警察庁との交渉

要約報告

警察庁への要望書

警察庁への要望項目

警察庁との交渉議事録

【自動車等の運転免許】

【「警備業」を営むこと及び「警備員」】

【風俗営業の許可】

【「風俗環境浄化協会」の「風俗営業の許可基準に係わる調査の業務」】


【ダンス教師資格者】

【鉄砲又は刀剣所持に係わる許可】



障害者欠格条項をなくす会
警察庁交渉1999年5月31日



【警察庁との交渉 要約報告】

1999年5月31日午後2時〜5時「障害者欠格条項をなくす会」と警察庁との交渉があった。警察庁は運転免許・警備業・風俗営業・銃刀所持に関する各担当者が出席(運転免許課・生活安全企画課・生活環境課・銃器対策課)。会からは会議室の広さの都合上、警察庁側からの要請により10名まで(うち、車椅子は1台)ということであった。今回は、個別の制度についての「欠格にしている理由」を各
課と突っ込んだ交渉をした。

《要望書》

警察庁交渉要望書より

(本文は厚生省に出したものと同じです)
障害者の欠格条項の撤廃に関する要望書


貴職におかれましては、日頃より障害者施策の充実に尽力されていることと存じます。
私たち「(仮称)障害者欠格条項をなくす会」は、障害当事者が中心となり、関係者や市民に広く呼びかけて活動しています。
「障害者をしめだす社会は、弱くてもろい社会」という「ノーマライゼーション」提唱(国連・1980年)から20年たちます。「ノーマライゼーション」は、すでに国際的な共通理念となり、今では「インクルージョン」※が広く支持されています。
※インクルージョン(inclusion) 分けることをせず、個別の多様なニーズへの対応を基本にする。という意味で使われ、教育分野で実践が始まった。国際的な「ポスト・ノーマライゼーション」の考え方となってきている。
しかし欠格条項の存在は、日本がいまだに「ノーマライゼーション」以前の状態にあることを示しています。それどころか、欠格条項は「障害者には人権がない。差別してよい。」という法律上の宣言に等しいものです。市町村の条例や学校の受験資格・企業の採用基準などにも影響し、差別偏見を拡大し、はかりしれない損失を障害者と社会にもたらしてきました。恥ずべき人権侵害として早急に撤廃することが必要です。「法のもとの平等」「職業選択の自由」を定めた日本国憲法に反し、「障害者が、社会のあらゆる分野の活動に参加する機会の保障」を主旨とした障害者基本法(1993年)ともあいいれないものです。

約30年前から、障害者たちは、「できるわけがない」「あぶない」「ひとに迷惑をかけるな」など、たくさんの抵抗をこえて、自立生活に向かいました。施設や病院、在宅から、身体をはって地域社会に出ていきました。それは、高齢者にも住みよいバリアフリーのまちづくりの、大きな推進力になりました。ふつうの企業などで障害者が働くことにもつながっています。
たとえば障害者の自立にとって、住宅の確保はたいへん大きな問題です。介助の必要な障害者で、民間住宅に単身入居して自立生活をおくる人は、各地にいます。ヘルパーや介助者が家に通ってくるという形です。ところが、公営住宅ではそれができません。「公営住宅法施行令」に、常時介護が必要な障害者は「自立困難」として、単身入居を制限する欠格条項があるからです。
医師や看護婦になりたいという夢を、「目が見えない者、耳が聞こえない者又は口がきけない者には、免許を与えない。」という欠格条項(「医師法」など多数)によって絶たれた若者は、数知れずいます。当会の調査では、欠格条項のもとで障害者の就業禁止や何らかの制限を指定されている職業は、約340種にのぼります。
いっぽう、アメリカやドイツでは、障害をもつ医師や看護婦もまれではなく、教育を受ける上での支援も充実しています。各国では1990年代、差別禁止法の制定(米・英)をはじめとして、人権法制に差別禁止が次々ともりこまれてきました 。
等しく労働権をもち、生活できる水準の所得を得る権利は、人権の基本です。しかし日本では、障害者の労働権規定がなく、「最低賃金法」では障害者に適用除外規定を設けています。適用除外を受けている人の大半は知的障害者、精神障害者です。適用除外のために、多くの障害者が、最低賃金をはるかに下回る月5万円といった低賃金に固定され、自立生活から遠ざけられています。

政府の「障害者対策に関する新長期計画」(1993年)は、「精神障害、視覚障害等障害を理由とする各種の資格制限が障害者の社会参加を不当に阻む障害要因とならないよう、必要な見直しについて検討を行う」としています。「障害者プラン」(1995年)においても「障害者に対する差別や偏見を助長するような用語、資格制度における欠格条項の扱いの見直しを行う」とありますが、取組はきわめて遅れています。
1998年3月末、総理府から各省庁への調査結果として、条文数79(法律実数59)の欠格条項が明らかにされましたが、調査にもれている欠格条項が多数あります。当会の調査では法律実数で300本近く判明しています。
個々の障害者が、「障害」を理由として、または不利な基準によって社会参加の機会を奪われないこと、必要な援助を権利として受けることができる環境づくりを、今こそ進めていかなければなりません。私たちは、そのためにも大きな壁となっている欠格条項をなくすために具体的、建設的な提案を行いたいと考えています。
こうした観点から、以下に私たちの基本的な考え方を提起します。

1 従来の医学的判定最重視から、個人と環境との関係に、基準を移すべきです。
欠格条項は、障害ゆえに「できないこと」に着目し、医師等が「できない」と判定した人を排除するものです(医療モデル)。
しかし国際的には、障害者をその個人と社会環境との関係でとらえ、「できること」はなにか、どんな支援が必要か、という観点が、政策の基本になっています。(医療モデルから、自立生活モデルへの転換)。
日本の現状から見れば、「絶対的欠格」か「相対的欠格」かに関わらず、まず欠格条項をなくして、個人の能力・適性の検証をおこなうべきです。
具体的には、ある資格を取得したり職業に就く際に、またはある行動をする際に、本質的に必要な能力に本人が対応できるかどうか、どのような支援があればできるか、障害当事者を主体として、個別具体的な検証が必要です。
たとえば聴覚障害者が病院外来医師の仕事をする場合、必要なコミュニケーション・サポート(人的支援・補助機器利用)の上で診断・処置を行うことが、本質的に求められる能力です。もし、音声だけでコミュニケーションできるか、電話ができるかを条件にするならば、間接的な聴覚障害者排除です。
たとえば実技やペーパーテストの実施についても、非障害者を前提とした従来のあり方を見直す姿勢をもって、必要な人的援助、補助機器使用、点字や手話その他の情報サポートなど、個別の支援・配慮を行うべきです。そうしなければ、当事者の力を結果に反映できず、不平等です。この視点をはっきり持つ必要があります。
雇用の現場では、「障害者にはとても無理・危険」扱いから、「個人への支援・工夫しだいで問題ない」と大きく変わった実例が蓄積されています。それは、職場全体の仕事のしやすさや安全性向上にもつながっています。そのように変わったのは、職場実習の積極的な取り入れ・ジョブコーチ派遣・工程分析や設備改善のアドバイス・個人に合わせた道具の開発・コミュニケーションサポートや、グループホーム居住、余暇活動など生活面を含む、適切な支援が行われたからです。これらの経験からも積極的に学ぶことが必要です。

2 制度的なバリアフリーを進めるため、これまでの「禁治産・準禁治産者」への行為制限も再検討すべきです。
この度の成年後見制度の改正においては、「禁治産・準禁治産者」という用語が廃止され、基本理念には「自己決定の尊重」と、柔軟かつ弾力的な利用しやすい制度にするということが明記されています。この理念に基づいて、新たな視点から成年後見制度を考えるなら、本人の個別具体的な状態の判断がより深く求められることになります。単に用語の廃止に伴う「言葉の言い換え」に終わるのではなく、本人の自己決定と自立を最大限尊重し、いかに必要な援助をおこなうかが重要です。

3 「資格」「免許」の制限にとどまらず、行動の制限・施設利用等の制限等のように、障害を理由とした不利益・不平等な扱いを定めている規定を幅広く見直し、制度的バリアをなくしていくことが求められます。
たとえば「禁治産・準禁治産者」を対象とする包括的な欠格条項、最低賃金法における障害者適用除外規定、精神病院の入退院の自己決定制限、公営住宅の単身入居禁止、乗物等の利用制限、などがこれにあたります。

《要望書項目》

つきましては、以下の点について、ご回答を要望します。
1..当会の「基本的考え方」について、貴職の見解を明らかにしていただきたい。

2.総理府の調査結果における警察庁所管の案件について理由を示されたい。

○「自動車等の運転免許」については、精神障害、精神薄弱、てんかん、視力、聴覚等が絶対的欠格事由になっているが、その理由を明らかにしていただきたい。

○「警備業」を営むこと及び「警備員」については、精神障害が絶対的欠格事由になっているが、その理由を明らかにしていただきたい

○「風俗営業の許可」等については、精神障害が絶対的欠格事由になっているが、その理由を明らかにしていただきたい。

○「風俗環境浄化協会」の「風俗営業の許可基準に係わる調査の業務」については、精神障害が絶対的欠格事由になっているが、その理由を明らかにしていただきたい。

○「ダンス教師資格者」については、精神障害が絶対的欠格事由になっているが、その理由を明らかにしていただきたい。

○「鉄砲又は刀剣所持に係わる許可」については、精神障害及び心身耗弱(者)が絶対的欠格事由になっているが、その理由を明らかにしていただきたい。

3.今後の欠格条項の見直しに対する警察庁としての基本姿勢と方針を示されたい。


警察庁との交渉議事録



○:会からの発言/■:警察庁側の発言

【運転免許課(原・石川)】

○:会からの発言/■:警察庁側の発言

○要望書の説明をしたいと思う。前文は厚生省交渉と共通にしている。基本的考え方の2枚目に1.2.3とあるが、運転免許課としての考え方を説明して欲しい。

■道路交通法は88条1項で、精神病者・知的障害者・てんかん病者・目が見えない者・耳が聞こえない者に第1種・第2種運転免許を与えないという規定をおいている。これについては、要望書にもあるように、新長期計画・障害者プランなどにおいて決定されており、警察庁においても見直しを検討しているところだ。

○特に私たちが示している1.2.3についての見解をもうすこし。

■総論的な話だが、運転に支障を及ぼすか否かというところで、道路交通の安全と円滑を確保するという観点から、どのような状態の方に運転の支障があるのかということを考えていきたいと思う。

○総務庁の方でも見直すということになっているので、従来のように一律に除外をすることではなく、本人の事情に応じたものにしていくということで理解してもよいか。

■具体的にはこれから。道路交通の安全を確保するという観点から、変えていく点は変えてゆくが変えない点は変えないだろう。

○基本的な考え方1.2.3の3点については、基本的には了解頂けているか?

■おっしゃる趣旨については理解したが、私たちがやろうとしているのはさっき申し上げたこと。見直しの中でいろいろ研究を行い、その結果に基づいて必要・可能なものについては変えていく。道路交通の安全を確保する観点から制度として必要なものは残していくということ。

○具体的な各論に入るが、精神障害、精神薄弱、知的障害、てんかんなどの欠格条項の理由を明らかに。

■精神障害者ではなく、道路交通法の上では精神病者。この方々については道路交通の安全に支障を及ぼすであろうということで免許を与えない。それから、法上は精神薄弱ではなく知的障害であるが、これについては具体的な道路交通の場面において対応が難しいということで、規定をあたえている。てんかんであるが、発作が起こった場合に意識がなくなるということで道路交通の安全に支障がある。目が見えない方であるが、運転はできないであろうということで、免許をあたえない。耳の聞こえない方はクラクションや踏切の信号機など、自動車を運転するうえで必要な信号が区別できないということでである。口が利けない者は、道路交通法上、事故が発生した方には、事故が生じた際の救護義務が達成できない。けがをした人がいれば消防なり、警察なりに通報する、ものが落ちていたら連絡する、人が倒れていたら連絡する、ということができないだろうということで、口が利けない人はできないだろうということで。

○救護義務をみたせないということで。

■そうです。

○それ以外のことは、言語に障害ある方は別に問題ないですね。

■あるいは第2種免許の場合は事故の発生時に、乗客を円滑に避難誘導することに支障があると考える。

○言語も絶対的欠格条項?

■道路交通法では与えないということになっている。つまり、絶対的欠格条項。

○知的障害の場合、運転免許のペーパー試験は厳しい。あれを通過できれば運転実技に問題はない。法律で知的障害はだめだと書く必要はない。かつてはできるだけ免許を与えないようにして事故を防ぐということだったが、現在では地方では公共交通機関が不便だったりして、そこで免許を与えないということは移動権という人権の侵害である。人を頼らないと移動できないということも見直しのときの考慮に入れて欲しい。

■意見は承った。障害者についてであるが、試験に合格した人で知的障害に当たる方がいるとしたら、安全に運転ができるかどうかについて考えていきたい。生活のために必要不可欠であるという意見は分かったが、本人がけがなどをするなどの安全性のところを考慮したい。

○法律で禁止すると知的障害者は隠れて取ることになるが、こちらの方が危険。法律で禁止しなければ、知的障害をふまえた支援ということが警察官にもできるが、法律で一律に禁止すると、障害がないということになると、手助けもできない。

■交通の安全にどのような影響を与えるかということを考えていく。「隠れて取る」という前提には立ちにくいのでその点は了承して欲しい。

○精神障害を持っている人たちも、斉藤さんが言ったことが当てはまる。厚生省の発表では217万人の精神障害者がいる。日本の人口の50人に1人の発生率ということになる。東京はともかく地方に行くと車がないと移動が困難であるという状況。職業に就くときの条件にもなっている。そうすると精神障害を持っていても、免許を持っている人がかなりになる。しかし事実上は誰も持っていないことになっている。隠さないと仕事に就けないし、不安を抱えながら生活している。こうした現状はどのように考えているか?

■生活に支障を生じるという指摘だが、立場はよくわかった。しかし警察の交通安全を確保するという責任がある。どのようにマッチさせることができるのかという点から見直しを、障害者プラン・新長期計画の中で考えていきたい。

○2点あるが、1点は安全確保という点で、具体的に運転をしたことによって、安全を妨げるという例があったのかという点。もう1点は、試験をする際にいろんな障害を持った人にどのような配慮があるのか。

■配慮とは?

○ペーパーの試験の時に、点字があるとか。身体障害の人には何かしているのか、とか。

■交通事故の関係だが、基本的に免許を与えないという制度になっているので、運転をされて事故を起こしたということにはなじまないという観点で、数字は持ち合わせていない。与えないという制度になっているので、したということで、事故が起こったという数字は持っていない。

○そうすると、安全確保のための具体的な何かがあったわけではないということですね。

■事故があったという具体的なことはない。

○欠格条項の理由は法的には道交法の関係だということだが、友人に、そのとき重度の障害者が免許を取るという現実は殆どなかったのだが、無免許運転で逮捕されて裁判までやったことがある。法律をやぶって逮捕されたのは別にして、社会の仕組みの中で、障害者に運転させない、試験も受けさせないということがだんだん変わってきて、重度の障害者であっても、教習所でならったりして取れるようになってきている。これは法律に基づいているのか?

■バリアフリーを進めるという観点から教習所では、適性試験について相談員を置くなどの施策を進めている。身体の障害の関係で、道交法をふまえて、施行令という下位法令では、従前は「肘関節以上、・・・」の方には免許を与えないということがあったのだが、技術改善が進んで車を運転できることになっている。足とか活用されて運転できるという方には運転できるということになっている。

○そうであるならば、今の欠格条項の中で、視力の全くない人については無理だとは思う。しかしそれ以外については何らかの方法、もう少し考えればてんかんとか、聴覚障害とか、精神障害とかの人たちの運転をさせるということは可能なのでは?

■我々が障害者プラン・新長期計画をふまえて検討しているのは、現状の技術はどこまで進んでいるのか、治療の仕方はどうなのかというところまでふまえて考えていきたい。現状を調べているところだ。

○ぜひそれをやって欲しい。道交法が施行されたのは昭和35年。それから30年、40年近くになり、障害者をとりまく環境は変わっている。精神病者についても当時は殆どが病院にいたが、今はそれなりに地域に出てきて生活している人もたくさんいる。地方に行けば交通網が悪いところでも作業所に通うなどもしなくてはならないので、時代に見合った法律にして頂きたい。
法律の条文に欠格条項が入っているのであれば、欠格条項が正当であるという見直しのデータをとるべきだと思う。建前論では与えないことになっているが、現実的には実際はみんな取っている。あくまで建前論を貫いていけば、道路の安全にも支障が出てくる。建前論を少し崩して現実を見据えた法律にしてほしい。ぜひデータをとってほしい。こんなに事故を起こしているというデータがあれば私たちも考える。

■要望の趣旨は分かったが、しかし制度の趣旨があるので、そこと相反する制度を警察として認めるという形になるということはできない。

○聴覚障害については、それなりの経過がある。1967年から74年ぐらいの間に裁判などもあって、その中で運用上は10m離れてクラクションが聞こえればいいということになったという。それに至るまでにも警察庁との交渉が数回あった。最近そのように改善されてきて、あらためて聴覚障害の団体が交渉して、何か問題があったかと聞いたところ、事故発生率は健常者と同じ程度であるという回答があったことを聞いている。

■それはちょっと知らない。

○知っているかどうかはともかくとして、そういうように調査をしようと思えばできるはず。

■運用といったが、補聴器については道路交通法施行規則で補聴器をつけて音が聞こえるかという試験でやっていて、法令に基づいて技術の発展をふまえた措置をしている。

○精神障害だって同じこと。医者と相談をしながら、数年間症状が出なかったり、自分をコントロールしながらやっていくということもできるように少しずつなっている。そういった個別の事情に合わせて運転免許が発行できるかどうかを考えるべき。精神障害だから絶対欠格ということになるというのは、従来の差別的な偏見のままで見ているからではないですかということになる。変わってきているということはわかりますか?病院から出て地域でふつうに生活する人が出てきている。その中で状況をふまえた改善が可能なわけですよね。

■状況をふまえたというか、うちとしては道交法の目的に照らして改善が可能かどうかを検討したい。

○私が言いたいのは補聴器をつければ聴覚障害者が可能になったと同じように精神障害も同じであるということ。

■これからよく調べたいと思う。

○精神障害者も薬の服用も含めて、状態が改善されることもある。鬱病も精神病なんですよ。鬱病が免許更新時に見つかれば、排除ですよ。でも黙っている人がたくさんいる。警察にもたくさんいると思います。黙っているだけで、免許の更新ができるだけで。最近は増えてきているし。そういう時代なんですよ。精神障害者の事例でいえば、かなりの人が免許をとっている。欠格条項があるために、屈辱的な対応をされるということがある。一方的に呼び出されて診断書をつけて、持って行くとコピーを欲しいとか、「なぜか?」と言うと跳ね返されたりとか、そういうこともあり、なくして欲しい。
もう一つは根拠を示して欲しい。知的障害があっても、試験にパスすれば問題はないわけですよね。それなのにあとから呼び出しをかけてチェックするなどの差別的な待遇も生まれてくるし、そう感じる人も多い。

■もしそういう不適切な対応があったとしたら、現場での対応を……。

○現場の人は法を遵守するという態度だから正確にやろうとしている。当然取れないものだという対応をしてしまう。

■知的障害については、運転免許試験だけでなく具体的な交通の場でどうかということを考えていきたい。

○私たちが言いたいのは、法律や施行令に一律に障害名とかをあげるのをやめましょうということ。必要な能力や適正ということを書けばよいのであり、こういう人はだめだ、とくくってしまうのではなく、精神病者にもいろいろな人がいるのだし、除外することは可能性を奪ってしまう。そこをもう一度考え直してほしい。

■趣旨は存じ上げている。

○でも、目が見えない方は……というような答え方しかできないわけですよ。抽象的な説明にしかならないではないか。

■それは、現行の説明を求められたので。

○やっぱり変えていかなければということだ。障害名や疾患名で一律に規定を設け続けることはやめようということを、お願いしたい。あと、どのような補助的な手段があるのか、聴覚障害者の補聴器だけではなく、精神障害、知的障害の補助的な手段があれば、なんとかなることも多い。現場の当事者の話を聞いていかないとわからない。これから私たちもまた来ますので、改善につなげて欲しい。

○精神障害者が、個人的に、なんでいけないと思います?

■最初に言ったように、道交法の交通安全にどう関わることですので。

○免許をとっても下手な人はたくさんいるわけですよね?障害があるから下手でぶつけるのか、ということではないでしょう。なぜ障害者だと、交通の安全を妨げるようなことになるのか?具体的に?本人だと責任がとれないとか?
具体的にいってもらわないと、私たちも対応ができない。警察がお望みのような交通安全に協力するために。どうして障害者がだめなのか分からない。薬飲んでいるからダメなのか?みんな風邪薬ぐらいなら本当はダメでも飲んでいる。障害者でも状態が悪いと恐くて運転しない。いい時でもだめだと言われるのは耐えられない。差別だと思う。精神障害者の場合は装具をつければいいという可能性はないんですよね。何が障害になるのかを聞かせていただきたい。
マニュアルにはなんて書いてあるのですか?そういうものはないのですか?1960年代当時に精神障害者に持たせないという理由が、もっときちんと文章になっていたと思うが。

○それが具体的にないから問題なんですよね。何が問題なのかは聞いておきたい。

■道交法、車を危険なく運転できるか否かという観点から、具体的にといっても、なかなかそれくらいしか思いつかない。

○アメリカでは目の不自由な人でも取らせてくれる。細かい条件が付いている。アメリカではより詳しくて、夜運転してはいけないというような条件がある。これをつければ免許を出せるということもあるのではないか?何が危険か、何が安全かということで。

■条件を付けて、条件をいかに守るかということもあるが、条件についても合わせて検討したい。

○そこもある。自分で自分のことを判断できないんじゃないかという見方が根強くあるからこういう欠格条項があるという面もあると思う。自分が運転できないと思うときはやっぱりしない。健全者も同じ。障害者だからというところで考えると一律の括り方になる、障害者は自己決定できると信頼してもらって見直しの中に活かして欲しい。

■ご要望は分かった。

○時間もあるが、よろしいか。趣旨はわかっていただけたと思うので、具体的に、外国の事例も含めて調査をしている最中なので、具体的な案もできたらぜひ相談に来たいので、積極的に受け止めて欲しい。

■ご要望は分かった。

【生活安全企画課(警備業担当:村井)】


○:会からの発言/■:警察庁側の発言

○要望書を見てもらっていると思うが、基本的な考え方に対する見解をお答えして下さい。

■運転免許課がどのような答えをしたかわからないが政府に沿って警察庁も見直していく。具体的に質問してもらった方が答えやすいが。
生活安全企画課ということで、いわゆるガードマンについてです。
警備業法は昭和47年施行だが、警備業を営む警備業者の欠格条項として精神があった。警備員も精神病者は欠格条項がある。趣旨は警備業は施設や他人の生命・身体・財産を守る業務なので、何が起こるかわからない現場においていかなる状況に置いても的確な対応をしなければならないという、警察官に似た困難な業務。それゆえ、精神病者を欠格条項にしている。警備業では法人組織が多く、役員にも欠格条項がある。現場での警備員だけでなく、法人の役員については現場に出るわけではないという意味で、見直しの中で検討をしてゆく。
警備業については全国警備業団体という業界団体と検討してゆくし、精神障害についての専門家にも相談する。具体的に精神障害の人が警備員になりたいのになれないという要望が最近までなかったので見直しが今まで甘かった。警備業の中にもいろいろな種類があるので一律排除については検討の余地あり。絶対的欠格を少なくとも相対でよいのでは、という内部の意見もあるので検討してゆく。

○これは精神障害だけですよね。例えば、身体・視覚・聴覚はなれるのですか?

■なれる。警備員は全く資格制度ではなく、警備業をするには都道府県の公安委員会に申請書類を出すが、その際、診断書添付。警備員は業者ができる限りで診断しなさいとなっている。明らかに判断できなければなれる可能性がある。

○実際、そういう隠してなっている人が多いはず。今までそういう案件がなかったのはそういうわけでしょう。

■医師の診断書抜きに判断するのは困難で、精神病者の範囲が都道府県の担当レベルで理解できないので診断書に頼らざるを得ない。
警備業法制定は47年だが、昭和57年の改正に精神を欠格条項にした。57年改正は47年が必要最小限度の規制として届け出制だったのが、改正時に認定制度にして、暴力団関係とのことが問題になったので、厳格な欠格条項を設ける必要があるということがあった。現実問題としてその10年間で精神が具体的問題を起こしたということはなかった。つまり、他法令と横並びにして作ったのではないかと想像できるが、当時の資料を見てもよく分からない。

○警備業は難しい仕事だといったが、軽微な簡単な仕事もあるといっていたが具体的な分類は?

■まず、入り口の出入りのチェックなどの施設警備は比較的老齢の人が多い。突破した不審者の取り押さえができるかどうかの問題があるが、それは補完できる。そういう仕事なら精神障害者とかでもできそう。最終的にはユーザーがどの程度警備員に求めるかということもある。
欠格条項をなくしても積極的に業者が雇うかどうかは疑問があるが、改正する価値はある。

○相談に来る人でも警備員をやっている人はいる。相対的欠格条項にするといっているが、自分の具合が悪ければ、採用試験があればセレクトされるわけだ。そこにいって面接されるわけだから、わざわざ欠格条項を設ける必要があるのか。面接をすればよいのであって、何も障害者だからといって一律排除の必要はない。
法律にこういうことが書いてあれば少ない可能性がもっと可能性が小さくなる。

■業務に耐えられるよい人を選ぼうという考えがあるので取捨選択されるのであるから、法律の条文としての必要性ということですね。それはよくわかったので検討したい。

○将来起こす行動の可能性を精神科医が予測するのは無理という世論とか社会的通念があるし、医者の中にもそう言っている人がいる。しかし、医者の考え方によって診断書はかなり左右される。医者が患者に対して絶対的な権限あり、しかも科学的でない。精神の場合は他の障害と違って微妙であるから医者に左右されてしまう。

■私も不勉強であるから、逆にお聞きしたいが、精神病者という概念の定義を法律で定めているものが実はない。厚生省に問い合わせてみると、薬事法の解説本にあるということだ。精神障害者よりも精神病者のほうが範囲が狭い。
典型的な精神病は精神分裂病。世にはっきりと定着しているそういうものまで医者の診断書に頼り切っていることがあれば問題だ。精神病者の定義は厚生省に問い合わせてもはっきりしなくて、薬事法の解説本にも、「精神分裂・躁鬱など」となっているだけで、「など」の範囲が分からない。

○一番素直な考え方は、通院している、入院歴があるものだと考えている。警備業は一時期、精神障害者が就きやすい職業だった。決められたことを守る、仕事が夜だったりして、なりやすく、なりたい職業だった。現に多かった。夜の仕事なので通院もしやすかった。10年後の改正時点で、事故もなく、劣悪な労働条件だったのに、それでも全国警備業団体が事故から遠ざけたかったという思惑を感じる。

■当時の資料がないので何とも言えないが……。

○当時の改正の経緯をちゃんと検討した方がよい。具体的問題がなかったのに、というのが。

■今の感覚ではそうなのだが。

○暴力団は警備員にするのに反対だが、警備業は問題ないはず。それだけ警察は精神障害者に対する偏見や差別があると思う。精神分裂病の人が精神科医になったという事例がアメリカにはある。一般的に精神障害はそのまま変わらないものと見られがちだが、実際には症状が軽くなったり何年も症状が出ないことがある。アメリカのADAでは精神科の前歴があるということで差別すると罰せられる。以前の通院歴と、今の病気の区別をするべき。

■私たちはそのように考えていない。必要なときに診断書で現在精神障害ではないとさえ書いてあれば過去の病歴を問うてはいない。治ってはいないが今の生活に支障がないという場合が難しい。

○医師の診断書はどのような項目になっているのか。

■項目までははっきりと把握していないが、診断書に精神病者に該当しないということが書いてありさえすればよい。精神障害にあたるか否かはっきり書いてないと我々が現場で判断することになるので、どちらかを明記するようになっている。

○個として判断しているのではなく、医者に行けば必ず前歴が問題になる。あまり精神科医を信用するのは問題がある。
人間は変わってゆくし、特に精神障害は波がある。新しく病気になった人で入院することなく軽いまま終わる人もいる。そういう人が最近は多いのに、法律で一律に排除することが問題。

■意見交換したことがないので全国警備業協会はどのような見解かはわからない。この団体は唯一の警備業の全国団体。

○かなりの発言力があるわけですね。

■法改正しないで欲しいと、あまり言わないと思うが。

○雇っている人が辞めさせたいときに、精神科に行って来いといった事例があったのか。

■都道府県レベルであったのかどうかも、わからない。医師の診断書は事務的に扱われる。

○昭和47年にできたときには経営者だけが欠格条項だったのか。

■全て昭和57年に経営者も警備員も精神障害者の欠格条項が入った。今度の検討課題は経営者や理事は実際の実務には携わっていないので当時の欠格の理由にはあたらないということ。当時経営者が欠格条項になった経緯はわからない。

○わからないことを調べて欲しい。調べてわからなかったら、わからなかったことを報告して欲しい。公安委員会についてもう少し教えて欲しい。

■各都道府県の警察を管理するのが各公安委員会。警察庁を管理するものとして国家公安委員会。いわゆる職業的な警察官が委員にならない行政委員会。政治的影響を排除するための仕組み。地元の名士などが委員になる。

○指定された医師というのはあるのか。

■指定医の規定はあるが、ほとんど利用されていない。行政手続法の適用除外の中にあり、指定した医師が判断したことは聴聞で争えないという規定になっている。

○これは不服の申し立てができないということにもなりますよね。

■行政手続法の行政不服審査法上はできないが、裁判では争える。不利益な処分をする前の聴聞については行わなくても良い。

○事後の不服申し立てはどうなのか。

■規定上は指定医師制度とは関係ない。

○指定医師は公安委員会で指定されるのか。

■そうだが、強制的な制度ではないし、利用もあまりされていない。

○時間もないがまとめると、警備員と経営者の違いを考えて欲しい。警備業を一律に考えるのではなく、具体的に可能な仕事を考えて欲しい。いずれにせよ、相対欠格条項にして欲しい。

■どういう精神障害者ならば、こういう仕事ができるという具体的な意見が頂けるならありがたい。

○ただ、事例が出たときに精神だったということで仕事を失うおそれがある。

■プライバシーに関するところを請求するつもりはない。

○私たちの立場を明らかにしておくと、とっさな判断や的確な対応の適正判断テストをすることに反対しているのではなく、障害者ということでの一律排除に反対している。そのテストの際、精神科医の診断書はあてにならない。お金と労力の無駄になる。業務分析をしてきちんとした適性が明らかになるならば反対はしない。

【生活環境課(風営適正化法担当:楠・中山)】

○:会からの発言/■:警察庁側の発言

○前文は各省庁への要望書に共通のところで、考え方を3点示している。内容については理解してもらっていると思うから、考え方として何かあったら話していただきたい。

■欠格条項については政府と同じように見直しの方向で進めている。大きな方向としては政府全体と同じでなくしてこうという方向だと思う。

○具体的に、要望事項としては「風俗営業の許可」等については、精神障害の絶対的欠格事由になっているが、その理由、「風俗環境浄化協会」の「風俗営業の許可基準に係わる調査の義務」については、精神障害が絶対的欠格事由になっているが、その理由をそれぞれ明らかにして欲しい。また、警備業の話でも出たが、精神病者とは書いていないが、実際には精神病者の人が問題にされていると思うので、そのことを前提にして説明をして欲しい。

■欠格条項の理由だが、風俗営業の法律は、バーとかキャバレーとか、営業の営まれ方によっては売春や賭博などにつながりやすい営業形態であるため、健全に営んでいただこうということで欠格条項を設けている。その欠格条項に精神病者や犯歴(犯罪歴)のある人、行政処分を受ける人などが入っている。精神病者が入っているのは、風俗の営業の性質として、適正に営まれない場合には、法律に違反しやすいということで、欠格事由にしている。精神病者の範囲はいろいろあるが、風俗営業を営むのに適切ではないという考え方に基づいている。調査の業務の件は、風俗営業は人的欠格だけでなく、営業所の設備についても制限があり、各都道府県に風俗環境浄化協会があるが、そこに委託してその営業所の設備が、整っているかどうか調べてもらっている。その調査する者の欠格条項にも精神病者が入っているのは、きちんと法律に基づいて設置されているかどうかを確認してもらうということで、規定を設けている。

【風俗環境浄化委員会】

○:会からの発言/■:警察庁側の発言

○調査員のことだが、風俗環境浄化協会というのはどういう性格の団体?

■これは各都道府県で、公益法人の中から公安委員会が指定することになっている。活動としてはピンクチラシなどの苦情を受けて処理、風営適正化法に違反をしないよう、経営者に啓蒙活動をするとか、設備が規定にあっているか調査をすることなどを業務にしている。

○法人格としては?

■ 法律では民法法人ということになっている。

○人については?

■調査員になる資格はない。だが、風営適正化法についての知識を業界の中で教えてもらうことになっている。

○これも結局採用にあたって適正かどうかは医師の診断書が義務づけられているのか?

■詳細な手続きは定めていないので、協会の方で判断してもらう。公安委員会は民法法人の団体を都道府県風俗環境浄化協会として指定し、団体は公安委員会からの委託を受けて調査を行うことができることになる。苦情処理だけではないがそういうことも業務としている。

○今の話では、医師の診断書は特に必要ないという説明でよいのか?

■そういう職に就くにあたって、法律上はそういうものを添付しろという規定はない。

○ということは、精神障害かどうかというのは、最初から自分が精神障害であると言って面接に行く人はいないので、それを隠して仕事に就くということが多くある。この場合も、調査員や風俗営業者になろうと思った場合、どこで判断するのか?

■知っている範囲内で、実際に、風俗営業に関してそういった問題が生じたということは把握していない。仮にあったとしたら、そういう方が応募してきて、法律の知識などがきちんとできることであれば問題はない。話をしていて、大丈夫かなということがあった場合は訊く。

○ だからその人が精神障害だとは限らないでしょう。

■そこは実質的な判断になると思うが。

○必要な能力や適正はあると思うが、精神障害ということで規制するのはおかしい。面接でしゃべり方がおかしいということで、精神障害だからだめだということになってしまう。

■それはその場で判断するということをしている。

○判断は協会の調査員がするのか?この法律の経過はどうなっているのか。

■風俗環境浄化協会は昭和59年の改正で設けられ、欠格条項もこのときにできた。59年の改正でこういった制度が新設され、そのときに欠格条項もできたことになる。

○調査業務に就いているのは何人くらいいるのか?

■県によるが、各県数人程度。

○精神障害で問題になったことはない?

■把握している限りではない。

○どういう人が多く調査員になっているのか?

■詳細な数字はないが、警察のOBがついていることもあると思う。

○調査員の主な職務としては、営業所の設立基準にあっているかどうかを判断すること、苦情処理をすることなのか?

■苦情処理については別のことで、団体の業務。調査員は事前の段階で設備の調査をする。

○確認だが、風俗営業の許可というのは、判定をする場合、医師の診断書の提出は必要なのか?

■従前は必要ということだったが、昨年改正して提出は必要ではないということになった。施行の総理府令の改正ということ。

○基本的なこと。これらの資格に精神障害だけではなくて、犯罪歴のある人、何らかの行政処分を受けた人も処分すると規定されているのか?

■欠格事由として禁治産者、準禁治産者、破産者、犯罪歴のある人がある。犯罪歴としては一年以上の懲役、風俗営業をやっている上で犯しやすい犯罪、売春防止法、職業安全法などに違反して罰金以上に処せられて5年以上経っていない人。あとは暴力団。それから、精神病者、アルコール、大麻、阿片、覚せい剤中毒者。許可の取り消しを受けて5年経っていない人。

○風俗営業の許可については、医師の診断書はいらないことになったが、どこで判断するのか?

■政府全体で見直しをしているのだが風営適正化法の関係だと、精神病者の扱いは検討しているが、医師の診断書で画一的に判断するのは難しいということで、添付は要しないということにして、運営するのにあたって、難しい人は実質的に判断をするということになっている。

○風俗営業の許可をだすのは?営業の中で公安員会が判断するということ?

■明かに許可を与えると問題だというときには許可しないし、具体的に営業の中で違反や精神障害が著しいときは、事後で取り消しなりの処理できるということで、事前の添付書類は求めない。

○公安委員会の判断だけで取り消しができるということ。

■一応、許可を申請するときに欠格事由に該当しないという誓約書を出してもらうことになっている。自己申告だが、欠格条項にあたらないということを出してもらう。その後、精神病が著しく営業活動ができないと判断できれば、営業期間を停止するなどで対処判断できるということ。

○困って対応できないということはあるのか?

■実際に許可を与えなかった事例はない。

○ということは、あっても意味がないということですよね。

■それはわかりにくい。そもそも営業したいという人がどれくらいいるのかということもあるし、一般的にやりたいといってすぐに許可申請するような業種でもないから。

○具体的には事業主だけが欠格条項の対象か?

■個人の場合は個人を。法人の場合は役員を見るということ。

○近年、売春も社会問題になっていますよね。こういうものを作っておいたけれど、売春の問題の規制にはなんらも効かなかったわけですよね。

■欠格事由の扱いについては検討しているが、精神病者に限らず一般に欠格事由の扱いであるが、営業に関して問題があるというカテゴリーがあったとしたら、それは残す。だが、問題がなければ欠格条項がなくせるのかということになると、そうではなく、個別な判断がいると思う。適応がないだけで直ちに外せるのかというところで、なお議論したい。

○犯罪者を見るのと同じように見るということでしょう?

■犯罪者と同じように反社会的だとか、そういうことではなく、風俗営業を営む上での問題がないかという観点から。

○もともと性質が健全に営まれるべきだというところから欠格条項になったということですよね。そこからいうと、なぜそこで精神病者、禁治産者、準禁治産者なのかという合理的な理由があるのか、あるとしたら何なのか?精神障害を持っていると、風俗を乱すというふうに見ているということ?

■精神病者だからということではなく、営業するにあたって、ある意味ではいかがわしい面があるので、適正さを欠くと法律に違反することになるので、判断能力が必要だろうということになる。

○精神障害がどうしてでてくるのか?

■精神病という概念でとらえるのではなく、営業の能力というところで見たらどうか、というところ。


【ダンス教師資格】

○:会からの発言/■:警察庁側の発言

○もうひとつ、ダンス教師資格者というのは?

■これは昨年の改正でなくなっている。欠格条項以前に資格制度そのものがなくなっている。資格がいらなくなったわけではなく、欠格事由とかではなく、ダンスを人に教える能力があればよいということになった。前のように公安委員会に登録してということはなくなった。完全に任意ではなく公益法人で試験をやっているので、試験や講習を受ければよいということになった。

○そいういう団体が、講習にあたって精神障害は外すということがあると思うが。

■去年の11月に改正されたが、把握している限りでは……。

○去年の11月に変わったのですね。一度それ、ちゃんと調査された方がいいと思う。私たちもそこまでなかなか調査の手が伸ばせないので、それはいずれ問題になると思う。業者の方にどこまで人権上の理解を促しているのか、ということ。人権上の問題から理解されていないなら、今まで法律にあったからついついそれを使ってということはよくあり得るケースなので。また、今後の見直しに対して、浄化協会とかからの意見はあるのか?

■政府全体の見直しことで進めているので、そういった議論もふまえていくことになる。

○むしろ根拠がないので、と警察庁の方から言わないと。

■国の法令に定めているので、警察庁の判断に最終的にはなる。

○話がずれるが、公安委員会というのは?地元の名士など?公安委員会の任期、どんな人に?研修制度をやってもらうシステムはどうなっているのか?

■公安委員は県の規模によるが3人から5人。一応、基本的には都道府県の判断で任命することになる。それなりに地元でいろいろ名士というか、警察なりをめぐる問題に関して知識・人格を有している方ということになる。

○公安委員会法みたいのに書いてあるのか?

■警察法の中に都道府県公安委員会の規定がある。

○風俗環境浄化協会と公安員会との関係は?

■各県の公安委員会が許可の主体になる。風俗環境浄化協会とは各都道府県につき1つ置かれることになり、民法法人の中から指定をするということ。例えば、埼玉県公安員会が団体の中から風俗上の問題に関してできる団体を指定するという形になっている。

○ 公安委員会のスタッフは?

■補佐するということで、都道府県警察が事務局をやっている。

○許認可権に関しては公安委員会ということですね。欠格条項の問題から言うと、医師の判断で精神障害にあたるかどうかというのはどこで判定するのか?

■制度としては、公安委員会が協会を指定するが、協会が調査をするにあたっては欠格事由に該当する人は採用してはならないということになっている。

○どこで判定するのか?面接の段階でというのは根拠があるわけではない。少し話したくらいで精神障害かどうかわかるのか?

■業務に許可を与えるのに著しく問題がある人を判定することになる。

○採用のときには関係ないということですね?調査という業務の中でということですね。

■はい。

○公安委員会には、その人の経歴というのは、仕事上わかりますよね?

■全部わかるわけではないが。

○公安委員会について聞きたかったらどこに行けばよいのか?責任者は誰なのか?

■公安委員会制度は独立性を保っているので、直接聞きに行くのがよい。

○全国の公安委員会をある程度統括する機関は?

■国家公安委員会については警察庁のものに聞いていただければ。事務局という性質のものはなく、最終的な決裁を公安委員会が行っているということなので、公安委員会に行っても直接答えられないかもしれない。

○公安委員になる欠格条項はないんですよね。

■それはないが、警察法の中にこういう者の中から選ばれる、ということになっている。

○今の公安委員会の話というのは、風俗営業の許可の方ですよね。営業の許可は担当官庁というのは公安委員会でいいですよね。協会の方の調査員については、入り口で精神障害とわからない限りはどうにもならないということですね。

■法律上の事前の規制ではない。実際の業務でということになるだろう、ということで。

○ただ、実際上は絶対欠格ということになっているんですよね。

■現場で判断をしてもらうということで。これをもってこいという形にはなってないので、協会の方の判断で、変だなと思えば診断書を出してほしいということにもなりうるということ。

○今後の見直しについては、風俗営業の許可については、昨年の改正で医師の診断書はなくなった。実際の営業の業務に就く中で問題があればということですよね。

■事前に明かにわかれば許可を与えないということにはなると思うが。

○警備業の役員については欠格条項を設ける必要はないという話だったが、それはもちろん風俗営業でも対象にしていただきたい。直すのだったら足並み揃えて欲しい。あと結局、協会と話をしないとわからないということですね。

■おそらく実際に調査員になっているのは警察のOBが多い。実態として、そういった意味での問題は生じていない。協会で聞いても、納得の得られる答えはなく、国家公安員会規則で設けているのはむしろ私たちの方であるから、検討していることに反映させていきたいと思う。今日の話の中で、なんとなくそちらの考えも分かったので。

○そうです。風俗を乱す人の中に精神障害が入るのかという合理性がないじゃないですか。

■差別的な意味ではなく、一般的に営業をしたら問題があるのではないかということで。

○問題があるということで入れるということは社会的にもそういう見られ方をされるわけですよ。条件を記載すればよいだけであって、そういうふうに考え方を作りかえて、必要な要件は何なのかをきちんと考えて、障害名などでくくるというようなことをしないで欲しい。営業ができる能力を判断するというところで、やっていただきたい。

■これをふまえていろいろ検討したい。

○ダンス教師についても、実際の問題があるので、募集要項も含めて規定を調査する必要があると思う。よく起こりうることですので。

【銃器対策課(銃刀法担当:山本・友永・小竹)】


○:会からの発言/■:警察庁側の発言

○基本的な考え方を、前文のところで示した。具体的な各論でそのあたりも含めて説明して欲しい。鉄砲・刀剣類所持に関わる許可について精神障害・心神耗弱者が絶対的欠格条項になっている理由を説明して欲しい。

■銃砲・刀剣類取締法で殺傷力のあるものの所持を規制している。一歩間違えれば、銃砲・刀剣類は犯罪に利用されるし、事故を引き起こす可能性もある。原則として一般的に所持を規制し、必要に応じて許可を与える制度。許可についても5条1・2項で制限がある。精神障害・心神耗弱については、必ずしも精神学上の定義と一致しておらず、精神障害は通常の社会生活を営むのに困難なほど心身障害がある、心神耗弱は心神喪失には至っていないが自己の行為の結果に対して合理的な判断をするのに不完全な精神状態にある、と解している。こうしたことが困難なものには必要最小限の制度として規制している。

○所持への手続きを説明してください。

■3条で該当する場合を除いては所持できないとあり、法令に基づき職務のために所持する場合、公衆の観覧に供する場合、許可を受けた場合がある。許可については4条で、各号に該当するものは、所持について都道府県公安委員会に許可を求める。4条では10項目列挙してあり、ハンティング、有害鳥獣の駆除、スポーツシューティング、人命救助、試験研究、国際的な競技大会、博覧会などがあげられていて、使用目的を明らかにし、申請する。許可申請にあたっては18歳未満、住居不定など、いくつか人に関する規定があり、アルコール・大麻・麻薬・精神障害・心神耗弱がある。

○資格試験とかは?

■許可の基準をクリアーすれば許可が出る。所持をして使用ができる。使用にあたって狩猟をする場合は、また別の観点からの許可が必要。鳥獣保護法など。銃刀法はあくまで所持まで。

○使用については所轄が違う?

■狩猟目的の使用については環境庁所管の鳥獣保護法。

○博物館などで働いている人が、たとえば銃刀の博覧会を開くときに許可を求める?

■本人が所持する場合には許可を求める。

○許可願い・申請書の中に、精神障害者ではないかどうかの項目があるのか?

■特にそういったことを書いてもらう欄はない。医師の診断書がある場合はひとつの参考にするし、本人・家族と面接するときに判断。

○絶対条件ではないのですね。許可願いを出す時に診断書を出すことが。

■申請書の添付書類には4条に書類の提出を求めており、新しく許可を受けるものは医師の診断書を申請書に添付して提出。3年ごとの更新のときにも。許可申請書には書類の添付を求め、総理府令によって診断書があげられている。医師の指定はない。

○資格試験があるわけではないわけですね。一定の経験とかが申請にあたっての要件なのか。

■場合によって分かれていて、猟銃の場合は講習・検定の合格。

○講習の受講に欠格条項はない?

■例えば、技能検定は都道府県公安委員会が行う。5条の人の基準に適合しないと検定を受けることができない。猟銃の許可を受けたいものは技能検定を受けるが、検定の受験資格に欠格条項がある。元々許可を与えないので、検定の段階で欠格条項を設けて排除している。

○講習を受けるときも?

■講習の場合も検定と全く同じ欠格条項がある。

○銃を持つ仕事はたくさんあるが、これらも同じシステム?

■他の法律に根拠があるものもある。警察官職務執行法・自衛隊法など。そちらで与えられていて、銃刀法の所持許可の範疇ではない。

○危険を及ぼすことが理由になっているが。やっぱり精神障害ということがわかると危険だということか。

■ 面接なりしている段階でそこまで至らないとわかれば許可を与える。

○絶対欠格になっているのだから、障害の程度の問題ではないはずですよね。

■ 精神障害の定義の問題であり、通常の社会生活が営めるかどうか。

○ それでは相対欠格なのでは?

■相対欠格だと通常の社会生活が困難な人にも許可を出すことになってしまう。

○医師の判断は医学上?

■我々は医師の医学上の判断を参考にしながら、いろいろな面接・調査をしながら考えてゆく。過去の保護歴・入院歴なども照らし合わせて、こちらで判断する。

○許認可権は各都道府県公安委員会が持つのか?医師の診断書についても他の課と差があると思うが。

■法律によって医師の診断書をどの程度参考にするかは差があるのは制度の趣旨上仕方ない。

○こちらが考える相対欠格とそちらの考えとはずれがあるようだが。一般的にはある条件を満たすものは与えてもよい、という考え方は相対欠格だと思うが。

■個別に一人一人見て、我々は法律的な見方をするので該当した場合は絶対的に与えない場合は絶対、該当した場合でも与える場合が相対という呼び方をしている。呼び方の問題。

○私たちの理解は医師の診断書で該当するといえば絶対欠格になってダメだという考え方でいた。

■今おっしゃった言い方であれば、相対欠格であろう。

○通常の社会生活が営むことが困難かどうかの判断で、何を基準にしているのか。

■これまで保護されたことがあるのか、面接して問答したり、受け答えの中で自分の行為の結果について理解できるか判断する。銃の許可は新規で年間3万から4万件程度。精神やアルコール・麻薬・大麻・阿片・覚せい剤に該当して不許可になった件は毎年1,2件。事例として精神だけではわからない。命に関わるのでそう簡単に許可は与えられない。

○アメリカとかで銃刀許可については見直されているではないですか。通常の社会生活を営んでいると言うのはどういうところから判断するのか。

■犯罪を犯す可能性は犯歴から見る。この面接で見るのは意識をなくすかどうかなどを見るため。犯罪に関しては別途の観点からチェックする。

○面談形式だということが、どれくらいの時間?

■30〜40分、1時間ぐらい。訊くことがマニュアル化していて、申請書に事実関係の確認、5条の許可の基準に当たるかを一つ一つ確認してゆく。大きな六法には出ている。尋ねることは決まっている。その様子を見て判断することになる。精神障害に関するのは2号の部分。

○社会生活上ということだが、以前の入院歴とかには聞かれるわけでしょう?精神障害に当たるかどうかということでどのようなことを聞くかということまでは書いていないでしょう?

■そういったことが争われた判例もある。通常の社会生活が営むことが相当長期間あれば大丈夫であるとなっている。この判例では6ヶ月ではダメという判断。長野地裁昭和54年11月22日。

○精神障害は波があるわけで、その辺の判断は?

■ある程度長期間落ち着いているかどうかということ。そうすれば今後も続くと予想する。6ヶ月程度では足りないというのが判断。部内的には確かな期間の定めはない。

○それでは各都道府県の公安委員会の主観によって変わってしまうではないですか。

■基本的には将来的に安定した状態であるかどうかが判断基準なので、線引きはかえって柔軟な判断を妨げる。

○一方でそういう曖昧な判断をして、年金については1年半という区切りがはっきりしている。2年更新で。こっちはその辺が曖昧でないか。精神障害・心神耗弱を排除しただけでは事故は防げないと思うが。

■犯罪に利用するかどうかは、犯歴や暴力団加盟かどうかであって、あとは意識を失うかどうか。

○今までの事例は把握しているか?欠格条項に設けるだけの根拠があるからだと思っているが。

■許可を出したがてんかんにより取り消したというような、取り消しの事由については把握していない。3年の更新の度に医師の診断書を基に公安委員会が判断する。制定が昭和33年。制定時から欠格条項がついている。

○私たちの理解では、社会生活上のことを勘案していることは相対欠格だと思う。だが条文上は絶対欠格になっている。

■必ずしも医師の判断と違った例がどの程度あったかの数字的にはわからない。

○医師の診断のケース数と面談によって認定したケース数は統計上示すことはできますか?

■どこまでわかるかはわからないが。

○これからの社会生活に関してであるし、必要な支援などを考えてゆこうということだから。

■全体を今一度見直してみたい。
以上


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