全自病協第14号
                          平成13年1月22日

警察庁交通局 交通企画課長 
松尾 庄一  様

       全国自治体病院協議会    会長  小山田恵
     精神病院特別部会       部会長 伊藤哲寛

        道路交通法改正試案に関する意見書

 全国自治体病院協議会は、内閣総理大臣を本部長とする障害者施策推進本部が決定した「障害者に係わる欠格条項の見直しについて(平成11年8月9日)」に賛意を表するものです。道路交通法改正にあたっても、この方針に沿って、障害者とりわけ精神障害者の社会参加を推進する方向で検討されることを期待しております。法改正にあたって、とくに次のような観点から、検討されるよう要望いたします。

1) 改正試案では、「運転免許試験に合格した者がてんかん、精神分裂病等にかかっている場合には、道路交通の安全から観点から、政令の基準に従い、原則として、免許を拒否するとする」とあり、その上で「寛解あるいは治癒し、安全な運転に支障がなければ、免許の拒否の対象としないものとする」とされています。しかし、この考え方は、多様な障害のなかからこれらの病名・障害名をことさら取り上げ、その障害の特異性を強調するものであり、障害者施策推進本部の基本方針「障害者を特定しない規定への改正」「絶対的欠格条項から相対的欠格への改正」に 逆行するものです。「てんかん、精神分裂病等」を他の精神疾患と比べて特別視する医学的根拠はありません。これらの病気や障害を持っていても、通常の社会生活を営んでいる人は大勢います。てんかんは国民200人に1人、精神分裂病は120人に1人のありふれた病気です。多くの方が日常的に支障なく自動車を運転しているのが現実です。

2) また、改正試案は、「(現行法では)必ずしも資格・免許に係わる業務の遂行に支障とならないと考えられる程度の障害のあるものも一律に資格・免許等から排除され、障害者の社会参加の阻害要因となっている可能性がある」とする障害者施策推進本部の現状認識を踏まえたものではありません。

3) したがって、「てんかん、精神分裂病等にかかっている場合には原則として免許を与えない」とする規定を設けるべきではありません。

4) しかし、疾病や障害の状態により、安全な運転に支障をきたす場合があることも事実であり、一定の条件を満たした場合に運転免許を与えないあるいは一時停止する等の規定は必要です。具体的には、障害者、弁護士、専門医師等の協力を得ながら、たとえば「運転免許の制限に関する医学的ガイドライン」を定めることを提案します。その場合も、障害名・疾病名で制限するのではなく、意識障害の程度と持続、判断力の減退、危険回避能力など具体的な心身の状態による制限規定とすべきです。

5) なお、運転免許の制限に関連して、行政手続法および行政不服審査法に定められている異議申し立ての適用除外項目から、「試験及び検定の結果に関する処分」の項目をはずし、本人に対する聴聞の機会を保障すべきです。

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