年から一年半という期限つきでございますし、私の入手しました資料は、先ほど申しましたように、助成金制度は今年度予算一億五千万円減でございます。そういたしますと、この法律が今回通りましても、現実には、障害のある方をサポートしていくためのさまざまな現実の助成措置というものは極めて限られてくるかと思います。
ここで、坂口厚生労働大臣にお願い兼御質問でございますが、実は、きょう午前中の参考人、熊谷参考人のお話にもございましたが、例えば、患者さんとの間に、診察に用いますときにインターフェースをとりますための高い車いすとか、安定した記載用のテーブルとか、遠くまで伸びる聴診器とか、さまざまなものが個別の事例に応じて必要になってまいります。そして、これまでの枠で利用できる助成金制度の中には、なかなかそのようなものが目配り、気配りされてございません。
この法案の成立に伴って、今後、障害のある方が障害を越えていくためのさまざまな機器も含めての助成制度を、また別途に厚生労働省として枠立ててお考えいただくお考えがおありや否や、あってほしいと思って伺いますが、御答弁をお願いいたします。
○坂口国務大臣 今までの補助制度の延長なのか、それともそれが新しいものなのか、ちょっと検討しないといけないというふうに思いますが、障害を持つ皆さん方が新しい職場についていただきますためには、いろいろのものが必要になることは当然でございますので、それは十分に検討させていただきたいと思います。
○阿部委員 では、重ねて、前向きな御検討と、実際に道が開けるように御助力くださいますように。
ありがとうございました。
○鈴木委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○鈴木委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
内閣提出、参議院送付、障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
○鈴木委員長 起立総員。よって―本溢は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○鈴木委員長 この際、本案に対し、吉田幸弘君外七名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合、保守党七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。山井和則君。
○山井委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一 障害者の社会参加と平等、人権の尊重という今次制度改正の根本理念の具現化に向け、政府は終期の迫った「障害者対策に関する新長期計画」及び「障害者プラン〜ノーマライゼーション七か年戦略」を完全達成するとともに、引き続き次期計画及び整備目標を策定し遅滞なき総合的な障害者施策の推進に最大限の努力を講ずること。
二 我が国の本格的なIT社会への展開に際し、新たな技術革新が障害者の資格取得や就業における格差を生起することのないよう、デジタル・ディバイドの解消とユーザビリティに基づいた開発、ユニバーサルデザインの普及・普遍化に努めること。また、政府調達等により、その推進に努めること。
三 各種資格試験等においては、これが障害者にとって欠格条項に代わる事実上の資格制限や障壁とならないよう、点字受験や拡大文字、口述による試験の実施等、受験する障害者の障害に応じた格別の配慮を講ずること。
四 大学・専門学校等の教育・養成機関が、受験と教育の両面において必ずしも障害者に開かれてはいない現状にかんがみ、これら教育・養成機関での障害者に配慮した受験制度及び就学環境の改善を進め、障害者の資格取得支援のための条件整備について所要の措置を講ずること。また、この趣旨を各教育機関に周知徹底するよう、関係機関と連携すること。
五 本法改正を実効あるものとする観点から、障害及び障害者の機能を補完する機器の開発、職場介助者等の職場における補助的手段の導入に対する事業主への助成など、関係行政機関が一体となって総合的な障害者の就業環境の整備に努めること。
六 現在の厳しい雇用環境にかんがみ、障害者に対する差別・偏見を除去するための啓蒙・啓発を更に進め障害者雇用の促進を図るとともに、障害を理由とする解雇を無くすよう厳しく指導すること。さらに、とりわけ立ち遅れている精神障害者雇用の進展のため、障害者雇用促進法における雇用率の制度の在り方も含め、雇用支援策の充実について早急に検討を進めること。
七 本法改正に伴う省令等の策定に当たっては、障害者団体、関係団体など幅広い分野からの意見聴取等を行い、これを反映するよう努力し、障害者欠格条項の見直しの本来の趣旨に照らし、相対的欠格事由の的確な運用に齟齬の生じないよう努めること。
八 免許を与えないこととするときの不服申立てについては、まず本人の意見を十分に聴くとともに、専門家の意見を聴くことを含め、適切な措置を講じ、障害者団体、関係団体の意見を聴取しつつ、事例の積み重ねを通じて、判断の在り方を明らかにするよう努めること。
九 障害者に係る欠格条項の見直しの趣旨にかんがみ、その実効性が確保されるよう、個人支援技術の開発普及を急ぎ、できうる限りの補助手段を用い環境を調整してその人の望む姿での社会参加を実現することを、一層推進すること。
十 障害者の自立を促進するため、所得保障及び雇用確保の在り方について速やかに検討を進めること。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○鈴木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○鈴木委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。
○坂口国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、最大限の努力をいたします。
ありがとうございました。
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○鈴木委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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