厚生省との交渉
交渉報告
厚生省への要望書
厚生省との交渉議事録
【基本見解】
【医療従事者等関係】
【薬剤物取り扱い関係】
(薬剤師)
(毒物・劇物関係)
【美容師・理容師】
【絶対欠格から相対欠格への改定経緯、評価】
【今後の方針について】
厚生省との交渉報告
1999年4月21日(午後3時〜6時)「障害者欠格条項をなくす会(準備会・仮称)」としては初の、厚生省との交渉があった。厚生省は、欠格条項をもつ法制にかかわる、各部局の担当者係長級以下が出席(健康政策局、医薬安全局、生活衛生局、保健医療局、障害保健福祉部)。会からの参加者は、各種の障害者を主として、約16名。今回は、厚生省の基本見解と「欠格にしている理由」を中心とした交渉だった。
厚生省への要望書
1999年 4 月 21 日
厚生大臣 宮下創平 殿
(仮称)障害者欠格条項をなくす会
代表
大熊 由紀子 牧口 一二
準備会事務局 電話03-5386-6540
障害者の欠格条項の撤廃に関する要望書
貴職におかれましては、日頃より障害者施策の充実に尽力されていることと存じます。
私たち「(仮称)障害者欠格条項をなくす会」は、障害当事者が中心となり、関係者や市民に広く呼びかけて活動しています。
「障害者をしめだす社会は、弱くてもろい社会」という「ノーマライゼーション」提唱(国連・1980年)から20年たちます。「ノーマライゼーション」は、すでに国際的な共通理念となり、今では「インクルージョン」※が広く支持されています。
※インクルージョン(inclusion) 分けることをせず、個別の多様なニーズへの対応を基本にする。という意味で使われ、教育分野で実践が始まった。国際的な「ポスト・ノーマライゼーション」の考え方となってきている。
しかし欠格条項の存在は、日本がいまだに「ノーマライゼーション」以前の状態にあることを示しています。それどころか、欠格条項は「障害者には人権がない。差別してよい。」という法律上の宣言に等しいものです。市町村の条例や学校の受験資格・企業の採用基準などにも影響し、差別偏見を拡大し、はかりしれない損失を障害者と社会にもたらしてきました。恥ずべき人権侵害として早急に撤廃することが必要です。「法のもとの平等」「職業選択の自由」を定めた日本国憲法に反し、「障害者が、社会のあらゆる分野の活動に参加する機会の保障」を主旨とした障害者基本法(1993年)ともあいいれないものです。
約30年前から、障害者たちは、「できるわけがない」「あぶない」「ひとに迷惑をかけるな」など、たくさんの抵抗をこえて、自立生活に向かいました。施設や病院、在宅から、身体をはって地域社会に出ていきました。それは、高齢者にも住みよいバリアフリーのまちづくりの、大きな推進力になりました。ふつうの企業などで障害者が働くことにもつながっています。
たとえば障害者の自立にとって、住宅の確保はたいへん大きな問題です。介助の必要な障害者で、民間住宅に単身入居して自立生活をおくる人は、各地にいます。ヘルパーや介助者が家に通ってくるという形です。ところが、公営住宅ではそれができません。「公営住宅法施行令」に、常時介護が必要な障害者は「自立困難」として、単身入居を制限する欠格条項があるからです。
医師や看護婦になりたいという夢を、「目が見えない者、耳が聞こえない者又は口がきけない者には、免許を与えない。」という欠格条項(「医師法」など多数)によって絶たれた若者は、数知れずいます。当会の調査では、欠格条項のもとで障害者の就業禁止や何らかの制限を指定されている職業は、約340種にのぼります。
いっぽう、アメリカやドイツでは、障害をもつ医師や看護婦もまれではなく、教育を受ける上での支援も充実しています。各国では1990年代、差別禁止法の制定(米・英)をはじめとして、人権法制に差別禁止が次々ともりこまれてきました
。
等しく労働権をもち、生活できる水準の所得を得る権利は、人権の基本です。しかし日本では、障害者の労働権規定がなく、「最低賃金法」では障害者に適用除外規定を設けています。適用除外を受けている人の大半は知的障害者、精神障害者です。適用除外のために、多くの障害者が、最低賃金をはるかに下回る月5万円といった低賃金に固定され、自立生活から遠ざけられています。
政府の「障害者対策に関する新長期計画」(1993年)は、「精神障害、視覚障害等障害を理由とする各種の資格制限が障害者の社会参加を不当に阻む障害要因とならないよう、必要な見直しについて検討を行う」としています。においても「障害者に対する差別や偏見を助長するような用語、資格制度における欠格条項の扱いの見直しを行う」とありますが、取組はきわめて遅れています。1998年3月末、総理府から各省庁への調査結果として、条文数79(法律実数59)の欠格条項が明らかにされましたが、調査にもれている欠格条項が多数あります。当会の調査では法律実数で300本近く判明しています。個々の障害者が、「障害」を理由として、または不利な基準によって社会参加の機会を奪われないこと、必要な援助を権利として受けることができる環境づくりを、今こそ進めていかなければなりません。私たちは、そのためにも大きな壁となっている欠格条項をなくすために具体的、建設的な提案を行いたいと考えています。
こうした観点から、以下に私たちの基本的な考え方を提起します。
1 従来の医学的判定最重視から、個人と環境との関係に、基準を移すべきです。
欠格条項は、障害ゆえに「できないこと」に着目し、医師等が「できない」と判定した人を排除するものです(医療モデル)。
しかし国際的には、障害者をその個人と社会環境との関係でとらえ、「できること」はなにか、どんな支援が必要か、という観点が、政策の基本になっています。(医療モデルから、自立生活モデルへの転換)。
日本の現状から見れば、「絶対的欠格」か「相対的欠格」かに関わらず、まず欠格条項をなくして、個人の能力・適性の検証をおこなうべきです。
具体的には、ある資格を取得したり職業に就く際に、またはある行動をする際に、本質的に必要な能力に本人が対応できるかどうか、どのような支援があればできるか、障害当事者を主体として、個別具体的な検証が必要です。
たとえば聴覚障害者が病院外来医師の仕事をする場合、必要なコミュニケーション・サポート(人的支援・補助機器利用)の上で診断・処置を行うことが、本質的に求められる能力です。もし、音声だけでコミュニケーションできるか、電話ができるかを条件にするならば、間接的な聴覚障害者排除です。
たとえば実技やペーパーテストの実施についても、非障害者を前提とした従来のあり方を見直す姿勢をもって、必要な人的援助、補助機器使用、点字や手話その他の情報サポートなど、個別の支援・配慮を行うべきです。そうしなければ、当事者の力を結果に反映できず、不平等です。この視点をはっきり持つ必要があります。
雇用の現場では、「障害者にはとても無理・危険」扱いから、「個人への支援・工夫しだいで問題ない」と大きく変わった実例が蓄積されています。それは、職場全体の仕事のしやすさや安全性向上にもつながっています。そのように変わったのは、職場実習の積極的な取り入れ・ジョブコーチ派遣・工程分析や設備改善のアドバイス・個人に合わせた道具の開発・コミュニケーションサポートや、グループホーム居住、余暇活動など生活面を含む、適切な支援が行われたからです。これらの経験からも積極的に学ぶことが必要です。
2 制度的なバリアフリーを進めるため、これまでの「禁治産・準禁治産者」への行為制限も再検討すべきです。
この度の成年後見制度の改正においては、「禁治産・準禁治産者」という用語が廃止され、基本理念には「自己決定の尊重」と、柔軟かつ弾力的な利用しやすい制度にするということが明記されています。この理念に基づいて、新たな視点から成年後見制度を考えるなら、本人の個別具体的な状態の判断がより深く求められることになります。単に用語の廃止に伴う「言葉の言い換え」に終わるのではなく、本人の自己決定と自立を最大限尊重し、いかに必要な援助をおこなうかが重要です。
3 「資格」「免許」の制限にとどまらず、行動の制限・施設利用等の制限等のように、障害を理由とした不利益・不平等な扱いを定めている規定を幅広く見直し、制度的バリアをなくしていくことが求められます。
たとえば「禁治産・準禁治産者」を対象とする包括的な欠格条項、最低賃金法における障害者適用除外規定、精神病院の入退院の自己決定制限、公営住宅の単身入居禁止、乗物等の利用制限、などがこれにあたります。
つきましては、以下の点について、ご回答を要望します。
記
1.当会の「基本的考え方」について、貴職の見解を明らかにしていただきたい。
2.総理府の調査結果における厚生省所管の案件について理由を示されたい。
【医療従事者等関係】(条項数60/法制数15)
「医師」「歯科衛生士」「歯科医師」「診療放射線技師」「保健婦、助産婦、看護婦」「臨床検査技師、衛生検査技師」「臨床工学技士」「視能訓練士」「義肢装具士」「救急救命士」「言語聴覚士」は、
視覚、聴覚、言語の障害が絶対的欠格事由、精神障害が相対的欠格事由になっ
ているが、その理由を明らかにしていただきたい。
「理学療法士、作業療法士」「あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師」「柔道整復師」は、
精神障害者のみを相対的欠格事由としているが、その理由を明らかにしていただきたい。
「歯科技工士」は、
精神障害者を相対欠格事由、視覚障害者を絶対欠格事由
(聴覚障害者は欠格なし)としているが、その理由を明らかにしていただきたい。
【薬物等取扱い関係】(条項数31/法制数7)
「薬剤師」は、視覚、聴覚、言語の障害が絶対的欠格事由になっているが、その理由を明らかにしていただきたい。
「毒物劇物取扱責任者」は、視覚、聴覚、言語、精神障害が絶対的欠格事由になっているが、その理由を明らかにしていただきたい。
「特定毒物研究者」は、視覚、聴覚、言語、精神障害が相対的欠格事由になっているが、その理由を明らかにしていただきたい。
【理美容等衛生関係】(条項数10/法制数5)
衛生関係職種は、すべて精神障害が相対的欠格事由になっているが、その理由を明らかにしていただきたい。
「理容師」「美容師」は、てんかんが相対的欠格事由になっているが、その理由を明らかにしていただきたい。
3.「絶対的欠格」から「相対的欠格」に改められた結果に関する評価を示されたい。
精神障害者の場合、「栄養士」、「調理師」、「製菓衛生師」、「けし栽培者」、「診療放射線技師」
は1993年(平成5年)、「理容師」、「美容師」は1995年(平成7年)に「絶対的欠格」から「相対的欠格」に改められているが、見直しの際の検討経過ならびに改正後の施行状況、どのような変化が起きたか、厚生省としての評価を、それぞれ明らかにしていただきたい。
4.今後の欠格条項の見直しに対する厚生省としての基本姿勢と方針を示されたい。
以上
厚生省との交渉議事録
(記号 ●は、厚生省の説明 〇は、会からの発言)
【基本見解】
●平成五年の障害者対策の計画、七年のプラン、資格制限の見直しを指摘されてきた。取り組む必要性は省内でも認識している。省としてはプランをふまえ、政府全体での統一的なことをしている。昨年十二月の中障協の検討方針の視点が出たので、現在これをふまえ各制度の見直しをしている。
会の考え方に対しては、医療モデルの指摘、「本質的に必要な能力」ということの説明がされたが、昨年の十二月の中障協でも同様の事がいわれている。また、補助的な手段の活用も考慮されるべきと示された。我々としても当然、そのことを念頭に置いて進めている。禁治産欠格、設備利用の制限などの指摘については、障害者基本法があり、あらゆる分野で障害者の行動が保証されているので、その理念をふまえなければならないと考えている。その法の理念、プランの理念をふまえ、障害者当事者の完全参加など、今後も取り組む。続いて、資格制限の個別制度については、各制度の担当から、説明。
【医療従事者等関係】
(記号 ●は、厚生省の説明 〇は、会からの発言)
●医薬従事者についての様々な資格は、障害者が歴史的についていたので外した。
理学療法士などはあんまマッサージ師の人がなったりもするので、欠格条項を設けていない。
精神病とかの公衆衛生上 適当な範囲で設けられたものと考えている。場合によっては危害を与えるおそれがあるので。つまり、これらの業務は身体に直接触れるので公衆衛生の観点から免許を与えるのは不適当。
資格制度への信頼性などから医師などの欠格条項は設けられている。資格制度の信頼性と業務の適正な遂行のため。業務の遂行を資格を持っている以上適正に遂行できなければ資格に
対する信頼性が失われる。もちろん、これらを検討していく。
歯科技工士などについては、精神障害者だけなのは先ほどと同じ。視覚障害者は資格の特性から業務遂行困難。
〇誰でもやり方を間違えれば危害を加える恐れがあり、というのではなく、精神の人は何をするかわからないという危険性を言っているのですね。だから排除したという説明ですね。
●ならば危害という言葉は取り消します。
〇精神がいると水準が維持できないと?公衆衛生の水準が?なぜ維持できないの?
●ですから、あの……先ほどの通り、場合によっては……。
〇精神障害者は危ないとなぜ決めるの?
●そう思ってないですよ。
〇公衆衛生というのは、対社会的な危険性とかそういう意味ではないか。もっと率直に。ごまかさないで言ってほしい。
〇精神は危害を及ぼす可能性があると今まで排除してきた。本当にそうなのかというのを見直さなければならない。精神障害=こうだ、という規定が今まであったから、たくさん欠格条項があった。それを見直すということを考えているわけでしょう?
●………(黙ってしまう)
【薬剤物取り扱い関係】
(薬剤師)
(記号 ●は、厚生省の説明 〇は、会からの発言)
●薬剤師法四条。薬剤師の業務。患者の微妙な状態をみなければならない、命に関わる職業。意志疎通の必要性。処方箋に基づく業務で、処方箋を詳細にわかる必要がある、内容の確認と迅速で正しい、的確な対応が必要。視聴覚に障害がある者はそれが困難。昭和三十五年年八月一日の制定当時から欠格条項がある。
〇障害者だから医療ミスがあるとはいえない。普通の看護婦や医者が医療ミスを起こしている。
●障害者だからできないということではない。医療ミスを起こす現状は鑑みる必要がある。特に視聴覚に障害がある場合は、難しい。
〇大きな病院に行くと、処方箋は紙を渡されているだけではないか。充分できる。
●現在、そのあたりは指導中(?)です。
〇障害者だからできない。予め障害者は欠格というのがおかしいのではないのか。
●ミスを犯す可能性が高い。
〇できない可能性が高いということを前提にしていることがおかしい。個々の能力の検証ではない。個々とは別に除外するのが妥当かどうか。相対、絶対に関わらず、問題は問題。「ミスをおかす」ということ前提にしていることがおかしいでしょう。そこを見直す必要はないのですか?全てに関わる問題だ。
〇聴覚障害で、去年の薬剤師国家試験に合格したが、一年間宙に浮いている人がいる。障害を理由に免許を与えられていない人がいる。試験に合格したということは必要な知識は持っているという事でしょう。
●(知らなかった)勉強不足です。視聴覚に関しては、医師の判断、健康診断書によっている。医師に任せている。医師が十分に聞こえると判断した場合は、業務を遂行できる。特に、言葉だけで、拒絶しているということではない。
〇その説明だと相対欠格のようだが、視聴覚障害は絶対欠格でしょう。試験には受かっても、免許は与えられない、実際の病院には勤められないわけですね。
〇医療モデルは、全部医者の判断。医者が判断することで、人生が決まってしまうということが問題。誰が判断するかということが問題。
●医師の診断書をもって確かめます。聞こえないというのをどう定義するかという問題がある。聞こえないという判断が出ると、「速やかな電話の応対ができない」ということが問題。それぐらいはできるということであれば、問題ではない。その辺は、できないという判断は、医師の判断による。通常の会話ができる場合は、診断書を必要としない。
〇薬剤師等に関して、精神が相対欠格の理由は。
●相対欠格に関しては、業務遂行の判断から、医師の判断に裁量権を任せて、絶対ではないとなっている。業務を的確に遂行できるかどうかが判断材料です。精神障害の方の場合でも、麻薬や重度の方に関しては、相対的欠格にする必要性があるだろうということです。それは医師の判断によります。
〇確認ですが、薬剤師の免許を与えるかどうかに関しては、医師の裁量ということですね。
●規則の、申請手続きのところに、健康診断書を出すことが義務づけられている。
免許を与えるかどうかの判断は、診断書提出だけです。それに基づいて、国が判
断します。
〇判断どうのではなく、健康診断書が実際上の欠格をすすめることになるのでしょう。視聴覚はだめということですから。
●口がきけないものがだめ。目が見えない、耳が聞こえない、診断書によって、欠格者かどうかを判断するのが、国の側になります。口が利けない、耳が聞こえない、目が見えないということがわかった段階で欠格にする。
〇的確な、迅速な判断とはなにか?
●時間的なものと正確性が必要とされますね。めがねをかければ良い場合は、OKですし、それについては、判断があります。
〇医師の判断次第でということが問題になっているわけでしょう?
〇理由、合理性をはっきりしたい。根拠が何であるかをはっきりさせてほしい。診断書を持って来いといわれて持っていったら「あなたは向いていない」と言われる。理由を聞けば、「その必要はない」と。欠格条項があるゆえに制度的にもそのように強い対応になる。障害者にとっては本当に不利で、当事者の人権を無視している場合があまりにも多い。
〇薬剤師なりの欠格条項の根拠は、十分だと思っているのですか?
●法の精神については、立法趣旨を鑑みてやむをえない。一方ではそのような実態に対しては見直しは必要だろう。
〇今までいろいろな事例が厚生省に報告されてきたはず。そういう薬剤師関係の事例で、見直しの必要性を認識したことはありましたか。
●着任して間もないので、実体験としてはない。
(毒物・劇物関係)
(記号 ●は、厚生省の説明 〇は、会からの発言)
●毒物劇物取締法の毒物劇物取扱責任者と特定毒物研究者は、薬剤師等とは制度的に違うことの説明をまずしたい。毒物劇物取締法というのは、一般的には毒物劇物を取り扱う工場、販売業者に対して保健衛生上の取り締まりをする法律。その毒物劇物は、昨今事件が多いが(北海道のシアンの事件等)、これらを管理する取扱責任者設置を義務づけている。取扱責任者の資質としては、化学の専門課程を卒業した者、薬剤師、都道府県の行う試験に合格した者、などの要件がある。それでその中に欠格条項として、目が見えない、耳が聞こえない、口がきけない、色盲、精神という絶対欠格がある。医師の診断書が義務づけられている。他の制度との違いは、免許制度・許可制度ではないこと。事業者がおかなければならない責任者の要件であって、国の与える免許ではない。障害者がこのような職種に就くことは、取締法では禁じていない。ただ取扱責任者として設置するには事故防止対策、緊急時の対応としてコミュニケーションが着実に行える人が必要であり、欠格条項を定めているということです。
〇緊急時の対応としてコミュニケーションに問題があるからというのが理由ですか。
●取り扱い責任者に要求される義務があり、その義務を果たしていただく必要がある。
〇緊急時の場合のコミュニケーションは、精神障害はできないと考えるのですか?
●精神病は障害の程度にもよりますが、一般的なコミュニケーションが不十分であるという場合には難しいでしょう。
〇「障害の程度」と言ったが、精神障害は絶対欠格ですから障害の程度は関係ないでしょう。
●たとえば躁鬱病の方とか、それと判定されている人について、昨今の毒物劇物の現状からして、ノイローゼになられる方が結構いる。そういった目的のために使用されるのを避けなければならない。
〇緊急時の対応がメインの理由?
●障害を持っていて、異常をきたしてしまう方にはお任せできない。精神的な障害、精神的の問題があるという場合があれば。仕事ができないということではない。責任者として、事故が起こったときに責任能力が問われるから責任能力を問えるものである必要がある。精神障害の方には、責任能力を問えない場合がある。
〇それはどういうことですか?
●何らかの事故が起きたときに、どういう経緯で事故が起きたかという原因の所在が明らかにならない場合がある。
〇原因の所在は、精神障害者と関係がありますか?原因は別の要因を探す必要があるだろう。障害者は責任能力がないと言われているように思われますが。治療歴のある人は、だめだという規定ですよね。
●制度上はそうです。
〇症状の程度は問題ではありませんね。絶対欠格なのですから。的確に行えるかどうかを判断するのに、精神障害であるかどうかという規定は必要ないだろう。ノイローゼを含めて精神障害とする場合、あなたの概念の拡散はどうかと思う。除外する人の枠を広げているだけなのではないか。個別の問題とは関係なくということが問題。精神障害がある人は、危険性が高いということは、おかしいのでは
ないか。
〇合理的判断ができないということは、非常に問題発言。
●健常者と見られる方でも、そういうことが起こることがある。売った側ということではなく、服毒自殺を行った側…
〇それは根拠のないところで、差別している。
●毒物劇物に関しては、取り扱いが難しく、社会的な害が大きいので、実際に障害者がなりたいという話は聞いたことがないです。
〇そんなことを言っていいのか?希望者が多いかどうかを問題にしてもしょうがない。
●特定毒物研究者に関しては、相対的に少ないです。社会的な害も少ない。個人的な研究です。たとえば、シアンや農薬など、限られた環境で使う十品目程度のもの。研究室レベルで許可を与える場合は、許可をしないということはない。
(美容師・理容師)
(記号 ●は、厚生省の説明 〇は、会からの発言)
●美容師・理容師が単独でかみそりや薬品を使い、身体に直接触れて行うので、公衆衛生の観点から規定されている。精神障害について相対欠格条項になっているのは、美容師・理容師の業務遂行に適するかで判断している。精神でも程度や、障害の状態に応じて資格の判断をしている。てんかんも、精神と同様に反復した発作、心神喪失状況を伴う人もいるので、それに絡めて判断している。健常者と
同等の生活を行うことができるときには再度免許を与える。免許権者の厚生省が判断。判断の基準は医者。
〇精神障害といってもいろいろあるが、どういった障害名が当たるのか?
●障害名ではなく、障害の程度。健常者と同等のことができると判断されればできる。
〇重い・軽いの判断は?
●医者ではないのでいいにくい。医師の診断書に基づいて判断しているのでケースによる。
〇精神障害のためになれない場合には責任持つのは誰?
●医者は状態を示すだけなので、責任は厚生省。
〇医者の診断書をチェックはできないから、一体となっているわけでしょ?
〇免許を持っていても、それを生かしてやろうという診断書とそうでない診断書は明らかに違う。これは公務員とか全てに通じる。相手の自立生活を大事に考えている医者は少ない。
〇診断項目があるわけでしょう?項目の設定は厚生省がサンプルを作るわけですか?
●法文上は医師の診断書とだけの規定。
〇何もかも医者の判断に頼ることへの反省をすべきでは?
〇薬剤師はサンプルがある。それに署名捺印することとある。チェックしなければならない項目がある。その危うさを問題にしてこなかった。
〇多くの場合、診断は五分程度で終わってします。免許の場合でも診断書を持っていけば、簡単にすむようなシステムになっている。そういうことを問い直していきたい。医療モデルというのはそういうこと。五分で本当に正しい判断・援助ができるはずもない。
【絶対欠格から相対欠格への改定経緯、評価】
(記号 ●は、厚生省の説明 〇は、会からの発言)
●栄養士・調理師:精神も欠格条項とあるが、業務に支障がなければなれる。今まで精神というだけで与えていないというケースはないし、取り消したケースもない。欠格条項の事由として精神はあるが、ケースとしてはない。
〇検討経過は?
●その点は精神病者というだけで問題があったかということを検討し、そういうケースがなかったので、相対的欠格条項にした。なぜ相対欠格を残したかは、認識としてやイメージとして、誤ったイメージが我々の方にまだあるので、なにか「障害の程度によっては…」という考えを残したいということがあった。
●衛生士:見直しは検討経過など調理師とかと同じ。一くくりで行った。ケースがなかった。都道府県にも相談・問い合わせも全くない。
〇栄養士など、絶対が相対になったので資格を取った人はどの程度いる?
●把握していない。都道府県の免許交付なので、報告があるわけではないので。問い合わせとしてどうかはあるときはある。基本的には医師の診断になる。医師の診断で資格が与えられなかったという報告は来ていない。
〇相対への変化の評価を知りたいので、その資格を取った数は今後の目安になるので、調べていただけないか。
●それについて調べることは可能なので積極的にやりたい。
〇医師の診断書が必要なことは今までと同じ?
●はい。
〇以前の制度では中学校卒業の者でもとれたが精神は絶対欠格だった。高卒にする代わりに精神を相対にしたという駆け引きがあった。絶対から相対になったことは緩和されたが、精神は高卒者でない人はかなりいる。
●理美容については、すべての人に一律に資格制限する理由がなかったので改正した。事例もない。高卒者というところの駆け引きのところは初めて聞いた。平成七年に改正したが、議員のほうからの改正だったので細かいことは知らなかった。高卒者うんぬんは聞いていない。美容については精神障害が診断書に書かれている例がない。だから、国として判断するに至ったことがない。つまり精神で美容の資格を取得した人がいない。
●けし栽培の許可については相対になった。法改正から毎年三十名程度がとり、一年更新なのだが、免許を取るのは大学の研究者、農業従事者。農業従事者も数十年栽培している人ばかり。毎年三十名程度で推移しており、精神の人が許可申請した例はない。法改正後の評価も数が少ないので評価自体難しい。精神病者に実際に免許を与えたことがない。免許権者は厚生省。
●放射線技師:平成五年の改正で相対になった。ほかの医療従事者で相対になっているのに、放射線で絶対だったので整合性をとった。数字としては把握していないが問題があったということは聞いていない。
〇全体を禁じている合理的理由がないという話だが、先ほどの欠格条項の説明も合理性がないと思っている。本当に合理性があるのか疑わしいと思って説明していると感じている。合理性を感じ取れなかったのが今日の感想。
〇医者の診断書がウエイトを占めているが、厚生省は、医者の実態をもっと知るべき。専門分化していて、それ以外のことは知らない。診断書を書けないと言われたこともある。障害者に対する偏見とかは、あなた達の見解が元になるので、もっと慎重に考えてほしい。
〇薬剤師の免許を取ったとき、診断書が必要ときいて、どんな診断をされるのかと心配した。でも大学の脇にある医者で問診してすぐ終わった。そういう簡単な問診とかで通った人はいいが、夢をつぶされた人の存在を医者自身が自覚しているのか。もっと実態を知るべき。
〇相対になっての具体的変化、推移など、実態が把握されてない。調査をやっておいてほしい。
●製菓衛生士も各自治体名義なので、精神病者に実際に免許を与えたことがあるかどうかを、自治体に訊いておく。
【今後の方針について】
(記号 ●は、厚生省の説明 〇は、会からの発言)
●見直しする以上、問題意識は持っている。検討の視点の中ですでにあがっている以上、個々に見直していく。
●4(*)については、政府の視点を元に検討をしているが、検討の視点に沿っている。政府全体として対処方針をどうするかという問題がある。方針がでればそれを基に具体的に進めていく。
〇法律自体戦後の古いもの。欠格条項も法律ができたときのもの。障害者観も当時と違うのだから、時代にあった法律に。
〇海外での実例把握はプランに入っているか?
●入っていない。集めないということではないが、集めて体系的にどうこうするわけではない。
〇是非、一つの方針として海外との比較は入れてほしい。各担当者の努力に任せるのではなく、大きな柱として据えてほしい。
●総理府でやっているのでそちらを見てほしい。
〇総理府調査は、韓国・ドイツ・カナダ等のごく一部の法律になっているので、見直しの根拠にはならない。各職種に対応したナショナルな情報を。
〇すべての資格が医者の診断書だが、特に精神科の医者と患者の関係は特別。そういう中で患者を診て診断書を書くという構造的な問題のある中で、医者の診断にどこまで信頼がおけるのか。担当者から出てくる「危険な」「危害」という言葉が気になる。これはものすごい差別発言だと思う。医者が医療法の改正に関わっていて、精神の数%の患者が起こす問題によって、保護者制度を残すとしている。そういうところで医者側と私たちは対立しているのに、医者に頼り切った構造は問題だと思っている。
〇現在の障害者観に見合った見直しを是非やってほしい。それとの関係で医師の診断書は是非見直してほしい。海外調査も各部署に任せるのでは限界があるので統一的に比較検討してほしい。対処方針を見ながらまた話し合いを申し入れたい。
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